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日本弁護士連合会に「要望書」を提出しました
--- 2005.6.30 ---

平成17年6月30日、岡村代表と幹事・会員が日本弁護士連合会を訪問し、山原和生副会長、田中公人事務次長にお会いし、下記要望書を提出しました。
犯罪被害者等基本計画検討会に提出された同会の「理事会決議」に抗議するとともに、検討会において我々の意見にも耳を傾ける事を要望しました。
「要望書」
平成17年6月30日
日本弁護士連合会
会長 梶 谷 剛 殿
全国犯罪被害者の会(あすの会) 
代表幹事 岡 村  勲
理事会決議

貴会は、平成17年6月17日、「理事会」において次のような決議(以下「理事会決議」という)をされました。
  1. 被害者等が、当事者あるいは検察官を補佐する者として刑事訴訟手続に参加し、訴訟行為を行う制度は導入すべきではない。
  2. 被害者等が、検察官に対し、質問、意見表明する制度、公判前に証拠を閲覧等できる制度を導入すべきである。
  3. 附帯私訴および損害賠償命令の制度は、導入すべきではない。
昨年12月に成立した犯罪被害者等基本法(以下「基本法」という)は、従来犯罪被害者等の権利が尊重されなかったことを反省し、犯罪被害者等の視点に立って、立法行政等の見直しを図る画期的な法律ですが、司法の分野も例外ではありません。
犯罪被害者等の刑事手続に参加する機会の拡大、刑事民事両手続の有機的関連による損害賠償請求の適正円滑化など、犯罪被害者等の権利利益の施策を講ずることが求められています。

この度の理事会決議は、基本法の規定、精神に違反するものといわざるをえません。

訴訟参加

基本法第2条に定める「犯罪被害者等のための施策」のなかには、「犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与すること」が含まれており、さらに第18条は「犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするため、・・・刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずる」ことを、基本的施策として掲げております。

これらの規定を見れば、犯罪被害者等の刑事手続への参加は、基本法がすでに認めているものといわざるをえません。 ところが理事会決議は、現行制度との整合性がないことおよび被告人の防御権が困難になることなどを理由に、犯罪被害者等の参加制度の導入に反対しておられます。

いまや基本法の制定により、導入すべきか、すべきでないかという段階を通り過ぎ、どういう形で、どのようにして参加制度を実現するかという段階に入っているのです。理事会決議が、導入すべきでないとするのは、基本法違反といわざるを得ません。 貴会におかれては、導入すべきでないとするのではなく、状況を理解され、よりよい参加制度の実現に向けてご検討されるよう、お願いする次第です。

当会は、すでに訴訟参加制度案要綱を公表していますので、ご参考にしていただければ幸甚に存じます。

附帯私訴および損害賠償命令

基本法第12条は「犯罪等による被害に係る損害賠償請求の適切かつ円滑な実現を図るため、・・・・損害賠償請求についてその被害に係る刑事に関する手続との有機的な連携を図るための制度の拡充等必要な施策を講ずるもの」としています。

これは現在無関係に行われている刑事手続と民事手続を関連づけて損害賠償請求を容易にしようとするもので、附帯私訴制度や損害賠償命令も検討対象になるのは当然であります。 これについても、理事会決議は、民事裁判と刑事裁判との手続の相違を理由に両制度を導入すべきでないとしています。

しかも、刑事公判記録の閲覧・謄写、刑事和解制度の活用を図りつつ被害者等の労力を軽減し、簡易迅速な手段によって我が国にふさわしい制度を追及すべきであるというだけで具体的な提案はされていません。

附帯私訴や損害賠償命令の制度は、外国で行われている制度ですが、特に附帯私訴は、我が国でもかつて行われたことのある制度で、刑事手続の成果を民事裁判に利用することにより、損害賠償請求を容易にするすぐれた制度であります。 当会は、附帯私訴制度案の骨子を発表し、現行制度のもとでも実現可能であると確信しております。

附帯私訴制度を実現する方法はないのか、どうすれば実現できるのか、前向きに真剣に検討していただきたいと存じます。 どうしても導入できないといわれるのなら、ご提案にある「我が国にふさわしい制度」を具体的に、早急に発表していただきたいと存じます。
被害者等が、検察官に対し、質問、意見表明する制度、公判前に証拠を閲覧等できる制度を導入すること
検察官に対する質問、意見表明は現在も事実上運用として行われているものですが、しかしそれが法制化され、どんなに優秀な検察官が担当されたとしても、被害者等の思いが充分裁判に反映できるとは限らないのみならず、そもそも検察官に対する質問等では、被害者等が刑事手続に参加したことにはなりません。 公判前に証拠を閲覧する制度は歓迎ですが、これも刑事手続への参加ではありません。

基本法および犯罪被害者等のための施策は、国民の声

犯罪被害者等の権利保護の問題は、今に始まったことではなく、平成12年に行われた総選挙において、自由民主党が、犯罪被害者やその遺族に対して訴訟手続内でしかるべき地位が与えられるよう法改正をし、また被害補償についても附帯私訴を含めて具体的に検討し、早急に結論を得ることを、選挙公約とし、他の政党も犯罪被害者等の保護をうたった公約を掲げております。

全国犯罪被害者の会でも、犯罪被害者のための刑事司法の実現、訴訟参加制度および附帯私訴制度の実現を求める署名活動を行い、平成16年6月15日までに集まった55万7215名の署名を法務大臣に提出しました。 さらに東京都をはじめとする全国107の自治体においても、平成15年9月から平成17年3月までの間に、同様の制度を求める議会等の決議がなされ、その意見書は国会および関係行政庁に提出されました。

これらの国民の声は、大きなうねりとなって、昨年12月1日、全政党を網羅した議員立法により基本法が成立したのです。 基本法の精神および犯罪被害者等のための施策は、国民の声、国民の意思の反映ですから、国民のための司法を標榜する貴会も、この施策を押し進めるための努力をしていただくことを、期待しております。

新たな制度を構築する際には、従前の制度との衝突や摩擦が生じることは多々あることです。しかしそれを恐れていては、新しいニーズに応ずる制度を創ることはできません。人は制度のために存在するのでなく、制度が人のために存在するもので、制度がニーズに合わなくなったときは、制度を変える以外に方法はありません。

要望

そこで、貴会におかれては、犯罪被害者等の訴訟参加、附帯私訴、損害賠償命令等について、もう一度、犯罪被害者等の視点に立って検討してくださるよう、要望する次第であります。

参考添付
  1. 訴訟参加制度案要綱及び趣旨説明(当会作成)
  2. 附帯私訴制度案の骨子(当会作成)
  3. 107の自治体の議会等の決議書写し

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