毎日のように報道される事件、いつになったら安心して生活ができるのでしょうか。私は14年前(1991年10月29日)娘を不動産会社の店長たる者に殺害されました。このようなとき一番頼れる所は警察署、検察庁であり、犯人逮捕後は裁判所により厳しい罰を下していただくことが犯罪被害者とその遺族(以下、被害者という)の願いであり、またこの三者は被害者の味方であると思っていました。
しかし今の法律はそうではありません。その原因は刑事訴訟法にあります。
「公訴権の行使は、国家及び社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって、被害者の利益や損害の回復を目的とするものではない」(要旨)という1990年2月20日の最高裁判決が物語っています。
そのような厳しい状況の中、被害者は、警察から連日長時間の事情聴取を受け、その苦しみをよそに家庭内に入り込まれて証拠固めの実況見分をされます。
さらに、検察では求刑は殺された被害者の数で決められ、専門的立場にある検察官は被害者の意見を聞き入れようとはしません。裁判所では被害者の目の前で被告人が嘘の証言をしても反論できず、裁判の進行も裁判官、検事、被告人/弁護士の三者で決められ、被害者には何の相談もありません。
また、民事裁判では、損害賠償命令が出ても加害者に充分な資力がないことから、ほとんどの被害者が損害賠償金を受け取れず泣き寝入りしているのです。事件後、被害者は再起不能な大きなダメージを受けながら、国(一部見舞金程度の犯罪被害給付制度あり)や行政から何の援助もなく、家庭に引きこもりながらも健康回復を願って自費で通院しているのです。
一方、加害者は我われ被害者の税金を含めた国費を使って何の不自由もなく生活できます。 このままではいつになっても被害者のための法律にならない、少しでも被害者のための法律にするには、事実を社会に訴えることが必要であるとの結論に達しました。
そして、2003年2月1日新宿駅西口をスタートに、北は北海道、南は沖縄まで全都道府県をまわり、557,215名の署名をいただき、法務大臣に提出し、小泉総理にも報告しました。
私は被害者が置かれている立場をマイク片手に市民に訴えました。またリーフレットと署名用紙を持ちお願いしましたが、ほとんどの人が私を避けるように通り過ぎて行きました。時折つらく寂しい気もしましたが、若い茶髪の若者が私の話を聞いてくれました。
署名もいただき、帰りには「おじさん頑張って」と声を掛けられたり、主婦と見られる方からも「頑張ってください」と励ましの言葉をいただき元気づけられ、勇気をいただきました。
署名活動をして感じたことは、市民の皆さんは被害者が置かれている現状を知らされていないということです。 また毎日のように報道されている事件も身近に感じていないということです。いつ事件に巻き込まれるか分からない時代です。どうしても被害者のための法律が必要なのです。
幸い昨年、衆議院、参議院において犯罪被害者等基本法が可決成立いたしました。
この犯罪被害者等基本法の成立に大きな影響を与えたのが、
全国の皆様からいただいた557,215の署名です。
現在は基本計画作成作業に入っていますが、被害者の声を十分に反映させた基本計画が作成され、具体的な法律が制定されることを願っています。 最後に署名に御協力いただいた全国の皆様に厚く御礼申し上げます。
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