訴訟参加制度案要綱 趣旨説明 |
第1 (目的) |
この制度は、犯罪被害者が当事者として刑事手続に参加することにより、犯罪被害者の権利と尊厳を守り、刑事手続の公正を図ることを目的とするものとする。
■ 趣旨説明 ■
わが国の刑事司法は、犯罪を法秩序の違反者である被疑者、被告人とこれに対して刑罰権を行使する国家との関係としてのみから捉え、犯罪被害者を刑事手続から排除して何の権利も与えていない。
そのため、犯罪被害者は、事件の当事者であり最大の利害関係人であるにもかかわらず、捜査、裁判の単なる『証拠品』として扱われ、その尊厳は置き去りにされてきた。「捜査や公訴提起は、社会秩序維持という公益を図るためにおこなわれるもので、犯罪被害者の利益を目的とするものではなく、犯罪被害者は反射的利益を受けるにすぎない」という最高裁判決が端的にこれをあらわしている。いわゆる犯罪被害者保護2法も、この本質を変えるものではない。
近時国民の権利意識の向上に伴い、被害者を抜きにして裁判をおこない、その結果だけを一方的に押しつける司法に対する反発、不信が、犯罪被害者のみならず国民の間で高まってきた。刑事司法は公益のためだけではなく、犯罪被害者の利益のためにも存在しなければならない。
被害者が、事件の真相を知り、名誉と失われた尊厳を回復し、適正な刑罰の実現と、公正な裁判を求めて刑事司法に参加することは当然の権利であるといわなければならない。
そこで、犯罪被害者が当事者として刑事手続に参加し、被告人と同様の権利を行使し、更に検察官から独立して訴因を設定できるようにするため、この要綱を策定した。
訴訟参加は適正手続の保障のためにも必要である。
当事者主義構造をとる刑事手続のもとでは、被害者は訴訟に参加できないという見解がある。しかし、当事者主義は主張及び立証を当事者がおこなうのであるが、その当事者が国(検察官)と被告人に限られなければならない理由はない。
被害者がもう一人の当事者として訴訟に参加することは可能であり、これをもって当事者主義でなくなるということはできない。被害者が参加しても審判対象の基本的事実は変わらないから、被告人の防御権に制約を加えることにはならないからである。
また、被害者の参加によって手続が混乱し、応報的になり、厳罰化するとの批判が当たらないことは、ドイツ、フランスその他で立証済みである。
さらに、被告人だけでなく、被害者の声に耳を傾けることは、真実の発見にも役立つのである。
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第2 (訴訟参加) |
- 【1】長期5年以上の刑に当たる犯罪により、生命、身体に害を受けた被害者、又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合において当該被害者と一定の親族関係にある者(以下「被害者等」という。)は、訴訟参加人として刑事手続に参加することができるものとする。
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- 【2】前項の親族関係にある者は次のとおりとする。
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- 被害者の配偶者及び2親等内の血族
- 被害者の配偶者及び2親等内の血族が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合においては、被害者の1親等内の姻族
- 被害者が未成年者の場合においては、その法定代理人
■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
訴訟参加は、裁判所に対する申立てによっておこなうものとし、申立人の資格を定めたものである。これをあまりに広げると煩雑になり、狭めすぎると被害者等の願いを不当に制限することになる。
ドイツでは罪名によって参加資格を決めている。しかし、この要綱は、生命、身体を傷つけられた者が最も刑事裁判に強い関心を持つことを考慮し、長期5年以上の刑に当たる犯罪の被害者等に参加申立資格を与えることとした。
刑法のなかから長期5年以上の刑に当たる罪名をあげれば、別紙(訴訟参加を認める罪名)のようになる。
しかし、例えば加重逃走、逃走援助の罪は国家法益に関する罪であり、暴行、脅迫を受けた公務員が訴訟参加する必要があるのかという議論や、同意堕胎致死傷、業務上堕胎、業務上堕胎致死傷、同意殺人などは被害者の承諾があるので、参加の必要があるかなどの議論が出た。後者の議論に関しては、同意の有無が問題となるので、訴訟参加を認める必要があるという意見があった。
特別法のなかにも参加資格のある罪名があることは当然である。
[第2項について]
参加申立ては被害者がするのが原則であるが、被害者が死亡した場合や心身に重大な故障(意識不明や高度脳機能障害など)がある場合は、配偶者及び2親等内の血族(両親、祖父母、子供、孫、兄弟)や1親等内の姻族(配偶者の両親)まで範囲を広げることとした。親族間の心情を考慮したものである。
