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意見書
 (ニューズ・レター24号別添)

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犯罪被害者等基本計画案(骨子)に対する意見書
平成17年8月23日
内閣府犯罪被害者等施策推進室 御中
全国犯罪被害者の会(あすの会)


 犯罪被害者等基本計画案(骨子)に関し、主に下記の5つの項目について、それぞれ
1. 附帯私訴の導入 2. 新たな被害者補償制度の創設
3. 加害者情報の継続的な提供、 4. 公訴参加制度の導入及び
5. 犯罪被害者週間の創設、を強く要望致します。

 第1 損害賠償の請求についての援助等(基本法第12条関係)
 ―[今後講じていく施策](1)「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度を新たに導入する方向での検討及び施策の実施」について―

1 意 見
骨子においては、[今後講じていく施策](1)「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度を新たに導入する方向での検討及び施策の実施」に関し、「法務省において、附帯私訴、損害賠償命令、没収・追徴を利用した損害回復等、損害賠償の請求に関して刑事手続の成果を利用することにより、犯罪被害者等の労力を軽減し、簡易迅速な手続とすることのできる制度について、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行い」とされているが、

  1. 「附帯私訴、損害賠償、没取、追徴」という例示ではなく、附帯私訴に限定すること、そして
  2. 「我が国にふさわしいもの」という文言を削除すること、の2点を強く要望する。

2 理 由
現在の訴訟手続においては、民事裁判手続と刑事裁判手続が完全に分断されているため、犯罪被害者等は二度の苦しみを強いられている。

ようやく刑事裁判が終わったと思っても、それだけでは損害賠償は得られず、多額の費用をかけて弁護士を依頼し(加えて、請求金額が高いほど印紙代も高額になり、負担は増すばかりである)、一から証拠を収集し、別途民事裁判を起こさなければならない。

また、刑事裁判で罪を認めていたはずの加害者が、民事裁判では一転して金員の支払いを惜しんで意を翻すことすらある。そこで、このような精神的、経済的な苦しみから解放されるためには、附帯私訴制度の導入が必須である。


この点、骨子においては「損害賠償命令、没収、追徴」も例示されている。しかしながら、これらはいずれも加害者に対する「刑罰」であり、犯罪被害者等の損害回復の手段としてはふさわしくない。特に「没収・追徴」制度は、犯罪被害者等の損害回復には何らの役にも立たない。

殺人、傷害等身体犯の加害者から、何を没収し、何を追徴するというのか。
犯罪に使用された凶器を没収しても、犯罪被害者等の損害回復にはならない。

そして、「損害賠償命令」についても、加害者の資力を勘案して賠償命令の金額が決められ、少額の賠償命令しか出されないのが現実であって、名称は似ていても、被害の全面的な回復である民事上の「損害賠償請求権」とは全く異なる制度である。
犯罪被害者等の損害回復にこれらの制度を活用しようとするのは、附帯私訴制度の導入を妨げるための議論のすり替えに他ならない。


これに関連して、上記骨子の「我が国にふさわしいもの」との文言は、従前の制度の枠内で検討すればよいという程度の保守的な意味を持ち、附帯私訴制度を含めた新たな損害回復手段の導入の可能性を狭めるものとして働く恐れがある。

「我が国にふさわしいもの」を導入するのではなく、新たな制度を導入した上で「我が国にふさわしいもの」として適応させていけばよいのである。したがって、このような文言は不要であるから、削除されるべきである。
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 第2 給付金の支給に係る制度の充実等(基本法第13条関係)
1 意 見

この項目に関する[今後講じていく施策]として、「新たな犯罪被害者補償制度を創設し、犯罪被害者等には国に補償を求める権利がある旨明確に規定する」ことを挙げるべきである。そして、この犯罪被害者補償制度は「社会保障・福祉制度全体の中」で考えるのではなく、新たな分野の制度として構築されるべきである。

また、[今後講じていく施策](4)として「経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討並びに施策の実施」が挙げられているが、「手厚く」ではなく「十分な」支援とすべきである。

2 理 由
骨子においては[今後講じていく施策]として、(1)「現行の犯罪被害給付制度の運用改善」や(2)「犯罪被害給付制度における重傷病給付金の支給範囲等の拡大」が挙げられているが、これでは犯罪被害給付制度の拡充だけで足りるとする趣旨であるように読めなくもない。

犯罪被害者等基本法が成立した今日、単に従前からある犯罪被害給付制度の運用改善を図るだけで終わらせることなく、新たな犯罪被害者補償制度を創設し、犯罪被害者等には国に補償を求める権利がある旨明確に規定する必要がある。

そして、[今後講じていく施策](4)として「経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討並びに施策の実施」が挙げられているが、「手厚く」ではなく「十分な」支援とすべきである。

「犯罪被害者等に対する経済的支援制度を現状よりも手厚いものとする必要があること」は当たり前のことであり、わざわざ犯罪被害者等基本法が制定されたのは、当たり前のことを行うためではない。犯罪被害者等支援に関する新たな一歩を踏み出す後押しをするためである。

現在の犯罪被害者等給付金支給法の下では、犯罪被害者等は、見舞金程度の金額しか支給されず、誰からも補償を受けられずに耐えているのである。このような犯罪被害者等に対し「十分な」経済的支援を行うこと、これこそ基本法の理念に則った施策である。

この点、イギリスでは、国が社会の連帯共助の精神を代表して、被害者に対する補償を行うべきであるとされ、ドイツでは、国家が権力を独占し市民から武器を強制的に取り上げて犯罪の危険に曝している以上、犯罪被害があったときは当然国が補償すべきであるという考え方(保護義務論)を取っている。

そして、いずれの国においても、被害者補償は、被害に遭う前の生活状態に戻すという考え方に基づいて、完全補償に近い金額が支給されている。

また、骨子では、「犯罪被害者等が行う損害賠償請求に対する国の補償等の在り方に関する検討を含め、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿やその財源を検討するため」とされているが、新たな犯罪被害者補償制度は、他の社会保障制度や社会福祉制度と関連することはあっても、別個の新たな制度として創設すべきである。

決して、既存の「社会保障・福祉制度」の存在を盾にして、新たな犯罪被害者補償制度の創設が妨げられるようなことがあってはならない。
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第3 安全の確保(基本法第15条関係)
―[今後講じていく施策](1)加害者に関する情報提供の拡充―

1 意 見
被害者からの希望があった場合には、加害者の出所予定日と居住予定地、服役中の動向に関する情報のみでなく、刑期満了後、退院後の住所移動及び職場などを継続的に情報提供する制度を構築すべきである。

骨子では、この点に関する被害者等への情報提供が曖昧となっている。
例えば、情報提供は、仮出獄ないし自由刑執行終了時点に限られているようであり、継続的な情報提供が担保されていない。


2 理 由
刑期満了者の報復は、被害者等がもっともおそれるところであるが、現実には、これを防ぐ手だてが極めて貧弱である。
現状は、再被害が発生したときに、初めて警察が捜査に乗り出す程度であり、これでは同じ事の繰り返しである。
警察による保護や犯罪予防に限界があるのであれば、せめて被害者自身に自らを守る手だてを保障すべきである。
 第4 刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等(基本法第18条関係)
―[今後講じていく施策](2)「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の検討及び施策の実施」について―

1 意 見
骨子においては、[今後講じていく施策](2)「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の検討及び施策の実施」に関し、「公訴参加制度を含め、犯罪被害者等が刑事裁判手続に直接関与することのできる制度について、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行い」とされているが、

【1】公訴参加制度の導入に限定した文言にすること、

【2】直接関与の具体的な方法として、
  1. 公判期日の決定の際に被害者の意見を聞くこと、
  2. 被告人・証人・鑑定人等に対する被害者の質問権、反論権を認めること、
  3. 被害者に証拠提出権を認めること、
  4. 被害者に論告求刑権を認めること、
  5. 被害者の上訴権を認めること、

【3】我が国にふさわしいもの」という文言を削除すること、

  について強く要望する。


2 理 由
 (1)
公訴参加制度に限定しないと、従前の制度の枠内で検討すれば良いという保守的な程度の意味しかもたないことが危惧される。これでは、基本法の精神が骨抜きにされる恐れがある。従って、公訴参加の導入に限定した文言にし、その上で、次に述べる具体的な制度を検討し、導入していくべきである。

