弁護士 白井孝一
改正された犯罪被害者等給付制度は、平成20年7月1日から施行されています(本当に残念なことですが、4月に改正法が制定されていながら6月8日に起きた秋葉原事件の被害者の方々には、新制度の補償が間に合いませんでした)。その改正の概要は次のようになっております。
【1】補償内容等の拡充
- 1・[休業補償の新設] 医療費+休業補償(限度120万円)
- 重傷病の給付金として今までは医療費の自己負担相当額1年分まで支給されていましたが、改正により、休業補償も加算されることとなりました。限度額は医療費と休業補償合わせて120万円までです。
- 2・[障害給付金の大幅引き上げ]
- 引き上げられた金額の一覧については別表 1「障害給付金」を参照してください(最高額:要介護1級3974万4000円)。
改正の特徴点は、
- 最高金額を自賠責政府保障事業並にしたことにともなって、全体的に大幅に金額アップを図ったこと
- アップの対象を、1級から3級までの重傷者としたこと
- 若年の被害者について、高年齢者との金額の格差を縮めるように特別のアップを図ったこと
- こうしたアップを図る仕組みとして、算定の仕組みは同じとしながら、給付基礎額および倍数を大きく引き上げる方法をとったこと、などにあります。
- 3・[遺族給付金の大幅引き上げ]
- 同様に金額の一覧は別表2「遺族給付金」を参照してください。改正の特徴点は、
- 被扶養者の人数を0から4人に区分し、多いほど給付額をアップさせたこと。(最高額は、被扶養者4人以上50才から55才未満の場合で2964万5000円)被扶養者0人の場合にはアップはありません。
- アップを図る仕組みについては、上記2・ 3.の方式と同じです。
- 被扶養者があれば、仮に若年であっても大幅にアップしたこと(例えば、20才未満で4人以上の場合468万円から1617万円にアップしました)。
【2】申請請期間に特例を新設
申請期間は、死亡、重傷病、障害の発生を知ったときから2年、またはそれらが発生したときから7年ですが、改正により、やむを得ない理由によりこの期間内に申請することができなかったときは、その理由がやんだ日から6ヶ月以内に限り申請ができるようになりました。
【3】その他の改正
- 1・[法律の名称]
- 「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律」に改正。
- 2・[法律の目的]
-
基本法の理念を踏まえて、この法律の目的が「再び平穏な生活を営むことができるように支援するため」であること、「継続的な援助の措置を講ずる」こと、犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会の実現に寄与する」こと、などを明記しました。
このことによって、この補償制度の目的が、単なる恩恵による見舞金ということから、犯罪被害者の権利利益を保護するという性格に大きく前進したことを意味しています。
その他、支援団体の自主活動促進等の改正点がありますが、ここでは割愛します。
改正は、遡っての適用がありませんので、現に窮状にある被害者等のために、民間基金の設立を急ぐ必要があります。
|