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第13回国際被害者学会
(ニューズレターVOL.36号 2009.11.16)

国際被害者学シンポジウム開会式挨拶より
学校法人 常磐大学理事長・顧問 諸澤 英道

国際被害者学シンポジウム

去る8月23日から28日まで、水戸市の常盤大学で、第13回国際被害者学シンポジウムが開催されました。このシンポジウムは、事件・事故に巻き込まれた被害者や遺族の支援のあり方、問題点を考えるために、3年毎に世界各地で開催されているものです。

今回は54の国と地域から専門家が集まり、被害者支援に取り組むタイのパチャラキティヤパー王女の講演が行われたほか、あすの会代表幹事・岡村勲も被害者を取り巻く状況を訴えました。

国際被害者学シンポジウム

また、シンポジウムに合わせて、被害者参加プログラム実行委員会による市民フォーラム、パネル展示、ワークショップも同時開催されました。 1982年第4回国際被害者学シンポジウムが東京と京都にて開催されて以来、27年ぶりのシンポジウムの開会となります。

今回は被害者学の発展とアジア地域の研究者の教育を促進することを目標に、「被害者学と人間の安全」をテーマとして掲げています。 残念ながらアジア地域は、被害者学の分野においては世界に後れをとっています。

1985年、国連で「犯罪および権力乱用の被害者のための正義に関する基本原則宣言」が採択されました。採択より4半世紀が経ち、多くの西欧諸国で基本理念に則った法整備が行われてきましたが、多くの国々においては、原則に沿った形での立法措置に取り掛かっていないのが現状です。

 日本もまた、長年のあいだ被害者に対する立場を変えることがありませんでしたが、政府はついに被害者の権利を認識し、2004年の12月、「被害者基本法」を成立させました。これは国が被害者の権利と利益を法によって認識した最初のケースでした。

序文では、現在、誰もが被害者になる可能性が大いにあるため、犯罪被害者の立場に立った政策をつくるべきであり、被害者の権利と利益が保護される社会を創造するための一歩を進めるべきであると述べられています。

それに加えて、被害者基本法第3条では、被害者は個人の尊厳を尊重される権利があり、ふさわしい処遇を得る権利を有すると謳われています。日本におきましても、シュテファン・ジェファーズの言った、「被害者の復活」という状況が到来しているのでしょう。

 私は被害者学が、人々がどのように人権と尊厳を守るかについての科学であると考えています。1975年に、初めて被害者学について書いた論文において、私はこの問題を扱いました。被害者学は被害者の権利の学問であると強調しました。

しかしその当時、日本の犯罪学や被害者学の教授からの評価は極めて悪いものでした。当時、多くの学者たちは、犯罪被害者の権利を守ることより、被告人の利益を守ることを優先していました。被害者に対する社会の興味は薄く、私は、この国で被害者の権利に対して、注意が向けられることは決してないのではないかと思いました。

1982年、東京と京都でシンポジウムが開催されたときも状況は同じでした。しかし、今回はすべてが違います。 わずかな変化を感じたのは今から約10年前のことでした。専門家たちが徐々に私の意見に同調するようになってきたのです。メディアも被害者への同情を口にし始めました。全体的な風土が変わってきたのです。

 日本の被害者支援は、西欧諸国に比べ2~30年の遅れをとっています。しかし約10年前、たくさんの専門家たちが、地域社会を基盤とした被害者支援センターの設立へ身を投じていました。例えば、水戸被害者支援センター(現在の茨城被害者支援センター)は、1995年、諸澤英道、冨田信穗、長井進、ジョン・ドゥーシッチらによって、初の民間組織として設立されました。

 地方のイニシアティブに続き、今日では他の被害者支援センターが全国に設立されています。被害者自身が被害者支援の内容について疑問を抱き、被害者の会を組織するようになったのです。 被害者支援運動の歴史的発展としては、2000年1月全国犯罪被害者の会(あすの会)が設立されました。そして、積極的に既存の法制度への働きかけを行っております。

