「警察に被害届を出しています。」「告訴はなさいましたか?」「被害届と告訴はどう違うのですか?」 告訴と被害届の違いについてご質問をよく受けますが、被害届も告訴も、被害を受けたことを警察や検察に申告することですが、告訴は、これに加えて、加害者の起訴を求めるものです。
両者の違いとして、告訴がないと起訴できない事件があります。親告罪と言われるもので、強姦罪、強制わいせつ罪が代表例です。加害者の弁護人が、起訴の前に示談をまとめて告訴の取下げを被害者にお願いするのは、起訴を免れるためと言っても過言ではありません。(なお、強姦罪や強制わいせつ罪でも加害者が複数の場合や被害者がケガをした場合には親告罪にはなりません。)
また、告訴があると、検察官は、不起訴処分にしたことを告訴人に通知しなければなりませんし、告訴人から求められれば、不起訴の理由を知らせなければなりません。
これは、不起訴が妥当か不当かについて検察審査会へ審査請求する機会を与えるためです。検察官が告訴人から意見を聴かないまま不起訴にすることはありませんので、捜査機関からあまり連絡がない事件では告訴しておくのも選択肢の一つです。
告訴は、被害者や親権者等の法定代理人ができ、被害者死亡の場合には親族が代わってできます(刑事訴訟法230条〜234条)。告訴状は、弁護士に依頼して書面を作ってもらうのが望ましいと思いますが、検察官または警察官は、口頭による告訴を受けた場合は調書を作る義務がありますので、弁護士がついていないという理由や、書面でないという理由で告訴を受理しないのは刑事訴訟法241条に違反します。
なお、告訴と似た言葉として、告発がありますが、告訴権者でない人が犯罪事実を申告し、犯人の起訴を求めるものが告発です。誰が申告するかの違いで、申告の効果は告訴とほぼ同じです(親告罪は告発できません)。
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