【公開討論の申し入れ】   2007.4.23
平成19年4月23日
日本弁護士連合会 会長 平 山 正 剛 殿
 全国犯罪被害者の会(あすの会)
代表幹事  岡  村   勲 
「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための
刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」に関する
公開討論の申し入れについて

 当職は、貴会に対してみだしの公開討論の申し入れを行います。下記のとおり、貴会は本公開討論に応ずべき責務があると考えますので、速やかな開催を望みます。
なお、返答は本書到達後1週間以内に願います。

【1】公開討論の必要性      【2】公開討論に応ずる責務
【3】全国犯罪被害者の会の立場  【4】討議及び質問事項
【5】公開討論の方法・日時等


【1】公開討論の必要性
  1. 「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が本年3月13日国会に上程されましたが、貴会は同日、被害者の参加制度新設に関し慎重審議を求める会長談話(以下「会長談話」といいます。)を発表し、刑事裁判への被害者参加制度については「まだまだ十分な国民的議論がなされたとは言えない。

    また、刑事手続の現場を担う法曹三者の間でも、実質的議論が始まったばかりである。」、「犯罪被害者等の中にも賛成しない意見がある」とし、慎重審理(法案成立反対)を求めて、本法律案に反対のロビー活動を行っています。


  2. 犯罪被害者の刑事司法参加は、関東弁護士連合会が最初に問題提起し、これが全国的に広がり、平成15年10月17日、松山で開催された日弁連人権擁護大会では、被害者の訴訟参加の模擬裁判も行われ、「十分に議論を深める」との決議が圧倒的多数でなされております。貴会犯罪被害者支援委員会や静岡県弁護士会は、犯罪被害者等の刑事裁判参加要綱を作成しております。

     その後、貴会は、関連委員会、全国単位会に対して、被害者の訴訟参加の可否、参加の場合の形態等について意見を照会するなどし検討を進めた結果、「被害者等の刑事訴訟参加手続参加をめぐっては、根本的な意見の相違・対立が存在し」、意見のとりまとめはできない状況であったにもかかわらず、

    平成17年6月17日、突如、貴会理事会は、被害者等の刑事訴訟手続への参加、附帯私訴および損害賠償命令について反対決議し、折角盛り上がったこの問題の議論を封印してしまいました。

    これに対して貴会犯罪被害者支援委員会は、再考を求める意見書を提出しましたが、無視され、会員に知らされることはありませんでした。


  3. 上記のとおり、会長談話では、被害者の刑事裁判への参加について「まだまだ十分な国民的議論がなされたとは言えない。

    また刑事手続きの現場を担う法曹三者の間でも、実質的議論は始まったばかりである。」としていますが、自由民主党における犯罪被害者等基本法制定に関する委員会には、貴会副会長をはじめ多くの関係者が絶えず参加し、意見を述べており、内閣府における犯罪被害者等基本計画策定の検討会にも、貴会推薦の犯罪被害者等施策推進会議委員が参画し、法制審議会刑事法部会にも、貴会推薦の委員3人が出席して意見を述べてきました。

    自民党の委員会を除き、議事録は公開され、パブリックコメントの募集も行っています。

     また、平成18年6月10日開催の日本被害者学会学術大会では犯罪被害者等基本法の重点施策のなかで、被害者の刑事裁判への手続き参加がシンポジウムのテーマの一つとなっています。

     このような経過をみれば、被害者の刑事裁判への参加について「まだまだ十分な国民的議論がなされたとは言えない。また刑事手続きの現場を担う法曹三者の間でも、実質的議論が始まったばかりである」とは、到底言えません。

     また、会長談話では「犯罪被害者等のなかにも被害者参加制度に賛成しない意見がある」としていますが、わたしどもの知る限り、反対者はごく少数で、反対の理由も判然としません。  さらに、会長談話では、あたかも日本の全弁護士が被害者の訴訟参加に反対しているかのような誤った印象を与えかねません。弁護士の中には、本法律案に賛成する者も多数存在しております。

    これは、本年3月29日に「犯罪被害者等の権利を守る弁護士有志の会」がわずか3日間で355名もの弁護士から賛成の署名を集め、法律案賛成の声明を発表したこと、政党に提出する予定の本法律案の成立を求める弁護士による要望書が現時点で多数寄せられていること、上記法制審議会刑事法部会に参加した貴会推薦の弁護士3名のうち1名は被害者参加に賛成していることからも明らかです。


