TOPICS (ニューズ・レター)


損害賠償命令制度
 弁護士 小林陽子(2008.11.11)

 損害賠償命令制度とは、刑事裁判の手続を利用して、犯罪によって被害を受けた人の損害賠償請求を審理してもらう制度であり、平成20年12月1日から始まります。

今まで、刑事裁判と民事の損害賠償請求とは全く切り離されていました。そのため、被害者が加害者に対して損害賠償請求を行うためには、自ら高額な申立費用を裁判所に支払って、訴えを起こさなければなりませんでした。

また、損害賠償請求を判断する裁判官は、刑事裁判の裁判官とは別の裁判官ですので、被害者の方が刑事裁判の意見陳述や証人尋問の場で事件のことをどれだけ話していたとしても、民事裁判の裁判官に対して、事件のことを一から主張しなければならず、証人尋問も改めて行う必要がありました。

しかし、これでは被害者の方の精神的・経済的負担があまりに大きいためにできたのが損害賠償命令制度です。

 この制度ができたことにより、被害者の方は刑事裁判の裁判官と同じ裁判官に損害賠償請求を判断してもらえるため、事件のことを繰り返し話さなければならないという負担から解放されます。

また、損害賠償命令の裁判手続は4回以内の期日で終了するため、1年以上は続く通常の損害賠償請求の裁判と比べると解決に必要な期間が短くなります。

さらに損害賠償命令の申立費用は、請求金額にかかわらず2,000円です。今までは1,000万円請求する場合には4万8,000円、5,000万円請求する場合には16万7,000円の申立費用がかかっていましたから、被害者の方の経済的な負担も軽減されます。

 この損害賠償命令制度を利用できる方は、殺人、傷害など故意の犯罪行為により人を死傷させた犯罪、強姦などの性犯罪、誘拐罪等の犯罪により被害を受けた被害者本人、または被害者の相続人です。

 もちろん被害者の方は、この損害賠償命令制度を利用せず、今までどおり民事の裁判所に損害賠償請求の訴えを起こすこともできますし、損害賠償命令の申立を行った後でも、刑事裁判の判決が出るまでは通常の民事裁判に移すことができます。

 他方、刑事裁判で被告人が無罪となれば、損害賠償命令の申立は却下されます。もっともこの場合でも、被害者の方は民事裁判で通常の損害賠償請求を行うことはできます。

 また、裁判所が損害賠償命令制度について4回以内の期日で判断することができない場合や、被告人が被害者の損害賠償命令の申立に対して異議を出した場合には、損害賠償命令は通常の民事裁判に移されます。
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