 (2)
現行法上、被告人は、刑事裁判手続において「当事者」として厚く保護され、様々な権利が認められている。しかし、他方で、被害者に対しては全くと言って良いほど権利が認められておらず、被害者は、当事者ではなく、単なる「証拠品」に過ぎないのが現状である。

そして、被害者は「証拠品」であるがゆえ、まず、公判期日の指定に際しては、被告人や弁護人の都合は十分に尊重されるものの、被害者の都合は全く無視されている。そのため、被害者の知らないところで、勝手に裁判が進められる結果となる。

次に、被害者は、法廷で被告人に勝手なことを言われても、何の反論もすることができない。そして、被告人であれば、起訴状が確実に送達され、様々な記録が当然に開示され、また、裁判が始まっても黙秘権がある一方で、何の根拠もなく言いたいことを言い、証人に対し自由に質問し、反論することができる。

これに対し、被害者は、一定の手続を踏まなければ起訴状も記録も見ることができず(見ることができたとしても大幅に制限される)、裁判に必要な場合にだけ、証人として呼び出され、聞かれたことだけに答え(すなわち、言いたいことは言えず)、反対に言いたくないことにも答えなければならない義務が課せられている。

もし、証人の呼出や証言を拒否すれば、被害者であるにも拘わらず制裁を受けることになる。 そのほか、被告人は、自己に有利な証拠を提出することができるが、被害者には証拠の提出は一切認められていない。

また、被告人は、判決に不服があれば上訴することができるが、被害者は、検察官が上訴しない限り、独立して上訴することができない。 これに対して、ヨーロッパの国々では、被害者は証拠品ではなく、「当事者」として立派な地位が与えられ、被害者が裁判手続に直接関与する公訴参加制度が認められている。

この点、被害者が検察官に対して意見を述べる制度を創設し、これを通して間接的に裁判に反映させればよいという意見もある。しかしながら、現在においても、被害者が検察官に対して自由に意見を述べることは可能である。

それでも、公益の代表者である検察官が、具体的な犯罪被害者等の苦しみや生活の窮状を代弁することは不可能であり、このように検察官による役割だけでは不十分だからこそ、公訴参加をして直接、裁判に参加することを望んでいるのである。

他方、現行法上の意見陳述権は、権利ではなく、裁量に基づくものであるから恩恵に過ぎない。被害者にも被告人に認められているのと同様、最終的な意見を述べることが権利として保障されるべきである。

 (3)
上記骨子の「我が国にふさわしいもの」との文言は、前述のとおり、新たな制度導入の可能性を狭めるものとして働く恐れがあるから、このような文言は削除されるべきである。
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 第5 国民の理解の増進(基本法第20条関係)

―[今後講じていく施策](8)犯罪被害者等施策に関する特定の日ないし期間にあわせた集中的な啓発事業の実施について―

1 意 見
「犯罪被害者等施策に関する特定の日ないし期間」とあるが、「特定の日」では不十分であり、是非とも「犯罪被害者週間」を創設してほしい。


2 理 由
平成16年12月に、犯罪被害者等基本法が成立した。この法律は、犯罪被害者等の尊厳が尊重され、尊厳にふさわしい処遇を受ける権利があることを明確に謳い(同法第3条・基本理念)、そして、犯罪被害者等の視点に立った施策を講じる責務を国や地方公共団体に課するだけでなく、国民に対してもこの施策に協力することを求めている(同法第6条)。

残念ながら、現在、国民が犯罪被害者等のおかれた状況を十分に理解しているとは言い難いのが実情である。しかしながら、犯罪被害者等のための施策を実現するためには、国民の理解・協力が不可欠であり、また、国民の誰もが犯罪被害者等になる可能性を秘めている今日、国民一人一人が犯罪被害者問題を自分のこととして考える啓発活動を行う必要がある。

この場合、啓発活動は、日常行われるべきことはもちろんのこと、ある一定の期間を定めて全国一斉に行うことが一層の効果を上げることは、「人権週間」の果たした成果をみても明らかである。そこで、「犯罪被害者週間」の創設を提言する。

この期間に、国、自治体、犯罪被害者団体、支援団体、弁護士会、報道機関など各種機関が、個別にまたは連携して啓発活動を行うと同時に、犯罪被害者等の視点に立ち、犯罪被害者等のための施策実現について真剣に議論・検討して、施策の整備と前進を図るべきである。

具体的には、大会、シンポジウム、講演会、犯罪被害者等の発表会、児童生徒による作文コンクール、弁論大会、ポスター掲載などが考えられるであろう。 このような制度をとる国は、外国でも存在する。

例えば、アメリカでは、連邦、州が「全米犯罪被害者の権利週間」を制定している。

ヨーロッパでは、「週間」ではないものの、ドイツの白い環、イギリスのビクティム・サポート、フランスのイナブンなど、すべてのヨーロッパの国々の参加しているヨーロッパ・フォーラムで、「犯罪被害者の日」を制定している。

アジアでは、韓国でも、昨年から「犯罪被害者週間」を設立したとのことである(なお、韓国は憲法に犯罪被害者の権利が明記されているほどである)。


このように、犯罪被害者週間などを設置して犯罪被害者問題を前進させることは、今や世界の趨勢となりつつあるのであるから、我が国でも「犯罪被害者週間」を設けて各種啓蒙活動等を行うべきである。

わが国における犯罪被害者運動の草分けは、市瀬朝一氏であり、同氏が全国の257名の遺族、被害者を集めて「殺人犯罪を撲滅する遺族の会」をはじめて開いた昭和42年6月4日を記念して「犯罪被害者者週間」として、6月4日から同月10日までの1週間を提言する。

以 上 
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犯罪被害者等基本計画案(骨子)に対する 追加意見書
平成17年9月5日
内閣府犯罪被害者等施策推進室
骨子意見募集係    御中
全国犯罪被害者の会(あすの会)
 第1 犯罪被害者等ための刑事司法について

 犯罪により生命、身体に重大な被害を受けた犯罪被害者等が、応報感情を抱き、復讐するのは、我が身に降りかかったいわれない危害に対する反撃で、生物としての自然の行動である。

事件から300年経った今日でも、仮名手本忠臣蔵が歌舞伎座を満席にし、感動されていることから考えても、この感情と応報行為が支持されていることが明らかになる。

 近代刑法は、社会秩序の維持の名目で私的応報を禁止した。しかし禁止されたからといって、被害者等の応報感情がなくなるわけではない。復讐権を奪った以上、その代償を支払わなければならない。

国が、被害者等に代わって、事件の真実を明らかにし、被害者等の尊厳と名誉を守り、加害者に適正な刑罰を課する、つまり刑事司法によって被害者等の利益を守ることがその代償であり、この代償と引き替えに、被害者等は復讐権を国に譲渡したのである。

 しかるに最高裁判決は、捜査、公訴提起の目的は公の秩序維持であり、被害者等の利益を目的としないとして、代償の支払いを拒否するのみならず、被害者等に捜査、公判への協力を強制している。

 自己の利益を守ってくれるものとばかり思って協力してきた被害者等も、刑事手続きの進行につれて、公益のためだけに利用されているにすぎないことに気づき、刑事司法に対する憤りと不信が爆発するのである。

復讐権の代償を払わないのみならず、被害者等の錯誤を利用して協力させる刑事司法は、まことに反道義的で悪質といわなければならない。

 2003年ドイツに司法調査に赴いた全国犯罪被害者の会調査団は、現地の裁判官、検察官、学者、弁護士などに、刑事司法は誰のためにあるのかと質問した。公の秩序維持のためと同時に犯罪被害者等のためにあるのだ、という同じ答えが返ってきた。

 なぜ我が国では、刑事司法が被害者等のために存在しないというのか。刑事司法が公益のためにあることは否定しない。しかし同時にそれは被害者の利益のためにも存在しなければならない。

被害者等のために存在しないというのなら、復讐権を被害者等に返還し、捜査、公判に被害者等を利用すべきではない。犯人割り出しのための懸賞金も、被害者等に負担させるべきではない。

犯罪被害者等基本法は、国は、被害者等の声に耳を傾けながら、その権利保護をはからなければならないと定めている。

ということは、国権の一部である司法も、被害者等の権利を養護しなければならないということで、犯罪被害者等のためにも刑事司法は存在するという、当然の原則に立ち返らなければならない。

