政府の司法制度改革推進本部は、司法制度改革関連法案(10法案)を平成16年2月27日に閣議決定し、同3月2日平成16年度通常国会に提出した。
政府による司法制度改革は、「21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議すること」を目的に司法制度改革審議会により、平成11年7月27日から審議が開始し、平成13年6月12日までの2年間に亘り63回もの会議が実施されている。
その後、平成13年12月1日に司法制度改革推進本部が内閣に置かれ、本国会の法案提出に至っている。実に4年以上の歳月を費やし審議され、その間に内閣総理大臣は小渕内閣、森内閣、小泉内閣と3代にも移り変わっている。
あすの会発足前から開始されていた全63回にも及ぶ司法制度改革審議会の議事録は、インターネット上で公開されており、誰でも議事録を閲覧することができる。 私もこの議事録を眺めてみたが、犯罪被害者の問題について議論を行った形跡は残念ながらほとんど見当たらない。
よって、本国会に提出された司法制度改革関連法案についても犯罪被害者の問題については触れられていないものだと半ば諦めて法案概要を眺めていたが、本国会に提出された司法制度改革関連10法案の一つに「総合法律支援法案」があり、この中に犯罪被害者のことについて下記のように書かれているのを発見した。
以下に、原文を紹介する。
(被害者等の援助等に係る態勢の充実)
「犯罪被害者等が刑事手続に適切に関与するとともに、犯罪被害者等が受けた損害又は苦痛の回復又は軽減を図るための制度その他の犯罪被害者等の援助に関する制度を十分に利用することのできる態勢の充実が図られなければならない。」
今回の司法制度改革の最大のテーマである裁判員制度導入のように具体的な内容については明示されてはいないが、犯罪被害者の支援に関する事柄が明記されたことには違いない。これは、大きな前進である。
あすの会が発足して4年が経過し、その足跡については前号のVOICEで岡村代表幹事が書かれている通りで、各地でのシンポジウム開催や欧州調査団の派遣、全国での署名活動の実施、そして数十万名分の署名の小泉総理大臣へ直接提出など、積極的に犯罪被害者の悲痛な実態と法の不備を訴えてきた。
あすの会の活動がなければ、犯罪被害者の問題は忘れられた存在のままで、司法制度改革関連法案に触れられることもなかったであろう。
我々の活動が、今回の司法制度改革関連法案に犯罪被害者の支援に関わる一文を捻じ込んだと私は信じて疑わない。
それと同時に、これまでの会員の皆様のご努力と会員以外の方々のご支援、ご協力に感謝の念を抱かずにはいられない。
本国会に提出された司法制度改革関連法案が、犯罪被害者にとっても社会全体にとっても有意義なものになることを切望している。
これまで私は、犯罪被害者の法的な権利確立に向けて講演を行ってきた。
最近では、被害者には法的権利が何ら認められていないことが浸透してきた感触を得ている。
一方で、経済的な問題について多くの方は、民事裁判を起こせば経済的に犯罪被害者が困窮することがないと思われているようである。 よって、本年は、経済的な問題についても議論幅を広げるため尽力する所存である。
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