昨年11月1日から、「公判前整理手続」という新しい手続が導入されました。
「公判前整理手続」とは、被告人には事件についてどういう言い分があり、この事件では何が問題点となるのか(この問題点を「争点」といいます)を明らかにして、公判審理でどのような証拠を取り調べるのかをあらかじめ決めるための手続です。
刑事裁判は、検察側と弁護側のやりとりを全て公開の法廷で行うことを原則としています。したがって、検察側は裁判が始まってから証拠を示して事実を証明し、弁護側はそれを受けて被告人の弁護を行うことになります。そのため、審理の進行は月に一回程度のペースになり、複雑な事件の場合は判決までに10年以上かかることも珍しくありませんでした。
そこで、新たに導入された手続では、公開の裁判を始める前に、非公開で、裁判官の前で検察側と弁護側がそれぞれの主張をはっきりさせて、争点を明らかにします(争点の整理)。また、それぞれが証拠の請求をして、公判で取り調べる証拠を決定し(証拠の整理)、公判の日程をどうするか、証拠調べにはどのくらいの時間を当てるか、証人はいつ尋問するかなど審理の見通しを決めます。
そして、公判審理では,この手続の結果を踏まえて,そこで明らかになった争点を中心に証拠調べを行うこととしたのです。
現在、この公判前整理手続は、裁判所が選んだ事件についてだけ行われることになっていて、被告人が否認している事件や争点の多い複雑な事件、社会的にも注目される重大な事件などが主な対象となるものと考えられています。
しかし、平成21年に裁判員制度が開始されると、裁判員が審理する全ての事件についてこの手続が必ず行われることになります。
この手続によって裁判の期間をどの程度短縮できるかは、実際のところ、まだはっきりしません。
3年後の本格的な実施に向けて、今後、適用事例を積み重ねていくことになります。