 国民に信頼される司法と喧伝するが、犯罪被害者等にすら信頼されない司法が、何で国民に信頼されるというのだ。

 基本計画の基本方針に、刑事司法は犯罪被害者等のためにもあることを明記すべきである。
 第2 捜査記録の閲覧謄写請求について

 被害者等にとっては、事件直後から正確な情報を得ることができることが極めて重要である。ほとんどの被害者等が一様に望んでいることであり、そのことを表した一つの例として、長崎県で起きた種元駿君の父種元毅さんが発表した手記は参考になる。

 また、被害者等への捜査情報の開示は、被害者等が適正な捜査を求める権利を行使する上に置いても必要である。現状では、警察や検察の配慮として説明が行われ、その中には丁寧に説明がなされる場合もあるが、取扱はまちまちであり、被害者等の権利として認められているわけではない。

正確な情報を求めることを権利として創設すべきである。  事件発生から起訴までの期間が、極めて短期間である場合には捜査終了後の閲覧謄写でも目的は達せられるであろうが、捜査が数カ月以上にわたる事件においては、捜査終了以前といえども、被害者等に捜査記録の閲覧謄写を認めるべきである。

現行制度の理由として、プライバシーの保護及び捜査への支障を理由としてあげているが、被害者等の申立について、弁護士の代理人をつけなければならないこととし、これを裁判所で審査し、プライバシーの侵害あるいは捜査上の支障が生ずると認められる特段の理由が認められる場合には、その部分について、例外として閲覧謄写を禁ずるなどの制度設計上の配慮をすれば、障碍の発生を防止することができる。

 よって、被害者等が警察及び検察に対して、加害者情報も含めた捜査の進展状況に関する情報の提供を権利として求めることができる制度を創設するとともに、実況見分調書、検証調書、鑑定書などの客観的証拠、被害者等及び目撃者の供述調書などの証拠について、閲覧謄写を認める制度とすることを要望する。
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 第3 不起訴記録の閲覧謄写請求について

 不起訴記録の閲覧謄写については、損害賠償請求その他の権利行使を目的とする場合に、実況見分調書などの客観的証拠について認められているが、供述調書については被害者等自身のそれも含めて原則的に非開示とされている。

 例外的に、民事裁判所からの文書送付嘱託によって特定の者を指定した供述調書のみについて対象とし、しかも民事訴訟の結論を左右するような重要な争点に関するものであって、かつ、その争点に関するほぼ唯一の証拠であることを必要とするなど厳格な複数の要件を満たさない限り開示が認められていない。

 しかし、民事訴訟をするか否かにかわらず、犯罪被害者等がまず第一にのぞむのは加害者情報を含めた真実を知りたいということであり、その要求は極めて切実である。それは、不起訴の場合でもかわらない。何故不起訴となるのか、その真実を知るために捜査の結果得られた証拠が開示されなければならない。

 また、被害者等が検察審査会への申立をする場合に、実況見分調書など一部の客観的証拠だけでなく、供述調書の検討も必要であるが上記の厳格な要件では依然として全く閲覧謄写ができないままであることに変わりはなく、また、民事訴訟を提起するか否かの検討をする場合ですら同様である。

 このような非開示制度の理由として挙げられるのが、関係者のプライバシーの保護および捜査・公判に対する支障という点にある。しかし、そもそも被害者等自身の供述調書を被害者等に開示することはプライバシー侵害のおそれはない筈である。

また、目撃者等の関係者の供述調書についても、被害者等の申立にあたり弁護士を代理人とすべきことを必要的とし、かつ、裁判所において審査することにより、プライバシー侵害のおそれがあるとの特段の事情が認められる場合に、非開示とすれば、その障碍を防止することができる。

 捜査への支障という理由については、不起訴裁定の際に既に捜査は終了しているので改めて支障となることはなく、また公判への支障という理由では、不起訴裁定なのであるから、支障が生ずる筈はない。

 結局、検察審査会において起訴相当、不起訴不相当の決定が出された場合にしか問題とならないのであるが、その検察審査会の申立において、証拠に基づく的確な意見を述べるためにも、犯罪被害者等に対し、全ての不起訴記録の全面開示が必要であり、その閲覧謄写を権利として認める制度を創設することを要望する。

 また、同様に、起訴不起訴処分をするにあたっては、事前に、被害者等の意見を聴取する制度を導入するべきである。
 第4 民事訴訟における訴状への住所地の記載について

 被害者が民事裁判において加害者に対する損害賠償請求等の民事上の責任追及する場合に、訴状等の書面に被害者の住所を記載しなければならない。
これによって、被害者は自己の連絡先を加害者に知られることとなる。

 しかしこれでは、加害者に被害者の住所が明らかとなってしまうため、お礼参りのおそれがあり、被害者による加害者に対する民事上の責任追及を躊躇させる結果となる。

 そこで、被害者が加害者に対して住所を知られることを好まない場合に、被害者の民事訴訟上の住所を、警察署、市役所、日本司法支援センター等の公的な機関とすることを認めるべきである。
 第5 刑事手続きにおける被害者の氏名・住所の記載について

 検察官の起訴状朗読、冒頭陳述、論告により、公開の法廷において、被害者の氏名が明らかにされている。

また、被害者が刑事裁判の証人となる場合には、原則として予め被害者の氏名、住所を被告人に知る機会を与えなければならず(刑事訴訟法299条)、例外として、住所については被告人が証人の身体、財産、親族に対し加害のおそれがある場合には、公開しなくてもよいとされている(同法299条の2)。

 しかし、これでは、被害者の氏名を知らない加害者に対しても、被害者の氏名を知らしめることになるばかりか、公開の法廷で傍聴人・マスコミに対し、被害者としてその氏名を公示されることで、被害者は自ら受けた被害を公にされ、精神的な被害を受けることになる。

また、証人となる場合には、氏名については例外的に非公開とすることは認められていない。

 そこで、被害者が希望する場合には、刑事裁判においても、被害者の氏名を匿名としたまま、手続を進行することができるようにするべきである。

その場合、弁護人による証人尋問や被告人質問の場合にも、被害者の氏名を匿名として尋問や質問を行う必要がある。
 第6 義務教育における被害者教育について

 いつ誰が犯罪被害者になっても不思議ではない今日において、国民一人一人が被害者問題を自分のこととして考えられるよう、義務教育段階から教育することが重要である。

犯罪被害が起きたとき、その都度教育することももちろん重要であるが、正課として継続的に教育することが、より一層の効果を上げることは明らかである。

 犯罪被害が、いかに被害者やその家族等に深い悲しみをもたらすか、相手の立場になって相手の痛みを理解する力を若いうちから教えることによって、加害者になることを未然に防ぐこともでき、学校内での犯罪も減少することは国際学会でも確認されている。

 そこで、義務教育段階から、犯罪被害者に対する言われのない誤解や偏見が起きないよう、犯罪被害者の経済的、精神的、肉体的な苦痛について実情を理解するための教育や、命の大切さに対する教育を「正課」として取り入れ、継続的に教育できるようにすべきである。
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 第7 法曹教育について

 戦後、新憲法が誕生し、昭和24年に刑事訴訟法も改められ、基本的人権の擁護が謳われ、被疑者・被告人の人権が著しく強化された。

 しかし、反面、被害者の権利は置き去りにされた。平成2年の最高裁判例では、刑事司法は、社会秩序の維持という公益のために行われるもので、被害者の利益は反射的なものに過ぎないという。

そのため、犯罪被害者等は自分に対して犯された犯罪及び加害者について、どうしてそのような犯罪が起きたのか、どうして自分が被害者になったのか、加害者はどういう人物で、いかなる理由で自分が被害にあったのかなどについて、全く情報が与えられず、単に、裁判では、聞かれたことだけに応え、証拠品としてしか扱われて来なかった。

しかし、刑事司法は、公の秩序維持、加害者の権利だけを守ればよい、という時代は終わりを告げている。昨年12月には、政党間の垣根を越えて、犯罪被害者等基本法が制定された。

これは、それまでの犯罪被害者等給付金支給法や犯罪被害者保護2法のように、単に被害者を恩恵の対象として見るのではなく、被害者の尊厳が尊重され、尊厳にふさわしい権利を有することを明確に謳うものであり、画期的なものである。

これを受けて、最高裁も、本年4月21日、少数意見ではあったが、裁判長が、被害者の尊厳は尊重されるべきであり、尊厳にふさわしい権利を有することを明確に述べるに至り、司法の現場も変わりつつある。

