今年の4月から始まった、内閣府主催の、被害者のための基本計画検討会(委員総勢20名)には、あすの会から岡村勲弁護士が出席し、日弁連から山田勝利弁護士が出席されました。私は、岡村弁護士の随行員として毎回、同行させて頂きました。しかし、これらの委員の中で、「被害者の権利」という側面から意見を述べられたのは、岡村弁護士しかおりませんでした。
被害者問題となると、支援ということを良く耳にします。しかし、支援は、一歩間違えれば、「支援して下さい。」「ならば支援して差し上げましょう。但し、予算に限りがあります。」となってしまうものです。つまり、支援は、恩恵と表裏一体のもので、被害者の被害の全面的な回復には、いつも不満が残る結果となってしまいます。それは、なぜでしょうか。「支援して下さい」と頼む姿勢だからです。
これに対し、「権利」であれば、権利を具体的に実現するための制度が必要となり、制度が完成すれば、それを運用するためにどうしても予算を付けなければなりません。権利と制度が先にあれば、お金は後からいくらでもついてくるもので、だからこそ、支援ではなく、権利を主張することが大切なのです。
あすの会では、被害者のための刑事司法、附帯私訴制度、公訴参加制度(訴訟参加)、被害者補償制度という被害者の権利を前提とした各種の制度を主張し、多くの署名を得てきました。
その署名を小泉首相に提出したことがきっかけとなって、平成16年12月1日には犯罪被害者等基本法が成立しました。そこには、被害者の「権利」が明確に謳われるとともに、被害者が刑事手続に参加することができるよう、国及び地方公共団体に対し必要な施策を講ずべきことを義務づけています。
ところが、日弁連は、6月17日、被害者の訴訟参加(公訴参加)を全面的に反対する理事会決議を出しました。これでは、日弁連は、基本法の精神を理解していないと評価されてもやむを得ません。
しかしながら、
8月9日に発表された基本計画検討会による「基本計画(案)の骨子」では、「公訴参加を含め、刑事裁判手続に直接関与することのできる制度を導入する方向で検討し、2年以内に結論を出す。」とされ、導入する方向性が明確に定められました。
これは、ひとえに、基本計画検討会のなかで、孤軍奮闘ながらも権利を主張してきた岡村弁護士の発言が大きく反映された結果と言えましょう。(ただし、当該骨子は、まだ最終的なものではなく、最終的に決定されるのは12月の閣議決定です。)
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