一般の日本国民も、被害者の苦しみに関して関心を抱くようになり、政府も被害者支援政策を見直すに至りました。あすの会は署名活動を行い、55万もの署名を日本各地から集め、政府に対して陳情を行い、2000年5月犯罪被害者保護法が制定されました。これにより、日本で初めて被害者が裁判を傍聴したり、裁判の記録を閲覧したりすることが可能となったのです。

しかしながらそれは、被害者の権利というより、判事と検察官の裁量に任せられるところが多いという状況となっています。また、2000年11月には、ストーキング防止法、児童虐待防止法が、そして2001年4月には、DV保護法が相次いで制定されております。

 さらに、人々の強力な後押しによって、いくつかの法律は改正されるに至っています。例えば、2001年12月、飲酒や薬物の影響を受けた運転手が交通事故を起こした際には、これまでよりも重い罰が処されることとなりました。また、2003年7月、レイプに対する最も重い処罰も法によって見直されました。

これらの法改正をもたらしたすべての陳情活動は、被害者自身によって主導されたものです。これらの努力を背景として、2004年の犯罪被害者基本法が採択され、2005年4月より施行されました。日本において初めて、被害者の権利と利益が法によって認識されたのです。この法に基づいて、犯罪被害者基本計画が2005年12月に策定され、日本における被害者保護の法整備の改善にさらなる勢いが加えられました。

 このように、日本における被害者運動は勢いを得て、改正に有利な動きがみられています。また、被害者自身が声を上げるようになり、マス・メディアが被害者を支援的に報道しています。日本の社会も被害者たちの声を支援し、政府もより積極的に、よい方向へと動き出しています。被害者のための支援運動が今後も各地でみられることを心から願っております。

「全国犯罪被害者の会・あすの会」space.gif
第13回国際被害者学シンポジウム特別講演
 「犯罪被害者の権利と被害回復制度を求めての運動と成果」

国際被害者学シンポジウム
シンポジウムで講演をする岡村代表幹事

「犯罪被害者の権利と被害回復制度を求めての運動と成果」講演内容(pdf232kb)

「全国犯罪被害者の会・あすの会」space.gif
国際被害者学会に参加して
幹事 岡崎 后生

 去る8月23日〜28日まで、日本では27年ぶりとなる「国際被害者学シンポジウム」が、タイ国の王妃を招いて茨城県水戸市の常磐大学で開催されました。その初日に行われた市民フォーラム、学会シンポジウム開会式に参加させていただきました。

 開催地が私共の地元ということもあり、是非岡村代表幹事の講演を聴きたくて参加を決めていました。 その後、常磐大学で勉学された方のお勧めを頂き、市民フォーラムに参加する事になりました。

顧問弁護団の白井弁護士と会員の澤田さんご夫婦などによる、
第一部「知っていますか? 刑事裁判へのかかわり方」に引き続き行われた、
第二部「さまざまな被害者の声」で息子の事件に関して話をさせていただきました。

岡村代表幹事や高橋弁護士など、沢山の「あすの会」の皆様の前で事件のことを話すのは初めてであり、やはりいつもより緊張をしました。

 今回、岡村代表幹事の講演を初めてお聴きすることができました。不幸にして犯罪被害者となった法律の専門家が、法律の不備に直面し、被害者として自ら声を上げ訴えてこなければならなかった過酷な日本の状況などを話されました。

そして諸外国から参加の方々に対して、「犯罪被害者対策に関し、被害者に負担を強いるような日本の真似を決してしないでください」と話をされました。とても迫力があり、尚且つやさしさがしみじみと伝わってくる講演でした。

 その後に行われた、レセプションパーティでは全国の被害者団体の方々との旧交を温めることができ、貴重な体験をさせて頂くと共に充実した一日でした。
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