  4. 犯罪被害者の立場からすると、貴会が本法律案に反対する理由がよく分かりません。

    積極的なロビー活動まで行い、あくまで本法律案に反対する貴会に対して、人権は加害者に対してのみ認められるものと思っているのではないか、貴会のいう基本的人権とはどういうものなのか、被害者が刑事裁判から排除され苦しい思いをしてきたことについて、改めて考えようとしないのはなぜなのか、疑問に思っている犯罪被害者が多数います。

    また、多数の良識ある国民も同様に思っているものと考えます。

     そこで、貴会会長と当職とで、公の場で討論を行い、疑問点を浮き彫りにする必要があります。

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【2】公開討論に応ずる責務
 貴会は、政府から独立した自治権を持つ唯一の団体ですが、自治権は国民から与えられたものですから、国民の監視、監督のもとにあり、その活動及び意思決定過程は透明にして国民に対して説明責任を果たすものでなければなりません。

 また、弁護士を強制的に加入させ、その会費で運営しているのですから、会員に対しても、国民に対すると同様、その活動及び意思決定過程は透明にして、説明責任を果たさなければなりません。

 貴会は、本法案成立反対の活動を積極的に行っていますが、その理由は明らかでないばかりか、本法律案に賛成する弁護士が多数存在し、賛成する委員会や反対を表明しない単位弁護士会があるにもかかわらず、貴会が反対と決した経緯やその意思決定過程も明らかではありません。

 本年3月、貴会前副会長の高野弁護士と当職とで対談し、その内容を日弁連新聞に掲載するという話しがありました。しかしながら、時間も40分に限られた上「高野前会長は以前のことは分からないので、日弁連のこれまでの本件に関する意思決定過程には触れず、テーマを本法案の問題点だけに絞りたい。」とのことでしたので、お断りしました。

 貴会が、本件に係る意思決定過程の説明を拒むことは、上記のとおり許されるものではありません。

 貴会は、被害者が待ち続けた本法案に対して反対する理由とどのような経緯・手続きを経て反対するに至ったのかの説明を、被害者や国民、会員に対して明確に行う義務と責任があり、これらについて公開討論の場で説明する責務があると考えます。

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【3】全国犯罪被害者の会の立場
 全国犯罪被害者の会(以下「あすの会」といいます。)は、平成12年、犯罪被害者の権利と被害回復制度の確立を求めて、犯罪被害者によって設立された団体で、現在の会員は350人超に上ります。

過去2回の海外調査や全国的な署名活動を行い、小泉総理(当時)と会談して犯罪被害者等基本法制定の原動力となったほか、数々の犯罪被害者等に対する国の施策の実現に尽力してまいりました。

 また、国民はいつ犯罪被害者になるかもしれませんから、潜在的な被害者である国民の代表ともいえると考えています。

 そこで、現実の犯罪被害者及び潜在的な犯罪被害者を代表して、本法案の成立に反対する活動を積極的に行う貴会会長と討論したいと思う次第です。

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【4】全国犯罪被害者の会の立場
 討議及び質問事項は次のように考えます。なお、貴会会長からの質問については、本件に関する限りいかなる事項でもお受け致します。
【1】主な討議事項
  1. 貴会が本法律案反対に至る意思決定過程
  2. 犯罪被害者の人権、尊厳と現行刑事訴訟法
  3. 犯罪被害者等基本法、犯罪被害者等基本計画、本法律案と被害者参加


【2】当方からの主な質問事項
1.貴会の本法律案反対に至る意思決定の経緯とそれまでに取った手続き
 平成17年6月17日付け「犯罪被害者等の刑事手続きへの関与について」の意見書(理事会決議)、平成18年12月15日付け「法制審議会刑事法部会(犯罪被害者関係)における諮問事項についての意見書」、「平成19年3月13日付け会長談話」のそれぞれに当たって取った手続(単位弁護士会、関係委員会、犯罪被害者等からの意見聴取手続など)

(理由) 平成15年10月17日の日弁連人権擁護大会決議では「当連合会としても、・・・早急に、犯罪被害者が刑事訴訟手続に参加する諸制度の是非及びあり方について、早急に議論を深めるとともに、・・・犯罪被害者の権利確立と支援のための全力を尽くす決意である。」とし、

