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少年審判と成人裁判との違い・問題点
弁護士 望月 晶子(2008.7.30)
成人が罪を犯すと、刑事裁判を受けて「刑罰」が課され、未成年者が罪を犯すと、家庭裁判所で非公開の「審判」を受けて「保護処分」に処せられます。 少年審判は、「少年の健全な育成」を目的とし、「懇切を旨として、和やかに行う」とされています。

それまで逆境にさらされてきた少年が初めて温かく包まれ、受け容れられる場、という意見もあります。少年は、罪を犯したことを厳しく責められるのではなく、「和やか」に「少年に内省を促すものとしなければならない」となっています(少年法22条)。

 一方、被害者がほとんどサポートを受けられないという歪みが生じていておかしいという意見も出ています。 少年の処分を決めるにあたって大きな要素となるのは、少年を取り巻く環境です。犯した罪の軽重より、環境が重視されるのです。

 裁判所が少年の環境を知るのは、被害者は見ることのできない「社会記録」という、事件についての記録とは別に、家庭裁判所の「調査官」という専門家が少年の生育歴から現在の環境まで詳細に調べた記録と、審判廷で実際に少年及び両親等に接して、ということになります。

 被害者には、一部を除き審判傍聴と社会記録の閲覧が認められていないため,通常被害者が処分の真の理由を知るのは難しいことです。事件の最たる当事者である被害者が、少年が受けた処分の真の理由をきちんと知ることができるようにすることが必要であり、今後の大きな課題です。

 少年事件では、謝罪の機会がなく、被害者について省みる機会が少ないです。少年が自分で被害弁償をすることはまずありませんし、審判での直接の謝罪の対象は加害少年の親であることがほとんどです。

2001年から被害者が意見陳述をできるようになりましたが、審判廷で行われているのは少ないようですし、周囲がよほど働きかけなければ、被害者側の事情に少年が思いをめぐらせるまで至らないでしょう。

 自分の犯した罪の結果、被害者に向き合って謝罪し、真摯に反省する、そのような人間として最も基本的なことが少年審判では抜け落ちているといえるでしょう。

 その他、一般に少年事件は捜査が杜撰で事実認定が不十分である等、問題点は多々あり、今後更なる見直しが期待されます。
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