VOICE (ニューズ・レター)


裁判を被害者のためにも取り戻した
ー 被害者参加第1号、第2号事件 ー

弁護士  高橋 正人  

東京地裁で1月23日、全国初となる被害者参加制度を利用した裁判が2件行われた。


そのひとつ、自動車運転過失致死事件(いわゆる交通事故)では、岡村代表幹事と私を含めた顧問弁護団7名が幸い抽選に当たり、傍聴することができた。

 交通事故の遺族が裁判終了後、司法記者クラブで会見し、「参加したことで、被告人の受け答えにかえって傷つくことはなかったか」と記者の質問に、「(被告人の誠意のなさに)怒りが増した。

しかし、自分たちが参加しなければ裁判官に思いを伝えることはできなかった。気持ちを直接言えて本当によかった」と冷静に答えられていた。

他の記者から「検察官に代わりに質問して貰えれば十分ではなかったか」との質問も飛びだしたが、遺族は、「第三者に代弁してもらっても、被害者の気持ちは被告人には伝わらない」ときっぱり言い切った。

 もうひとつの、路上で因縁をつけられた恐喝・傷害事件(被害者:年配男性、加害者:若者2名)では、顧問の諸澤教授と岡村代表が途中まで傍聴された。

新聞報道によると、被害者の男性が、「あなた(被告人)の供述調書(捜査段階)には、『手のひらで殴った』とあるが、殴ったのはこぶしではないのか」と当事者しか知り得ない犯行状況を質問され、被告人の男性が「うそをついていた。こぶしで間違いない」と謝罪されたとのことである(日経新聞1月24日付朝刊紙)。

 また、かつて窃盗で少年院に入り、当時の被害者に謝罪の手紙を書いたことのある被告人は、今回との違いについて聞かれ、「初めて被害者と直接会う形になったが、今までは顔も見ていなかった。

手紙を書くのは簡単だが、被告人としての自己満足だったと思う」(朝日新聞同日付朝刊紙)と強調されたそうである。

 この制度ができる前、制度に対するさまざまな否定的な意見が、日弁連執行部から寄せられていた。被害者が直接参加し質問すると法廷が報復の場になり混乱する、検察官に代弁してもらえば十分だ、被告人が萎縮し本当のことを言えなくなる、感情をあらわにした被害者と対峙し、かえって更生の妨げになるなどが代表的なものであった。

しかし、顧問弁護団7名で裁判を2件検証した限り、報復の場にはならなかったし、第三者に代弁してもらっては遺族の気持ちが伝わらなかったし、さらに、被告人が萎縮するどころか被害者を目の当たりにしてさすがに嘘を言えなくなりかえって本当のことを白状し、反省の言葉を示したりしたというのが現実であった。

 閉廷後、ある新聞記者が、「今までの刑事裁判では考えられない緊張感だ。被害者が入ったことで法廷の空気が一変した。本当に良い裁判だった」と感想を述べていたが、全く同感だ。

今後も各地で被害者参加の法廷が開かれると思うが、裁判をようやく被害者のためにも取り戻すことができたのではあるまいか。  
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