TOPICS(ニューズ・レター)


スウェーデンの被害者参加制度について
  (2008.4.4)
弁護士 高橋 正人
 在日スウェーデン大使館で2月15日、同国の弁護士を招待して講演会が行われた。

題材は、我が国でいうところの被害者の刑事裁判への参加の制度(被害者参加制度)と、刑事の裁判官が民事の損害賠償命令を言い渡す損害賠償命令制度についてである。

スウェーデン社会研究所が主催し、東北大学の招きで来日したギータ・ハディング・ウィヴェルさんが、約2時間熱弁を振るった。

ウィヴェルさんは、スウェーデン弁護士連合会理事の要職にあり、長年、被害者弁護や虐待児童の支援に尽力してきたベテラン弁護士だ。

 講演は、ウィヴェルさんの虐待児童支援の経験談から始まった。
同国では100年も前から被害者参加制度などがあったが、被害者ための弁護士が国の費用で選任される制度がなかったので大変に使いづらく、これを改めるために1988年、国の費用で被害者のための弁護士を雇う国選被害者弁護人制度と国選児童弁護人制度が成立したとのことである。

選任された弁護士は、被害者とともにバーの中に入り、検察官の隣に座って、被害者に代わり、被告人に直接質問したり、証人に尋問したり、あるいは、検察官とは別に求刑したりすることができる。我が国の被害者参加制度とほぼ同じ内容だ。

 また、刑事の裁判官が、刑事判決の言渡し後、各犯罪の類型ごとに賠償額が定まっている金額を、被告人に賠償するよう命じることもできる。

これはまさに我が国の損害賠償命令制度に匹敵する制度だ。

賠償金額は殺人事件で数百万円程度とのことだが、一方で、スウェーデンでは、社会福祉制度が我が国と比べものにならないくらい充実しているから、単純には比較できないとのことであった。

素晴らしいのは、被告人が支払えない場合は、法務省から独立した犯罪被害者援護庁が立替払いをし、後日、同庁が被告人から10年分割で取り立てることになっていることだ。この点は、我が国にはないシステムであり、今後、見習うべきだ。

 講演終了後、近くのレストランで懇親会が開かれ、あすの会のヨーロッパ調査でご一緒させて頂いた愛知大学の加藤教授といくつか質問をさせて頂いた。

日本では、被害者が参加すると感情的になったり法廷が混乱するという批判もあるが、スウェーデンではどうかという質問をしてみたところ、「混乱することはありません」と断言された。

 また、我が国では、被害者を目の当たりにすると被告人が言いたいことが言えなくなるとの理由で日弁連執行部が猛烈に反対しているがどう思うか、とたたみかけてみた。

すると、なぜそのような質問をするのかと言わんばかりに困惑した表情になり、少し間をおいてから、「そのような『フィクション』で反対する理由が私には全く理解できない」「刑事司法は全ての人のためにあるはずです。被告人のためにも、被害者のためにもあるものです」。

 なにかと議論を巻き起こした我が国の被害者参加制度ではあったが、確信に満ちたウィヴェルさんの受け答えに、改めて意を強くした。

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