『第8回全国犯罪被害者の会シンポジウム』大会決議
--- 2007.11.25 ---
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1.第一決議(公費による犯罪被害者等支援弁護士制度に関する決議)
- 弁護士の選任にあたっては、被害者等の意向に沿った選任ができるようにし、裁判所によって選任する制度とすること。
- 被害者等の経済的困難の審査に当たっては、被害を受けたことによる経済的負担も考慮に入れる制度とすること。
- 弁護士に支払われた公費については、被害者等に対して返還を請求しない制度とすること。
- 被害者等が混乱することを避けるため、選任された弁護士が刑事裁判のなかでできる権限については、記録の閲覧謄写などを含めて、被害者等が参加人となったときに直面する事項に対処できる制度とすること。 以上決議する。
理 由
平成19年6月の国会で刑事訴訟への被害者参加制度が実現したことにともない、その附則で定められた「公費による犯罪被害者等支援弁護士制度」が創設されることとなった。
現在法務省においてその準備が進められている。
そこで、経済的困難で弁護士を依頼することができないため、せっかくできた被害者参加制度を被害者等が利用できないという事態がおきないように、できる限り被害者等の実情及び要望を反映し、公費による犯罪被害者等支援弁護士制度が真に被害者等にとって利用しやすく且つ役立つものとなるようにするため、以上のとおり要望するものである。
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2.第二決議 (少年法に関する決議)
- 少年法の目的において、「被害者等の尊厳に配慮しつつ少年の健全な育成を期す」という趣旨を明らかにすること。
- 被害者等が希望する場合は、少年審判の傍聴ができるようにすること。
- 審判記録の閲覧謄写については、少年の健全育成に著しく阻害と認められる場合を除いては、少年の生育環境などに関する証拠も含めて可能な限り被害者等に開示されるようにすること。
- 少年の両親など少年の生育に責任を負っている者、および少年自身に対して、被害者等が何らかの形で質問ができるように工夫をすること。(意見聴取の際に意見の一つとして疑問を提示し、それを裁判官から質問するというのも一案である) 以上決議する。
理 由
犯罪による被害を受けた時に、たまたま加害者が少年であった場合には、その加害少年に対する刑事司法手続きが、成人と同じ刑事裁判で行われる場合と、少年審判手続きで行われる場合の二つに分かれている。
少年審判手続きで行われることとなったときは、加害少年の健全な育成という目的のために少年の保護が優先され、被害者のなし得る事項は大幅に制限されている。
このために、例えば、同じ殺人や傷害致死の被害者遺族であっても、加害少年が刑事裁判に附された遺族は公開の法廷で裁判の傍聴ができ、少年の生育環境に関する証拠も含めて公判の記録も閲覧謄写が認められ、さらに新しい制度では刑事裁判に参加して、少年の両親などの情状証人や、被告人となった少年自身にも質問ができ、求刑意見を述べることすら可能となった。
他方、加害少年が少年審判に附された場合の被害者遺族は、審判の傍聴もできず、審判記録の閲覧謄写も大幅に制限されていて少年の生育環境に関する記録は一切見ることができない。
また、少年自身に質問することは勿論、少年を生育した責任のある両親などへの質問すらすることができない。
このように、同じように少年によって被害を受けたのに、刑事裁判となった場合と少年審判となった場合とでは、被害者等が大きな差別を受けている。
にもかかわらず、加害少年の健全育成のためには、そのような差別は当然のこととされ、被害者等はその差別を我慢しなければないとして、その不合理が顧みられることはなかった。
これでは、犯罪被害者等の犠牲の上に加害少年の健全育成をはかっていると言われても仕方がない。
そもそも、加害少年の健全育成という目的はそれとして尊重しながらも、被害者等の尊厳に可能な限り配慮することは十分に可能であり、刑事裁判の場合と少年審判の場合の不合理な差別をできる限り是正する努力がなされるべきである。
このようなことから、犯罪被害者等基本計画では、「少年審判の傍聴の可否を含め、犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い、その結論に従った施策を実施する。」旨が定めらた。
そこで、全国犯罪被害者の会(あすの会)としては、犯罪被害者等基本計画にのっとり以上の通り改正を求めるものである。
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