全国犯罪被害者の会(あすの会)
代表幹事 岡 村 勲
6月18日付朝日新聞「素粒子」欄が、「永世死刑執行人、鳩山法相。「自信と責任」に胸を張り、2カ月間隔でゴーサインを出して新記録達成。またの名、死に神」という記事を掲載したことについて、当会は、これは鳩山法相のみならず、死刑を求刑した検察官、死刑判決を下した裁判官、死刑執行に関与したすべての関係者、特に死刑判決の執行を求める犯罪被害者をも侮辱、中傷するものとして、同月6月25日付けで同新聞社に対して抗議および4項目の質問状を出しました。
ところが、6月30日付同新聞社の回答は、記事掲載にいたる経過が中心であったため、7月7日に再質問し、同月14日付け再回答も不十分のため、同月23日、抗議および再々質問をいたしました。
7月25日、同新聞社より直接会って話しあって説明したいとの申し出があり、同月29日に臼井敏男論説副主幹、松本正広報担当(役員待遇)、両角晃一コーポレート・コミュニケーション本部長と、31日には松本正広報担当、両角晃一本部長と2回にわたって話し合い、その結果、8月1日午前10時、3回目の回答書を頂きました。
3通の回答および話し合いの結果を総合すると、
鳩山法相を中傷、侮辱する意図は全くなかった
死刑執行命令を出すのは法相の職務であり、執行命令を出したこと自体は批判したわけではなく、13人の死刑執行が多いと言っているのではない。
最近の法相に比べて多い、と言ったまでである。
法相が死刑執行について慎重さを欠いたとは思わないし、死刑判決が増えれば、死刑執行は増えるのは当然で、朝日新聞社は死刑廃止の立場をとっていない 「永世死刑執行人」と言ったのは、将棋の永世名人から連想した比喩であり、「死に神」とは人を死に誘う神という意味でこれも比喩であるが、犯罪被害者の存在には思い至らず、この言葉が犯罪被害者遺族のみならず、関係者その他いろいろな職業の人に不快感を与える不適切な表現であったことについて、「不明を恥じている」犯罪被害者遺族が、確定死刑囚の死刑執行を望んでいることについては、充分理解している
というのが同新聞社の見解です。
犯罪被害者遺族としては一応納得できるものでしたが、そもそも「死に神」という言葉は、人を蔑視する差別用語であり、法務大臣であろうと誰であろうと、人に対して使うべき言葉ではなく、大臣に落ち度がないというのなら、大臣に謝罪すべきではないでしょうか。
しかし同新聞社は、権力批判は報道機関の使命だとして、謝罪の意志を表明しませんでした。率直に謝罪した方が朝日新聞社の信頼は高まると思うのですが、このあたりが報道機関の官僚的体質でしょうか、残念に思います。
しかし、法相の行為は間違っていなかったと認めたのですから、この問題を内閣改造まで持ち越すことはよくないと考え、今回の回答をもってこの問題に終止符を打つことにし、同日記者会見で発表しました。
私たちの今回の行動について、多くの方々から激励を頂きました。
厚く感謝申し上げますとともに、以上のとおり報告を申し上げます。
2008年8月4日
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