 そもそも、犯罪という一個の行為は、社会秩序違反という面と被害者等の権利を害するという面を持っている。従来は後者を切り捨てて刑事司法は扱わなかったが、被害者等は、刑事司法についても保護されるべき権利をもっている。

事件の真実を知りたい、被害者等の名誉を守りたい、加害者に対して適正な刑罰を課してほしい、という権利である。社会秩序の維持と同時に、被害者等の権利も守らなければならないというのが、国民の総意となっている。

 ところで、弁護士法第1条第1項は、弁護士の使命として「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」ことにあるとし、守られるべき人権の主体ととして、何ら、被疑者・被告人に限定していない。かえって弁護士職務基本規程第5条は、「弁護士は・・・公正に職務を行う」と定めている。

 加えて、弁護士法第1条第2項は、弁護士は社会秩序の維持とともに「法律制度の改善に努力しなければならない」と定め、制度が実情にそぐわなくなったときは、法制度を改善していくことを弁護士の使命として求めている。

 そこで、法曹を育成する研修機関においても、犯罪被害者の視点に立った被害者の人権について研鑽に努めなければならないと言うべきである。

 特に、犯罪被害者等基本法が制定された以上、法律に精通していなければならない法曹が、同法を正しく理解すべきことは当然の責務であろう。

 そこで、ロースクールや司法研修所など、法曹を育成する研修機関においては、犯罪被害者の人権及び犯罪被害者等基本法に基づく諸施策の内容を正規の科目として研修するようにすべきである。
 第8 公費による弁護人選任制度について

 犯罪被害者等のための支援弁護活動としては、刑事手続や法律用語の解説、捜査機関からの事情聴取の際の法的アドバイスや付添活動、捜査機関から提供される情報の受領(情報開示請求)、法廷傍聴への付添活動、被疑者・被告人との間の示談交渉、刑事和解手続・意見陳述の際の法的アドバイス、公判記録閲覧及び内容の検討説明、不起訴記録の閲覧謄写及び内容の検討説明、検察審査会申立などの支援が考えられる(詳しくは別紙参照)。

これらの弁護に対する扶助としては、現在、法律扶助協会の自主事業(日本財団の援助に基づく)があるのみである。

 このように現状では、公的弁護人制度がないので、被害者の権利行使は極めて困難である。資力のある被害者しか弁護人が依頼できず、資力がない、弁護士との接点がない等の理由によって弁護人に依頼できず、本来回復されるべき被害回復が図られない状況は不公平なことである。

 また、被害者及びその家族は、病院への入通院、葬儀、転居、警察及びマスコミ等との対応の必要に迫られ、時間的余裕がない中で、予期してなかった多額の支出を余儀なくされる反面、休職あるいは退職により、収入は減る一方であり、このような状況におかれる被害者が、さらに私費で弁護士を選任しなければならないことは、過大な経済的負担を強いられることになり、弁護士に依頼すること自体を躊躇させることになる。

 被害者は加害者に対して損害賠償請求権を有するとはいえ、加害者が無資力であれば、それは画に書いた餅であり、かえって被害者は訴えを起こすためにまず自腹で印紙代や弁護士費用を負担しなければならないのであるが、これらの費用を被害者が負担することは酷なことである。

 これに対し、被告人は、有罪無罪にかかわらず、国費での弁護人の選任が可能であり、また、さらに被疑者段階からの国選弁護制度が創設される状況にあって、被疑者・被告人の人権強化との均衡という面からも、刑事司法における犯罪被害者等への国選支援弁護士制度を創設するべきである。

 例えば、平成16年度国選弁護人の年間予算額は65億1800万円である一方、(平成15年度)、被害者ための公費はゼロである。

同じ一つの犯罪事実でありながら、被疑者・被告人のための体制の整備と、被害者のための体制の不備との間の不均衡はあまりに著しいものがある。

よって、犯罪被害者等のための公的弁護人制度を創設することを強く要望する。
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 第9 長期未解決事件について

 重要犯罪の認知件数は、この10年間で2倍以上に増加し、国民に不安を与えている一方、犯罪の広域化・スピード化等によって捜査は困難になっている。それらを解決してゆくには犯罪そのものの認知度をあげる事がまず重要である。

現在の事件報道は、テレビニュース、新聞報道が主であるが他の大事件があれば報道されない事もある。よって報道価値の有無に左右されない「全国的規模」で「24時間放送」のテレビ局の開設をすべきである。

さらに、インターネット(yahoo、goo、google、etc.)で検索できるようにして欲しい。例えば「犯罪被害、未解決事件、日本の安全、刑事裁判、この人探していなどのキーワードで検索出来るようにして頂きたい。

 捜査が長期化する場合は、一定の期間毎に進捗状況を報告する制度を創設して頂きたい。例えば、警察による被害者への積極的な訪問を行い、捜査状況を教えて欲しい。

そのために、所轄署内にその事件専属の人(例えば被害者連絡担当係り。警視以上)を置くような仕組みが欲しい。

 さらに、懸賞金設定における警察の協力のあり方を真剣に検討して欲しい。懸賞金設定前と、設定後の警察の対応に違いが出ているのが現実である。

「警察が懸賞金を支払うとの誤解を市民に与えてしまう等」の理由で協力してくれなくなったのである。

 もし、情報提供を呼びかけるビラ等がある場合は、全国の警察や駐在所、公共機関に掲示する仕組みを構築して欲しい。情報提供に関する全国共通の専用ダイヤルを設け、情報の一元化に努めて欲しい。

県警単位で捜査行動しているのが問題であり、一定期間未解決ならば自動的に全国規模で捜査される仕組みを制度化するべきである。

 警察は未解決であること自体を失態ととらえず、この体制・手法でここまでやったが、逮捕に至らないが、次の展開として、広く情報開示を求めて行く、という新たで真摯な気持ちで対処すべきである。

 未解決事件の事例を全国的に収集し、検討を行う組織を作って欲しい。
 第10 司法のあり方について

 犯罪被害者等基本法(以下基本法)によれば、國が、被害者等のための施策を総合的に策定し、実施する責務(義務)を負っているのであるが(4条)、そのための犯罪被害者等基本計画(以下基本計画という)の策定や実施等については、政府がおこなうものとされている(8条、24条以下)。

8月9日に決定された基本計画案の骨子も、政府(犯罪被害者等施策推進会議)が作成したのである。

 基本法は、司法の果たす役割については定めていない。内閣府の基本計画案の検討会には、最高裁から人は出ているが、オブザーバーであって正式のメンバーにはなっていない。

 被害者等は、司法(裁判所)の場で多くの2次被害を受けている。  刑事法廷の傍聴席で、被害者等が加害者の家族や暴力団関係者と混在して座らせられるのも、苦痛であり恐怖を覚える。

 損害賠償請求の訴状には、被害者等の住所を記載しなければならないことに法律上なっている。このため加害者の仕返しを懼れて民事訴訟を起こせない被害者等も少なくない。

 外国では、警察署を住所として訴えを起こせる制度がある。わが国でも、住所を警察署または代理人弁護士事務所として訴訟提起できるよう提案したが、最高裁側は、裁判管轄の存否や本人確認のために本当の住所を訴状に記載する必要がある、といって応じなかった。

 「マイクの音量を高くして下さい。傍聴席に聞こえませんから」と裁判所に頼んだ遺族が、「傍聴人に聞かせるために裁判しているのではない」といわれた例がある。

 ドイツの裁判官にこの話をしたら、「それは公開の原則違反です。傍聴席に声が聞こえないと、公開したことになりません」という返事が即座に返ってきた。ドイツと日本では、どうしてこうも裁判官の意識が違うのか。

 司法は、権威の象徴ではなく、国民に対するサービス機関でなければならない。ユーザーである国民、被害者等の要求に応じ、2次被害を与えず、また利用しやすい裁判制度をつくるように努めるべきである。

 司法は、競争者のいない独占的組織であり、潰れる心配がないから、サービスが悪いのかもしれない。それならいっそ、司法を民営化して、裁判所間で競争させればよい、という意見が出る。

 基本法で「責務」を課せられた「國」のなかには、当然司法も含まれる。基本法に具体的に書かれなくても、その精神から超然としていることは許されない。

 そこで司法も、基本法の求めるところに従い、犯罪被害者等の尊厳を尊重し、その権利をはかるために、犯罪被害者等の代表を加えた検討会を設置して、犯罪被害者等の要望に即した諸施策を講ずるよう、強く要望する。
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全国犯罪被害者の会(あすの会)関西集会意見書
平成17年8月30日
内閣府 御中
全国犯罪被害者の会(あすの会)関西集会一同
 1,12条関係 損害賠償の請求に関する制度について
ア)5ページ(5)ク刑事施設及び受刑者の処遇に関する・・・作業報奨金を被害者への損害賠償にあてる制度を作る事に反対する。 (理由)
  • 実際に送られた者がいるが、不愉快であり、住所が知られていることが怖いとの事。
  • 作業報奨金は法務省資料によれば21ヶ月で7万円程度。月平均3000円から4000円である。仮に10年間入所し全額貯蓄したとしても僅かな金額にしかならない。
  • 僅かの金額で損害賠償したとの権利意識を持たれたくない。
  • 報奨金の低さを理由にした、論点のすり替わった議論が台頭してくる可能性がある。
  • 受刑者もパンを買ったり、ペンやノートを買う必要もあるはず。
  • 刑務所の作業施設(設備)は税金で賄われており、民業圧迫になる。
  • 刑務所本来の趣旨からはずれている。


イ)5ページ(5)キ政府保障事業とは何か?

