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「全国犯罪被害者の会」オレンジLine


附帯私訴について
(2002.4.25)

このコーナーでは、これまでの1〜3回は、平成12年から施行された犯罪被害者保護二法により制定された新しい制度について述べてきましたが、今回は、視点を変えて、現在の日本の法律にない 「附帯私訴」あるいは 「私訴」という制度について簡単に述べてみたいと思います。

ところで、皆さんは、
附帯私訴という言葉をお聞きになったことがありますでしょうか。
 これは、ごく簡単に言えば、被害者が刑事手続の中で損害賠償請求を行なうことができるという制度です。附帯私訴またはこれに類似した制度は、現在ドイツやフランスなどで行なわれています。また、日本でも、戦後新しい刑事訴訟法になるときに廃止されてしまいましたが、それ以前は附帯私訴の制度がありました。

 この附帯私訴ないし私訴のやり方は国によって異なりますが、被害者から見れば、大きなメリットがあります。
その1つは、
刑事裁判の後別に民事裁判をやるというような裁判の繰返しを避けることができる点です。被害者は、犯罪の被害に遭い大変な苦しみを受けているにもかかわらず、刑事事件の参考人や証人として捜査機関や裁判所に繰り返し呼び出され、場合によっては公判の都度マスコミに追いかけられるなどして疲れきっていることが多く、刑事事件を乗り切るだけでもやっとの思いです。それにもかかわらず、刑事事件が終わった後新しく民事訴訟を提起するというのは大変な労力と精神的負担を強いられます。附帯私訴の制度があれば、これを一度に解決できるという大きなメリットがあるわけです

その2は、
附帯私訴を使えば刑事事件の中に当事者として参加することができる道が開ける、という点です。現在の刑事手続は、多少被害者に対する配慮がなされてきたとはいえ、依然として被害者は当事者としては取り扱ってもらえず、法廷でも、証人として証言する場合や意見陳述をする場合以外は傍聴席に座って見ている他ありません。しかし、附帯私訴が導入されれば、事件の当事者として法廷の中に入れる可能性が生まれます。現に、フランスなどでは、私訴原告人は弁護士とともに法廷内に入り一定の範囲で訴訟活動を行なっているのです。このため、中にはたった1フランの損害賠償を請求するという形で私訴を提起して刑事訴訟に参加し、訴訟活動を活発に行なった被害者もいるのです。
 このように、 附帯私訴ないし 私訴は、 被害者にとっては大きなメリットのある制度ですから、是非とも導入を検討すべきものと思われます。

 ところが、この制度は、裁判官から見ると、刑事と民事の双方を行なわなければならないという負担増を伴うものであり、また、検察官から見れば、これまで検察官だけの判断で公訴を提起したり公判手続を行なってきたりしたのに被害者が参加して別の角度から活動を行なわれることになるので、必ずしも好ましいものと思われてはいないように見受けられます。

 しかし、事件の最大の当事者である 被害者が刑事手続の蚊帳の外ということ自体大変おかしいことですし、また、既に犯罪により多大な苦痛を受けている被害者の負担は極力軽減する制度をつくるべきことは当然です。ですから、被害者の地位向上及び被害者の負担軽減のためには、 附帯私訴ないしこれに類似する制度の導入に向けて努力することが是非とも必要だと思われます。
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