TOPICS (ニューズ・レター)


犯罪被害者等基本計画の進め方を考える
  (2006.12.20)

法制審議会の様子=附帯私訴と公訴参加について=

弁護士 高橋 正人
「被害者が刑事裁判に参加すると被告人の発言が萎縮し、言いたいことが言えなくなる、もし、附帯私訴の判決に仮執行宣言をつけられたら、お金のある被告人にとっては問題のある制度になるから止めて欲しい」こんな問題点がまことしやかに、ある委員から提起された。今、進めている法制審議会での一幕のことである。

 本年9月、法務大臣から法制審議会に対して、附帯私訴(刑事の裁判官が同じ証拠をつかって民事の裁判も行う制度)と公訴参加(被害者が検察官の隣に座り、被告人に直接質問したり、最後に求刑意見を述べたりする制度)について審議するように諮問があった。

これを受けて、翌10月から、多数の刑事と民事の学者、弁護士、最高裁、検察庁、法務省などの有識者が集まって、審議が始まった。

既に5回の審議が終了している。岡村代表幹事も委員として出席し、私も毎回随行させて頂いている。

 審議会の様子は、学者も最高裁も法務省も検察庁も、もちろん岡村代表幹事も、皆、被害者のための制度はどうあるべきかという視点から、具体的な制度を構築するための前向きの議論を真剣に行っているという雰囲気である。後ろから見ていても、頼もしく感じる審議会だ。

 ところが、ごく一部の委員から、被告人の利益を擁護する観点からのみの意見が毎回出され、他の委員は「またか」と言った雰囲気で、白けてしまう場面がある。それが先に述べた発言だ。

 そもそも、被害者を前にすると、被告人が真実を話せなくなるというのは、まやかしだ。本当に何もしていないのなら、被害者の前であっても堂々と発言ができるはずだ。

供述が萎縮するというのは、被害者と対峙して流石に本当のことを言わざるを得なくなり、嘘の弁解のための発言が萎縮するに過ぎないのである。

特に、将来の被害弁償の話になるとその傾向が強い。だからこそ、被害者には参加しないで欲しい、被害者を蚊帳の外において、でたらめを言って罪を少しでも軽くしたいというのが彼らの本音だろう。

 また、賠償金の支払いを命じる附帯私訴の裁判に仮執行宣言をつけると、裁判が確定しなくても、被告人の財産に対し直ぐに強制執行を行うことができるが、これではお金をもっている被告人はたまらんから、止めてくれというのである。

私は、こういう人達にあえて言いたい。では、被害者は、身も心もぼろぼろにされた上に、さらに賠償金を取ることも諦めてただただ黙っていろ、とでも言うのか。

 たとえ、一部の委員であるにせ、日本の法曹界をリードする有識者の中に、このような考えをもっている方がいるというのは情けない。そういうことを言う人達は、気がついた時には、社会から2周・3周遅れで取り残されていることになろう。目を覚まして欲しいものである。

附帯私訴

弁護士 京野 哲也
法制審議会では、かねて「あすの会」において要望している附帯私訴についても審議されています。

 附帯私訴とは、加害者を裁く刑事裁判において、その手続を利用して、損害賠償請求などの民事の裁判もしてもらえるようにする制度です。

 現状では、犯罪被害者は、加害者に対して民事の判決を得ようとしたら、刑事裁判とは別に、わざわざ民事訴訟を提起しなければなりません。

そのための、経済的、労力的、費用的、また精神的な負担はとても大きなものがあります。そこで、刑事裁判の手続を利用して、一回で決着を付けることができるようにするために必要な手続なのです。

 そこで、「あすの会」では、研究を続けて、2005年(平成17年)10月に「附帯私訴制度案要綱」を公表しています。

 「あすの会」の要綱は、すぐにも導入できるように、よく練って現実的な案にしましたが、法制審議会での議論としても、あすの会の案をベースに検討されています。

もちろん、細かい点については、具体的な法制化を待たなければなりませんが、ほぼあすの会の案に近い内容の附帯私訴が実現しそうです。

犯罪被害者補償制度

弁護士 池田 剛志
  1. なぜ、新しい犯罪被害者補償制度が必要か。

    犯罪被害者やその遺族は、被害直後から医療費、カウンセリング費、葬儀費等の金銭の支出を余儀なくされます。

    これらは健康保険等でカバーされる部分を除き自己負担です。また、休業したり、一家の支柱が死亡した場合に必要となる生活費も自己負担です。

    このような負担自体大変な苦痛ですが、重い障害が残ったり、一家の支柱が亡くなって幼子が残された場合などは、その後の長い年月にわたって生活費等の捻出に苦しむことになります。

    また、介護費用、車椅子購入費、住宅改造費等の負担も必要となります。

    現行法の「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」(以下、「犯給法」といいます)では、重傷病給付金(3日以上の入院、全治1ヶ月以上が必要。支給対象期間は1年)の制度により療養費の自己負担分が後で支給されますが、一旦自費で支払わなければならず、カウンセリング費、介護費、車椅子購入費、住宅改造費などは支給されません。

    休業補償もありません。
    また、遺族給付金、障害給付金が一時金として支給されますが、諸外国の給付金額と比較するとはるかに低額です。

    仮給付の制度も機能していません。上記のような犯罪被害者の需要に応えているとは到底言えません。


  2. 「あすの会」の考える補償制度の姿

    犯罪被害者は個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有しています(犯罪被害者等基本法第3条1項)。

    そして、その尊厳にふさわしい処遇とは、上記のような犯罪被害者の需要に応え、事件以前の生活水準を回復するに足りる補償金を支給することです。

    犯給法が犯罪被害者の需要に応えていない以上、従来の枠組みにとらわれない、新しい犯罪被害者補償制度を作らなければならないと考えています。

    その具体的内容については現在も検討中であり、あすの会の犯罪被害者補償制度案要綱として内容が確定するに至っておりません。確定でき次第、会員の皆様にお知らせするようにいたします。


  3. 現在の状況

    犯罪被害者補償制度については、現在、「経済的支援に関する検討会」が月1回のペースで開催され、「あすの会」では白井弁護士が構成員となって参加しています。

    実質的な議論が8月25日の検討会から始まったばかりで、議論はこれからです。

    原状よりも手厚い補償を行うという点では構成員間で共通の認識があるのですが、厳しい国家財政の中、犯罪被害者等基本法の理念の実現は容易ならざるところです。
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