ウ)元検察官・元参議院議員の佐々木知子氏の著書「日本の司法文化」(文芸春秋社)198ページに、「損害賠償命令は、被害者に損害賠償することを条件に刑務所には収容しないという刑罰である」と記述されているこのような性格の制度が骨子の中で「法務省において、附帯私訴、損害賠償命令、没収、追徴を利用した損害回復等、・・・・」と挿入されている。

基本法に書かれた被害者の権利を愚弄している典型的事例ではないか。「ごまかし」を認める事はできない。

「損害賠償命令を利用した」を削除して頂きたい。強く希望する。 附帯私訴の導入を希望する。
 2,13条関係 給付金の支給に関わる制度について
ア)4ページ(2)損害賠償債務の・・・7ページ(4)経済的支援を・・・・ で、(2)と(4)の関連が知りたい。 また、(2)の立て替え払いについての制度作りに関し、期限が記入されていないのは不安であり、遺憾である。早急に施策を講じて欲しい。

イ)犯給法の支給について過去の被害者で不支給例につき(平成8年2月1日、警察庁被害者対策要綱以前)支給制度に関する表示もしくは教示がないまま時効になった被害者が実在する。
支給対象として復活して頂きたい。
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 3,17条関係 雇用の安定について
ア)犯罪被害等によるものである、という証明書が必要。(その都度、説明しなければならない事はつらい作業である)

イ)母子家庭でなく、父子家庭になった被害者遺族に対する配慮も必要である。

ウ)少年院や刑務所では出所後の生活安定のため、各種資格を税金で取得させている。被害者にも同様の権利があるはず。そういう制度が必要。
 4,少年法について
ア)中学入学時に刑法を教える。中学生以上は刑事罰の対象になる、という制度にして欲しい。なおかつ、重大犯罪は原則逆送とすること。

イ)集団暴行による犯罪は傷害致死とされる例が多い。被害者本人にとって抵抗のすべを奪われた集団暴行は殺人事件として取り扱うべき。
 5,附帯私訴について
前述のとおり、必ず実現して頂きたい。民事訴訟の判決に強制力はなく加害者側の弁護士に資産隠しをされ、くやしい思いをしている被害者は多い。
 6,18条関係 刑事に関する手続きへの参加について
犯給法の事で、地裁レベルでの判決に準じた配分で犯給法の支給が行われたが、その後の高裁レベルでの判決は被告の関与部分が大きい判決がなされた。

つまり配分の比率が変わったのに、犯給法による支給の変更はなかった。加害者側の勝手な主張に反論できなかったためである。

被害者の訴訟参加があれば、このような不合理はおこらなかったはずである。裁判に参加出来るもの、と被害者の殆どは被害に遭うまでは信じていたし、また、国民の殆ども犯罪被害者になれば裁判に参加出来ると信じている。

街頭署名活動で実感したし、地方自治体に陳情したおりも議員の殆どの方が「被害者が司法参加出来ない事実」に信じられないという事で、意見書が採決されたのである。

被害者の訴訟参加は真実追究に必須の要件であることは命を奪われた実体験者の心の作用を考えれば当然である。必ず実現して頂きたい。国民全員、国民一人一人の権利です。
 7,20条関係 国民の理解の増進に関する制度について
「犯罪被害者週間」の実現を強く望む。
本年、7月17日、8月23日に行った講演でのアンケート結果を資料として提出する。

大学の法学部・教育学部の学生対象、小学・中学校の教育者対象の講演でのアンケートである。殆どが犯罪被害者の抱える問題について理解していない事が分かる。

犯罪被害者の問題は、国民全体、国民一人一人の重要な問題であり、ここまで放置してきたこと自体に問題があるが今後の重要な問題として、被害者週間の設立を求める。
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要望書
2005年8月30日
全国犯罪被害者の会(あすの会) 未解決事件分科会一同
 1,情報収集システムの創設を願う
ア、24時間テレビで情報を提供する
理由)重要犯罪の認知件数は、この10年間で2倍以上に増加し、国民に不安を与えている一方、犯罪の広域化・スピード化等によって捜査は困難になっている。それらを解決してゆくには犯罪そのものの認知度をあげる事がまず重要である。

現在の事件報道は、テレビニュース、新聞報道が主であるが他の大事件があれば報道されない事もある。よって報道価値の有無に左右されない「全国的規模」で「24時間放送」のテレビ局の開設が必要である。

イ、インターネット(yahoo、goo、google、etc.)で検索できるようにして欲しい。
例えば「犯罪被害、未解決事件、日本の安全、刑事裁判、この人探しているなどのキーワードで検索出来るようにする。
 2,警察の未解決事件に対する取組
ア、捜査が長期化する場合は、一定の期間毎に進捗状況を報告する制度を創設すること。
  1. 警察による被害者への積極的な訪問を行い、捜査状況を教えて欲しい
  2. 被害回復、被害拡大防止等に関する情報の提供。
  3. 被害者の悩み及び不安にきちっと対処できるようにして欲しい。
イ、所轄署内にその事件専属の人(例えば被害者連絡担当係り。警視以上)を置くような仕組みが欲しい。

ウ、懸賞金設定における警察の協力のあり方懸賞金設定前と、設定後の警察の対応に違いが出た。「警察が懸賞金を支払うとの誤解を市民に与えてしまう等」の理由で協力してくれなくなった。

エ、情報提供を呼びかけるビラ等がある場合、全国の警察や駐在所、公共機関に掲示する仕組みが必要。

オ、情報提供に関する全国共通の専用ダイヤルを設け、情報の一元化が必要。

カ、県警単位で捜査行動しているのが問題であり、一定期間未解決ならば自動的に全国規模で捜査される仕組みを制度化するべきである。

キ、捜査の手法、体制を知りたい。

、警察は未解決であること自体を失態ととらえず、この体制・手法でここまでやったが、逮捕に至らないが、次の展開として、広く情報開示を求めて行く、という新たで真摯な気持ちで対処すべきであると思う。

ケ、加熱した取材は捜査をゆがめる可能性がある。そう判断される場合には(誰が判断するかが問題となるが)報道の自粛が必要
 3,時効を廃止すべきである
ア、被害者には時効はない。死ぬまで悔しさ・悲しさ・辛さを背負いながら生きて行かねばならないのに、時効を迎えた加害者が大手を振って社会で暮らす権利を持つことは許されない。

イ、被害者の視点で犯罪を考えたら、時効というものは浮かんでこないはず。事務的処理の方便にすぎないのではないか。

ウ、ある限り、時効など無いと思っています。犯人と断定できても手も足も出せなくなる。なんと矛盾したこと。なんと被害者を置き去りにした事かと。
 4,未解決事件となったと思う理由(被害者の立場から)
ア、メディアが警察の逮捕前に犯人とおぼしき人間を「犯人に仕立て上げてしまい追いつめてしまった」から自殺してしまった。メディアに未解決にされた。
目撃者がいない、残された手がかりが少ない、犯人と被害者につながりがない等で未解決になりやすい。

