TOPICS (ニューズ・レター)


被害者参加弁護士を経験して
 弁護士 村田 智子(東京弁護士会)(2009.6.1)

私は、本年1月、被害者参加弁護士として、刑事裁判に参加しました。元橋一朗先生(東京弁護士会)との共同受任です。

 対象となった刑事事件は、自動車運転過失致死罪です。深夜、加害車両であるトラックが、青信号で右折した際に向い側から青信号で直進してきたバイクに気がつかずに衝突し、バイクの運転手を死なせたという事案でした。

 事故後、加害者にはまったく誠意が見られなかったので、被害者の妻と兄が、加害者を実刑に処すことを求めて、刑事裁判に参加することにしたのです。

 東京地方裁判所での初めての被害者参加のケースだったということもあり、当日の裁判の様子は、新聞等で大きく報道されました。被害者遺族の存在感は極めて大きく、裁判の進行も丁寧で、これまで私が経験した刑事裁判とはまったく違っていました。

 この裁判を通して、私が心から感じたことがあります。  それは、被害者や遺族が裁判に参加する場合、できるだけ被害者や遺族が、ご自身で、被告人質問や意見陳述(論告求刑)をしたほうがよいのではないか、ということです。

 この裁判の場合、被害者遺族らは、相談の最初から、「被告人質問などはすべて自分たちがやりたい」と明快に述べておられました。そして、立派にやり遂げられました。

傍聴に来てくださった方々やマスコミの方々の目にも、被害者の兄が行った被告人質問も、被害者の妻が行った新しい意見陳述(論告・求刑)も、極めて画期的なものと映ったようでした。

 そもそも、被害者参加制度ができた趣旨は、今まで刑事裁判の中で置き去りにされてきた被害者や遺族が積極的に裁判に参加していくというところにあると思います。

また、刑事裁判では、被害者や遺族は、検事のように、被告人を有罪に持ち込まなければならない責任(立証責任)を負っているわけではありません。

検事の足手まといにならない範囲であれば、被害者や遺族の立場でしか言えないことを表現していけばよいのです。弁護士は、検事と違って「被害者や遺族のことだけを考える法律の専門家」として被告人質問や新しい意見陳述の案を検討したり、足りない部分を補充したりして発言していけばよいのだと思います。

 もちろん、被害者や遺族がどこまでやるのか、弁護士がどこまでやるのかの役割分担は、裁判の内容や、被害者や遺族の希望によって異なります。

例えば、性犯罪の裁判の場合には、弁護士のみが出席するということも多々あろうかと思います。その場合には、弁護士がすべてを担当するしかありません。決して全部が全部、被害者やご遺族がやらなければならないということではありません。

 ただ、一部ないしは全部を弁護士が担当する場合でも、それを決めるのは被害者や遺族であるべきです。弁護士のほうから、「専門家である私のほうが、あなたよりもよくできると思うから任せて」というべきではないと思います。

弁護士がこのように持ちかけた場合、一般の方々は、遠慮して、なかなか「自分でやりたい」といえないのではないかと思うからです。

 それから、「被害者や遺族は感情的に振舞ってしまうのではないか」という心配も、私は要らないと思います。今回の裁判でも、遺族らは、冷静に振舞うよう、最大限の努力をされていました

他の方も同様ではないかと思います。それに、万一、被害者や遺族が感情的に振舞ってしまった場合には、そばにいる弁護士がフォローすれば足りると思われます。

 弁護士は、あくまでも黒子に徹してよいのです。  最後になりましたが、今後、希望される多くの方々に、被害者参加制度を利用していただきたいと思います。

 また、この制度を最大限有効に利用するために、弁護士を活用していただければ、こんなに嬉しいことはありません。
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