平成17年3月3日付け日弁連犯罪被害者の刑事訴訟参加に関する協議会の報告した「犯罪被害者等の刑事訴訟手続き参加等に関する取りまとめ」において、「被害者等の刑事訴訟手続き参加をめぐっては、根本的な意見の相違・対立が存在し、残念ながら現時点では協議会として、「まとめ」に記載した以上の意見とりまとめはできていない。」と報告されていながら、

上記の意見書、会長談話では、明確に、日弁連として被害者の刑事訴訟手続き参加に反対するとしている。

被害者の刑事訴訟手続き参加に反対でない弁護士、関係委員会、単位弁護士会が少なからず存在することは、貴会としても当然認識していたのであるから、日弁連としてかかる反対の意見を表明することについては、意見聴取手続きなど適切な手続きを踏むことは当然に必要であり、いかなる手続きを取ったかを明らかにする責務があるからである。

 平成17年3月3日付け日弁連犯罪被害者の刑事訴訟参加に関する協議会の報告した「犯罪被害者等の刑事訴訟手続き参加等に関する取りまとめ」において犯罪被害者の刑事訴訟手続き参加に反対する旨の意見を表明しなかった単位弁護士会、関係委員会、弁護士の意見の取扱い

(理由) 本取りまとめにおいて、少なからずの単位弁護士会、関係委員会、弁護士が犯罪被害者の刑事訴訟手続き参加に反対する旨の意見を表明していないことが明らかにされていることから、平成17年6月以降、貴会が、日弁連として被害者の刑事訴訟手続き参加に反対する意見を出すに当たって、これらの賛成意見をどのように扱ったのかを明らかにする必要があるからである。
2.上記のとおり、本法律案に反対でない弁護士が多数存在するにもかかわらず、貴会が本法律案につき反対活動を行う理由
(理由)  貴会は、あたかも弁護士全員が反対しているかのような決議、会長談話を発出し、日弁連として本法律案に反対するロビー活動を積極的に行っているが、上記のとおり、被害者参加制度に賛成する弁護士が多数存在し、そのことを貴会は十分認識していながら、かかる反対活動を行う理由が理解できないからである。
3.貴会は、会長談話の中で「刑事裁判への被害者参加制度については、まだまだ十分な国民的議論がなされたとは言えない。また、刑事手続の現場を担う法曹三者の間でも、実質的議論は始まったばかりである。」としているが、貴会がこのような認識を有する根拠
理由)  同制度については、犯罪被害者等基本法の中で検討する旨が条文として規定されたことを受け関係者で検討が進められ、上記1(3)のとおり貴会関係者も本制度について検討・議論に参加しているほか、法曹三者のうち、最高裁判所、検察庁(法務省)は同制度に賛成であるにもかかわらず、貴会が上記のような認識を有する根拠が理解できないからである。
4.貴会は、会長談話の中で「被害者参加制度に賛成でない被害者がいる」としているが、貴会が把握しているそのような被害者の数
(理由) 当会では、被害者参加制度に賛成する被害者は当会のメンバーなど多数把握しているが、承知している賛成でない被害者の方はごく少数である。貴会がかかる主張をするからには、相当数の賛成でない被害者を把握しているものと思われるので、その数を知る必要があるからである。
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【5】公開討論の方法・日時等
  公開討論の方法・日時等については、次のとおり考えます。  
(1)方法
 一般国民が聴取できる場所で、公平な第三者である司会者を入れ、あるいは入れず、1時間半ないしは2時間程度、討論を行うものとする。

報道機関を通じて広報するとともに、国会議員、被害者団体、一般国民に対して、広く参加を呼びかけ、新聞各社及びテレビ局による取材を要請するものとする。

(2)日時
本法律案の審議日程を考慮し、5月中旬から20日頃を目途とする。

(3)その他
付添人、助言者はなしとし、経費は双方折半とする。なお、当方の事務連絡者は、次の者とする。
       
全国犯罪被害者の会・顧問弁護団事務局長 
          弁護士 高橋正人(第二東京弁護士会所属)
連絡先
〒162-0825
東京都新宿区神楽坂2丁目12番1号
ラインビルド神楽坂406号
高橋正人法律事務所
電話  03(5225)2520
FAX 03(5225)2521
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