イ、目撃者はたくさんいたが、阪神大震災の8日後で、震災報道一色の中、事件報道がなされなかったため、未だに逮捕されていない。

ウ、捜査において、ある人物の携帯電話発信場所の記録を取って欲しいと願ったが、人権問題に触れるので入手出来なかった。

エ、行方不明となったあと、妻から電話があった。
その時点でNTTには記録があるはず。(請求書には載っていた)警察はNTTに要求したが、「通信の秘密」で拒否され捜査が行き詰まりました。時間との闘いの中で、「人の命」と「通信の秘密」どちらが大事なのでしょうか。
 5,未解決事件の事例を全国的に収集し、検討を行う組織を作って欲しい。
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犯罪被害者等の権利を守る弁護士有志意見書
平成17年9月5日
内閣府犯罪被害者等施策推進室
骨子意見募集係     御中
犯罪被害者等の権利を守る弁護士有志一同
 1 はじめに
 犯罪被害者等基本法の成立を受け、犯罪被害者等のための施策を具体化するために、犯罪被害者等施策推進会議の下におかれた犯罪被害者等基本計画検討会において、短期間のうちに犯罪被害者等基本計画案(骨子)(以下「本計画案」という)の作成に至ったことについて、関係者の方々の精力的な努力には敬服する。

 しかしながら、被害者の立場に立って本計画案を見る、真に被害者のために実効的な施策が実施されることになるか,危惧を感じざるをえない。
 最も重要な点は、今後講じていくとされる具体化施策において、刑事手続は誰のためにあるかという制度目的を明確にして、犯罪被害者等が有する権利として諸施策を講ずるという根本的な視点が含まれていないところにある。

犯罪被害者等基本法(以下「基本法」という)は、「犯罪被害者等の声に耳を傾け・・犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図られる社会の実現」を目指すものであり(基本法前文第三段落、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする」ものであるから(基本法第1条)、犯罪被害者等のための施策は,犯罪被害者等の権利利益をいかに擁護するかという視点において、新たな第一歩を踏み出さなくてはならないのである。

 今後、現実の具体的な制度を設営し運用していくうえでは,加害者の利益や「公益」等様々な利益と犯罪被害者等の利益が調整の対象となることは否定できないが、それゆえ、個々の具体的施策が基本法の趣旨に沿って真に被害者のために実効的なものになるためには、様々な場面において揺らぐことのない根本的な考え方が基本計画に明記されることが必要である。

また、具体的施策が策定され、実行される過程において、実施すべき官庁においてサボタージュされたり、現状維持の方向に運用されたりして、基本法の趣旨を没却することのないようにするための制度的な仕組みが不可欠である。  そこで、以下において、このような根本的な視点をいかにして具体的施策に盛り込むべきかについて、意見を述べる。

 2 犯罪被害者等のための根本的な施策
(1)具体的施策の冒頭部分に、下記施策を明記すべきである。
 犯罪に関わる全ての場面及び手続において、犯罪被害者等の権利が保障されなければならないことを前提として、各機関が犯罪被害者等の権利保障のために果たすべき役割を明確にするため、警察法をはじめ各省設置法等の関係法令の改正を行う。

(理由)犯罪被害者等基本法の規定する基本理念(第3条)において、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」と明確に規定され、本計画案の基本方針の第一番に、「尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること(犯罪被害者等の尊厳を重んじ、個人の尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること)」と規定されていることは、喜ばしいことである。

 しかしながら、犯罪被害者等の権利が絵に書いた餅にならないようにするためには、基本法及び基本計画だけでなく、さらに具体的な法令や制度においても、犯罪被害者等の権利を明確に規定し、かつ、その権利が実効的に保障されるための制度的な仕組みの工夫が不可欠である。

 そこで、まず、警察法をはじめ各省設置法等の見直しを行って、各機関が犯罪被害者等の権利保障のためにそれぞれどのような機能や責務を有するかを明確にすべきである。

 例えば、警察は犯罪被害者等のためにいろいろな役割を果たしてはいるが、ときに不熱心であったり、あるいは「民事不介入」といって犯罪被害者等の切実な要望に応じてもらえない場合もある。

警察の責務を定める基本的な規定である警察法2条1項では「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当たることをもってその責務とする。」と規定しているが、ここに、「犯罪被害者等の権利保障」を規定すべきと考える。

同法同条2項では「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られる」とされていることから、1項において明確に規定しなければ、警察が犯罪被害者等の権利保障を実施することの明確な根拠がないのが現状である。

なんと言っても警察は一番犯罪に係る機関であるから、その警察が犯罪被害者等の権利保障を行う責務を負っていることを明確にすべきことは、あまりにも当然のことである。

同様に、その他の諸機関が、犯罪被害者等のために、どのような具体的な役割や責務を負っているかを明確にすべきことも当然の事理である。
 

(2)具体的施策の冒頭部分に、下記施策を明記すべきである
 刑事手続の全ての場面において犯罪被害者等の権利が保障されなければならないことを前提として、刑事訴訟法、少年法等の刑事手続に関する法令において、その目的規定に犯罪被害者等の権利保障を盛り込むこととし、所要の改正を行う。

(理由)例えば、刑事事件の手続を定める基本的な法律である、刑事訴訟法では、その目的は「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」と規定されているが(第1条)、ここでは「犯罪被害者」の視点は明確には規定されていない。

ここでいう「個人」には犯罪被害者等も含まれるとは解されているものの、基本的には、被疑者・被告人の基本的人権が想定されており、犯罪被害者等の権利を保障するという趣旨が明確にされていない。

 その結果、刑事手続は、「国家及び社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって、犯罪被害者のために行われるものではない。」というまことに常識に反する解釈が、最高裁判所の判例となって犯罪被害者等を苦しめてきた(最高裁判所平成2年2月20日判決)。

驚くべきことは、犯罪被害者等基本法が施行された後でさえ最高裁判所は同じ解釈を繰り返している(平成17年4月21日判決。この判決では、裁判長である泉徳治氏がただ一人「犯罪の被害者は、個人の尊厳が重んじられその尊厳にふさわしい処遇を保障される人格的権利を有する」として敢然と反対意見を述べられているが、残る4人の裁判官は漫然と従前の解釈を繰り返したのである。

 このように、刑事手続の基本的な考え方において、犯罪被害者等の権利をふみにじる解釈がまかりとおっているからこそ、捜査、公判、処遇などあらゆる場面において、犯罪被害者等をないがしろにする実情が形作られてきたのである。

 裁判所が、犯罪被害者等基本法ができた後でさえも、このような解釈を変えないという現実を目の当たりにするときは、法律そのものを国民の代表である国会により早急に変えなければならない。そのための改正作業を行うことを基本計画に明確に盛り込まなければならないのである。

 少年法に至っては、その目的において被害者のことは全く考慮されていない(第1条:「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」)。

かえって、少年審判規則では、「調査及び審判その他保護事件の取扱に際しては、常に懇切にして誠意ある態度をもつて少年の情操の保護に心がけ、おのずから少年及び保護者等の信頼を受けるように努めなければならない。」(少年審判規則1条2項)とされており、わざわざ「信頼を受けるように努めなければならない」という規定をおきながら、犯罪被害者等の信頼を受けるように努めなければならないとは規定されていないのである。

このように、法律や規則の基本において被害者のことを全く考慮していないのであるから、少年犯罪の被害者から少年法に対する強い怒りの声が沸き上がることは当然のことなのである。小手先の対応によって、このような問題に対処することはできない。

法律の基本である目的から妥当なものに変えていかない限りは、犯罪被害者等の苦しみはなくならない。
 3 具体的施策
 具体的施策のうち、犯罪被害者等の権利であることを前提に検討実施すべき課題について、下記のとおり修正すべきである(加筆修正部分に下線、削除部分に網掛け)。
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○第1
■1(1)損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度を新たに導入する方向での検討及び施策の実施
法務省において、附帯私訴、損害賠償命令、没収・追徴を利用した損害回復等、損害賠償の請求に関して刑事手続の成果を利用することにより、犯罪被害者等の労力を軽減し、簡易迅速な手続とすることのできる制度について、附帯私訴制度、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(理由)犯罪被害者は、生命身体等の直接の被害だけでなく、経済面や精神面にも及ぶ様々な被害を被る。そこで、刑事手続そのものに被害当事者として適切に関与できることに加えて、民事の被害回復の場面においても、被害者の尊厳に基づく適切な制度が設営されなければならない。そこで、加害者に対する民事上の請求権を容易に実現するための手続的保障が必要となる。そして、基本法は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを基本目的としており(基本法1条)、犯罪被害者等がその尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を認めたのであるから(基本法3条1項)、この制度は、恩恵的なものでなく、犯罪被害者等の主体性を基礎としてその権利として構成されなければならない。

