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公訴時効の廃止について
 (ニューズレターVOL.36号 2009.11.16)
千葉法務大臣が23日の閣議後の記者会見で、殺人などの重大事件の公訴時効見直し策を28日の法制審議会の総会で諮問することを表明しました。
あすの会では岡村代表幹事がコメントを発表しました。
  • 公訴時効の廃止について〜千葉法相に要望書提出
  • あすの会では岡村代表幹事がコメントを発表しました
     林大樹君の手紙

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公訴時効の廃止について〜千葉法相に要望書提出
公訴時効の廃止の要望書(pdf80KB)
弁護士 河野 敬(顧問弁護団)

 公訴時効の制度は、一定の時間が経過すると国家が加害者を起訴することができなくなるというものであり、いわば、国が加害者に対して、もう刑事責任は問わないというお墨付きを与える制度です。これは、被害者にとってはとても耐えられないものであることは言うまでもありませんが、一般の国民の正義感にも著しく反する制度です。

そこで、当会もこの制度を廃止すべく活動をしてきましたが、今年になって、法務省を中心に公訴時効の廃止に関する議論が活発に行われるようになり、7月17日、法務省は、それまでの検討の成果として「凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方について?制度見直しの方向性」と題する報告書を公開しました。

この報告書の内容は、法務省のホームページに掲載されているとおりですので、ここでは触れませんが、従来に比して被害者の立場を考慮したものとなっており、基本的な方向性として評価すべきものと言えます。ただ、次の点が不足だと思われます。そこで、当会としては、これらの点も含め、公訴時効の廃止を更に働き掛けていく必要があります。

1つ目は、時効を廃止すべき対象となる犯罪の点です。生命侵害に至らなくても重篤な後遺障害を残す傷害罪の場合も時効を廃止すべき点です。

2つ目は、廃止の対象とされた犯罪については、少なくとも現在公訴時効期間が完了していないものについては、すべて公訴時効の廃止が適用されるべき点です。

 ところで、平成21年9月、鳩山内閣が誕生し、千葉景子参議院議員が新法務大臣に就任されました。

そこで、当会は、10月2日、岡村代表幹事を含め合計9名で新法務大臣と面談し、要望書を手渡して公訴時効の廃止を推進されるよう要望し、また、加藤公一法務副大臣にも挨拶し、公訴時効の廃止の推進を要望いたしました。

 時効は、日々進行するものであり、時の経過とともに時効が完成してしまいます。従って、この問題は時間との戦いでもありますので、一日も早く制度の改正を行うことが重要であり、当会としましても、喫緊の課題として、強力に取り進めたいと考えています。

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公訴時効及び刑の時効の見直しを法制審議会に諮問することについてのコメント
全国犯罪被害者の会(あすの会)代表幹事 岡村 勲

  本日、千葉法務大臣は、凶悪重大犯罪の公訴時効および刑の時効の見直しについて、次回法制審議会に諮問する旨を発表された。

 公訴時効制度は、犯罪者の逃げ得を許し反倫理的であるのみならず、犯罪被害者の苦しみ、怒りに時効がないことを考えれば、極めて不公正な制度であると言わなければならない。

 当会は、かねてから凶悪重大犯罪の公訴時効の廃止および遡及適用を強く希望してきたが、法務省も、本年7月15日、時効制度に見直しの方向性を発表していた。

 本月2日には、当会会員9名が千葉法務大臣及び加藤法務副大臣を訪問して早期の立法を要望し、その後来年1月23日(この日は当会設立記念日にあたる)に時効期間が満了となる重篤な傷害を受けた林祐子、その夫良平、次男大樹が時効の遡及適用を求める切々とした手紙を大臣、副大臣に提出していた。

 本日の大臣のご決断を心から歓迎する。
 法制審議会が、公訴時効期間との秒読みに焦燥する犯罪被害者の心情に思いを致し、速やかに犯罪被害者の望む方向で答申をされ、1日も早い法改正が行われるよう切望する次第である。   
以 上

参考のため、林大樹の手紙を添付する。
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平成21年10月10日
千葉景子法務大臣様
会員 林 大樹

 先日はお忙しい中有り難うございました。
 大臣と直接お話しができたあの時間は、言葉に表せないほど大切な時間となり、一生忘れることはないだろうと思います。

正直なところ、時効成立まであと3ヶ月となった今、このまま母さんを刺した犯人は捕まらず、のびのびと残りの人生を楽しむのだろうと諦めかけて、事件のことはあまり考えないようにしていました。だけど大臣とお逢いした時、大臣はこんな僕にもちゃんと目を合わせて最後まで話しを聞いてくださいました。

その時、なんて誠実な人なのだろう、この人が法務大臣なら何とかしてくださるのじゃないかと思いました。諦めかけていた心が一気に期待へと変わりました。 毎日犯人を憎み、たとえどんなに楽しいことがあっても必ず心のどこかには、もし事件がなければと考え、楽しむことができない自分がいます。

そんな生活を死ぬまで送らねばなりません。しかし、加害者側の人間は全く反省もせず逃げて、時効が成立しさえすれば何事もなかったかのように残りの人生を楽しむのです。こんな正義に反する制度が存在して言い訳がありません。

 僕が小学生の頃、父に連れられて東京の岡村先生の法律事務所に行き、その時初めて岡村先生と会いました。幼かった為、何をしに岡村先生のもとに向かったのかは分かりませんでしたが、父が先生に何かを必死にお願いしているのだけは分かりました。

そしてその頃から「あすの会」の活動が始まったのです。全国から被害者や遺族の方々が同じ目標に向かって集まり、活動し始めたのです。 父も様々な活動をし、人形劇まで行ってきました。その甲斐あってか犯罪被害者等基本法ができました。

また、平成16年の法改正で時効の期間が延びて、うれしいと思っていたのですが、父に聞いたら、過去の事件、つまり母さんの事件には適用されないとの事で悔しい気持ちになりました。来年の僕の誕生日が、母の事件の時効の日です。

 明日にも時効が成立する被害者がいるはずです。そのような人達の為にも一日でも早く時効を廃止してください。お願いします。(原文のまま)
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