 犯罪は、社会秩序を侵害すると同時に被害者等の権利を害する行為であって、一つの行為であるのに、刑事裁判手続と民事裁判手続は全く別のものとされている。しかしながら、犯罪行為は一つなのであるから、二つの手続で別々に取り調べることは、二度手間で、無駄である。

 さらに、刑事裁判とは別に民事訴訟を提起しなければならない被害者は、経済面、精神面、労力等において大きな負担を蒙っている。現在の制度では、被害者は多額の費用をかけて弁護士を依頼し(加えて、被害が大きいほど印紙代も高額になりその負担は増すばかりである)、一から証拠を収集したうえで(そのための謄写費用だけでも大きな負担である)、別途民事裁判を起こさなければならない。

またしばしば、刑事裁判で罪を認めていたはずの加害者が、民事裁判では一転して金員の支払いを惜しんで意を翻すことすらある。そこで、このような精神的、経済的な苦しみから解放されるためには、附帯私訴制度の導入がどうしても必須である。

 犯罪被害者等基本法は、損害賠償請求についてその被害に係る刑事手続との有機的連携を図るための制度の拡充等必要な施策を講じるべきものと正当にも規定しているのであるから(12条)、そのための具体的な制度としては、附帯私訴制度を我が国にも導入する必要がある。

 この点、骨子においては「損害賠償命令、没収、追徴」も例示されている。しかしながら、これらはいずれも加害者に対する「刑罰」の一種であり、犯罪被害者等の損害回復の手段として行われてきたものではない。特に「没収・追徴」制度は、殺人、傷害等身体犯の場合には、犯罪被害者等の損害回復には何らの役にも立たない。かかる犯人から、何を没収し、何を追徴するというのであろうか。

犯罪に使用された包丁を没収しても、犯罪被害者等の損害回復にならないことは明白であろう。  「損害賠償命令」についても、加害者の資力を勘案して賠償命令の金額が決められ、少額の賠償命令しか出されないのが現実であって、名称は似ていても、被害の全面的な回復である民事上の「損害賠償請求権」とは全く異なる制度である。

 このように、「損害賠償命令、没収、追徴」は、到底「損害賠償請求についてその被害に係る刑事手続との有機的連携」を図る制度ではないのである。

 今、犯罪被害者等から切望されているのは、法的に民事上の全面的な被害回復を満足する「損害賠償請求権」を、被害者にとって負担の少ない形で実現することなのである。もちろん、加害者の資力の問題はあるから、法的に認められた損害賠償請求権を実現するために、国家が助力する制度が別途必要であり、新たに実現されなければならない。しかしながら、加害者の資力の問題があるからといって、民事上の被害回復方法である附帯私訴の制度を意味がないとするような議論は本末転倒と言わざるをえないのであって、附帯私訴により簡易迅速に認められた被害者の損害賠償請求権を実効的に実現するために国家や専門家は努力する責務を負っているのである(基本法4条、6条)。

 以上のとおり、骨子に例示されている「損害賠償命令、没収、追徴」は、多くの犯罪被害者等の損害回復には殆ど役に立たないものであり、仮に、これらの制度の導入でもって、附帯私訴制度の代わりとしようという議論があるならば、それは附帯私訴導入を妨げるための意図的な議論のすり替えに他ならない。

 また、上記骨子の「我が国にふさわしいもの」との文言は、従前の制度に抵触しない範囲で検討すればよいという、サボタージュを助長するおそれがあるので、削除されるべきである。我が国の市民にとって必要なものであれば、新たな制度を導入した上で、それを「我が国にふさわしいもの」として運用し、発展させていくべきなのである。

 制度導入の当初から、「我が国にふさわしいもの」という限定を加えた場合には、新たな制度導入に抑制的に働くことは明白であって、「犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな第一歩を踏み出」すべきとした基本法の趣旨(前文第三段落)に悖るものと言わなければならない。したがって、このような文言は不要であるから、削除されるべきである。

 なお、訴訟が遅延する、あるいは争点が増大し、被告の防御の負担が増大するなどの弊害があるから導入すべきではないという反対論もある。しかし、いずれの課題も、知恵と工夫をこらして制度設計すれば足りる。防御の負担が増大するといっても、いずれ民事裁判を提起されれば防御しなければならないことに変わりはなく、附帯私訴を導入したからといって、ことさらに新たな負担を強いるものではない。

刑事手続きの中でいかに私訴の審理を行うかという具体的な制度設計においてかような不都合な点は克服できるものであり、かえって、被告人にとっても一回の手続で決着できるメリットもある中で、反対論は、頭から制度導入自体に反対しているものと言わざるを得ない。
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■1(3)公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非に関する検討(第3 1(7)共通)
上記(2)記載の検討の会において、特に公費による弁護士選任は犯罪被害者等の権利であることを前提に、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】

(理由)刑事民事の司法手続に関して犯罪被害者等の代理人となる弁護士の助力が必要不可欠であるところ、被疑者・被告人には公費による弁護士選任が権利として保障されていることとのバランス上からも、公費による弁護士選任は犯罪被害者等の権利として保障される必要がある。

具体的施策の検討においては、かかる犯罪被害者等の基本的権利に対応して、公費を付する範囲等について具体的に検討すべきである。
 

■1(5)ア 公判記録の閲覧・謄写について(第3 1(3)共通)
ア 法務省において、公判記録の閲覧・謄写は犯罪被害者等の権利であることを法律に明記したうえで、その範囲を限定すべき場合について具体的な検討を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(理由)犯罪被害者等は、犯罪事件の最大の当事者であるにもかかわらず、手続に参加することや、刑事手続の具体的な内容について知る権利を全く与えられることなく、裁量により恩恵的に説明を受けたりすることができているにとどまっている。

公判記録の閲覧・謄写は、平成12年の犯罪被害者等保護法によってやっと認められたものであるが、それは、損害賠償請求権の行使等正当な理由があるものと裁判所が相当と認めた場合に認められるものであり、かつ、開示される範囲も被告人等のプライバシーの関係から制限が付けられることが通常である。

それゆえ、犯罪被害者は、真実を知る手がかりが制限されていることに強い不満と不信感を持っている。

 しかしながら、犯罪被害者等が真実を知りたいという利益は、犯罪被害者等が事件の最大の当事者である以上、これを犯罪被害者等の知る権利の一環として位置づけなければならない。

損害賠償請求のためという限定をなくすことだけでなく、裁判所の裁量によって認められなかったりする不都合をなくすためには、犯罪被害者等の権利として規定すべきである。

犯罪被害者等が権利としてできることを原則として、例外的に弊害のある場合に認めないことがあるという仕組みを明確に作るべきである。
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■1(3)公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非に関する検討(第3 1(7)共通)
上記(2)記載の検討の会において、特に公費による弁護士選任は犯罪被害者等の権利であることを前提に、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】

(理由)刑事民事の司法手続に関して犯罪被害者等の代理人となる弁護士の助力が必要不可欠であるところ、被疑者・被告人には公費による弁護士選任が権利として保障されていることとのバランス上からも、公費による弁護士選任は犯罪被害者等の権利として保障される必要がある。

具体的施策の検討においては、かかる犯罪被害者等の基本的権利に対応して、公費を付する範囲等について具体的に検討すべきである。
 

■1(5)イ 不起訴記録の弾力的開示について(第3 1(13)も同様)
イ 法務省において、犯罪被害者等は不起訴記録の開示を原則として権利として求められることを前提として、その範囲を限定すべき場合について具体的な検討を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。刑事和解、公判記録の閲覧・謄写、不起訴記録の弾力的開示等現行制度の周知徹底を行う。【法務省】

(理由)前記同様に、犯罪被害者等が真実を知りたいという利益は、犯罪被害者等が事件の最大の当事者である以上、これを犯罪被害者等の知る権利の一環として位置づけなければならない。

不起訴となった場合には、公判が行われないので、ますます犯罪被害者等が真実を知ることができない。

犯罪被害者等が権利としてできることを原則として、例外的に弊害のある場合に認めないことがあるという仕組みを明確に作るべきである。
○第2
■3(3)ビデオリンク等の措置の適正な運用
法務省において、公判を通じた犯罪被害者等の安全確保の重大性に鑑み、犯罪被害者等の選択により、証人への付添い、証人遮へい措置、ビデオリンク方式等の措置を求めることは、犯罪被害者等の権利であることを前提に、その範囲を限定すべき場合について具体的な検討を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。裁判所におけるビデオリンク装置の配備の進展等を踏まえ、ビデオリンク等の犯罪被害者等の保護のための措置について周知徹底を図り、一層適正に運用されるよう努めていく。【法務省】

(理由)犯罪被害者等は、犯罪による被害を受けたうえに、刑事手続の過程においても、危険にされされ恐怖を感じたり、言いたいことも十分言えず悔しい思いをしていることが多い。

現状は、公判における証人の安全確保の規定も、全て、犯罪被害者等の権利ではなく、裁判所の裁量により裁判所が行うことができるという規定であるから、犯罪被害者等が望んでも認められない場合が発生している。

そこで、犯罪被害者等が権利としてできることを原則として、例外的に弊害のある場合に認めないことがあるという仕組みを明確に作るべきである。
 
 ○第3
■1(2)犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の検討及び施策の実施
法務省において、犯罪被害者等にとって、刑事裁判手続に直接関与することは、その尊厳に基づく権利であることを前提に、公訴参加制度を新たに導入する方向で必要な検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(理由)犯罪被害者は、事件の当事者として、裁判の結果に最も深い利害と関心を持つものでありながら、長い間、単なる『証拠』として扱われ、その尊厳は置き去りにされてきた。

全国犯罪被害者の会では、被害者の刑事手続きへの主体的な参加を求めることを中心として、約55万名もの署名を集めることができ、また、全国107の地方議会においても、同様の施策を求める決議がなされている。これらは、被害者の声がもはや無視できない存在になっていることを端的に表すものである。

被害者が刑事手続きに参加する真のねらいは、手続きの実質的な適正、真実発見、司法に対する国民の信頼確保にある。被告人に刑事裁判上、証拠へのアクセス権、証拠提出権、質問権、反論権、不服申立権など様々な権利が保障されているのと同様、被害者もまた被告人と対等の立場で、様々な権利を行使したいと切望している。

被害者は、刑事手続に『当事者』として公正に参加したいと考えているのであって、手続の適正確保のために刑事手続に積極的に参加することに訴訟参加制度の主たる目的がある。

さらには、被告人の声だけでなく事件のもう一方の当事者である被害者の声に素直に耳を傾けて、多角的な視座から裁判を行ってこそ、真実を発見することができる。また、刑事司法に対する国民の信頼を確保するためには、まずは事件の当事者である被害者という国民の信頼が得られなければならない。

司法を市民に身近なものにするために裁判員制度が導入されるならば、もっと事件に身近で深い利害関係を持つ犯罪被害者等という市民をまず刑事手続に参加させるべきである。

基本法は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを基本目的として(基本法1条)、犯

罪被害者等がその尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を認め(基本法3条1項)、さらに犯罪被害者等のための施策は「犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策」をいうものとし(基本法2条3項)、そのような関与ができるようにするために、刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度(基本法18条)を求めているのであるから、上記のような骨子としなければ、基本法の趣旨を没却するものと言わなければならない。

そこで、被害者が刑事裁判に当事者として参加できる公訴参加制度の導入を行うことを骨子において明確にすべきである。 なお、「わが国にふさわしい」との文言を削除すべきことは、附帯私訴の箇所で前述したとおりである。
以上
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「犯罪被害者等基本計画案の骨子に対する意見」送付について
平成17年9月2日
内閣府犯罪被害者等施策推進室
「骨子意見募集」係  御中
佐々木 勉

平素の犯罪被害者等施策推進に対するご尽力に心より敬意を表します。
 さて、昨年12月に成立した「犯罪被害者等基本法」に基づく「犯罪被害者等基本計画案の骨子」について、一般国民からのコメントを求めていることを知りましたので、筆を執らせていただきました。

 新聞、テレビ報道等により、犯罪被害者等のおかれている悲惨な現実が分るにつれ、犯罪被害者等の視点に立った施策を講じる必要があることを痛切に感じております。

 ついては、「犯罪被害者等基本法」に謳われている犯罪被害者等の権利、被害回復、人権擁護等に関する多面に亙る事項について、犯罪被害者等にとって実効ある改革の早期実現を希求し、次の諸点について意見を申し上げます。
 【意見内容】
■ 項目  犯罪被害者等基本計画案の骨子
II 重点課題に係る具体的施策
 第1 損害回復・経済的支援等への取組
  1 損害賠償の請求についての援助等(基本法第12条関係)
意 見
  1. 附帯私訴制度を導入していただきたい。
説 明
  1. 「基本法第12条」では、損害賠償に関する民事及び刑事手続きの連携を図り制度の拡充等必要な施策を講ずると謳っている。

  2. 現在の法律のもとでは、刑事裁判手続きと民事裁判手続きが分断されてしまっているが、ヨーロッパには「附帯私訴」と呼ばれる制度を採用し、刑事裁判の中で同時に金銭の賠償を求める裁判も一緒に行っている国々がある。

  3. わが国でも、刑事・民事裁判が一体で片づく「附帯私訴制度」を導入し、事務面・時間面・経費面で、より合理的な裁判制度に改めていただきたい。


■ 項目  犯罪被害者等基本計画案の骨子
II 重点課題に係る具体的施策
 第1 損害回復・経済的支援等への取組
  2 給付金の支給に係る制度の充実等(基本法第13条関係)
意 見
  1. 被害者への給付金の上限に制限を設けないでいただきたい。
  2. 国による被害者補償制度を新たに創設していただきたい。
説 明
  1. 「基本法第13条」では、給付金支給に係る制度の充実等必要な施策を講ずると謳っている。

  2. わが国の被害者補償の実情は、
    (1)「犯罪被害者等給付金支給法」の支給は見舞金程度、
    (2)民事裁判で加害者に補償支払いを命じる判決があっても、支払資力がなく殆ど泣き寝入り、といわれている。

  3. 外国の例をみると、イギリス・ドイツとも国が補償する建前をとり、補償内容は、被害に遭う前の生活状態に戻すという考え方に立って、完全補償に近い金額が支給されている。

  4. テレビ報道等で被害者の生活の困窮や苦しみを見るにつけ、世界第2の経済大国わが国として早急に改めるべき問題。イギリス、ドイツの事例を研究し、世界に誇れる補償制度の創設を望みたい。
■ 項目  犯罪被害者等基本計画案の骨子
II 重点課題に係る具体的施策
 第3 刑事手続への関与拡充への取組
  1 刑事に関する手続きへの参加の機会を拡充するための制度の整備等(基本法第18条関係)
意 見
  1. 公訴参加制度を導入していただきたい。
説 明
  1. 「「基本法第18条」では、被害者等が刑事に関する手続きへの参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずると謳っている。

  2. 現在の法律のもとでは刑事裁判手続きにおいて、被害者は「当事者」としての権利は認められておらず、単なる「証拠品」に過ぎない扱いを受けている。

  3. 外国の例をみると、ヨーロッパの国々では、被害者は当事者としての地位を与えられ、被害者が直接裁判手続きに関与できる制度(公訴参加制度という)が認められている。

  4. わが国においても、被害者等が検察官の横に座り、自ら加害者に質問したり、証拠を出したり、検察官が上訴しなくとも上訴できる新たな制度である公訴参加制度の導入の実現を望みたい。

■ 項目  犯罪被害者等基本計画案の骨子
II 重点課題に係る具体的施策
 第5 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組
  1 国民の理解の増進(基本法第20条関係)
意 見
  1. 被害者週間を創設していただきたい。
説 明
  1. 「「基本法第20条」では、犯罪被害者等がおかれている状況等について国民の理解を深めるよう必要な施策を講ずると謳っている。

  2. 犯罪被害者等のための施策を実現するためには、国民の理解と協力が不可欠である。いつ誰が犯罪被害者になっても不思議ではない今日、国民に犯罪被害者等の実態を知らせて、国民一人一人が自分のこととして考える啓発運動の創設が望まれる。

  3. 国民的啓発運動をする場合、特定の日の一日では効果は期待できず、「人権週間」「交通安全週間」のように、ある期間を定めて全国一斉に行うことがより効果が期待できる。

  4. 実現すれば、啓発運動は国・犯罪被害者団体・マスコミ等が主体となって行われるものと思われるが、「思いやりのある国」の実現を目指して、国民の一人として本運動に積極的に参加して行きたい。

以上
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