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第3 (訴訟参加申立ての時期) |
訴訟参加申立ての時期は、公訴提起後判決確定の前までとする。
■ 趣旨説明 ■
訴訟参加申立ての時期を明確にしたものである。 公訴提起後、判決確定の前ならいつでも申立てをすることができることにした。
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第4 (訴訟参加の裁判) |
- 【1】裁判所は、訴訟参加の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聞き、参加により訴訟が著しく遅延するなど正当な理由がある場合を除いて、速やかに参加を許可する決定をするものとする。
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- 【2】訴訟参加の申立人が著しく多数にわたるときは、代表者選定等の条件を付することができるものとする
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- 【3】訴訟参加の申立てが、第1回公判期日前におこなわれたときは事件の係属していない裁判所が、第1回公判期日後におこなわれたときは事件の係属している裁判所が、決定をおこなうものとする。
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- 【4】訴訟参加を許可しない決定には、理由を付するものとする。
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- 【5】訴訟参加申立人は、参加を許可しない決定に対して、不服を申し立てることができるものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
訴訟参加の申立てがあったとき、参加資格の有無、範囲を調査する必要がある。そこで訴訟参加は、申立てだけでは足りず、裁判所の許可にかからしめることとしたのである。しかし、訴訟参加は被害者等の権利であるから、参加申立てがあったときは、裁判所は第2記載の形式的要件を備えている限り、速やかに許可しなければならないと定めた。ただし、参加によって訴訟が著しく遅延したり、参加人が暴力団関係者等であって被告人が畏怖して防御権を行使できなくなるおそれがあるなど正当な理由があるときは、許可しないことができるようにした。
[第2項について]
被告人が多数いて、訴訟参加申立人も多数になる場合であっても、参加を拒否することはできない。しかし、審理に支障をきたすほど訴訟参加人が多数になるような場合は、代表者の選定等の条件を付することができるものとした。
[第3項について]
予断排除の原則、起訴状一本主義(刑事訴訟法256条6項)との調和の観点から、第1回公判期日前に参加申立てがあったときは、事件を審理する裁判所(係属裁判所)以外の裁判所が裁判をおこない、第1回公判期日後に申立てがあったときは、係属裁判所 が裁判をおこなうこととした。
[第4項について]
参加を許可しない決定は、正当な理由がある場合にのみ例外的に許されるのだから、安易な不許可の決定を防ぐため、訴訟参加を許可しない決定には理由を書かなければならないこととした。理由は抽象的ではなく具体的に書き、訴訟参加申立人を納得させうるものでなければならない。
[第5項について]
参加を許可しない決定に対しては、訴訟参加申立人は不服申立てができることとした。不服申立てを認めても刑事手続が停止するわけではないから、被告人の迅速な裁判を受ける権利を阻害することにはならない。
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第5 (期日指定) |
裁判所は、準備手続及び公判期日を決定するに当たっては、訴訟参加人の意見を聞くものとする。
■ 趣旨説明 ■
期日の指定は裁判所の裁量に属する(刑事訴訟法273条、276条)。しかし、訴訟参加人が出席できない期日を指定されては、参加の意味がなくなるので、期日指定にあたっては、裁判所は訴訟参加人の意見を聞かなければならないこととした。
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第6 (在廷) |
- 【1】訴訟参加人は、準備手続に出席し、公判廷に在廷することができるものとする。
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- 【2】訴訟参加人は、第7により訴因を設定したときは、在廷しなければならないものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
法廷に複数の証人がいる場合、ある証人が尋問されているときは、後に尋問予定がある他の証人は退廷していなければならないことになっている(刑事訴訟規則123条2項)。しかし、訴訟参加人は当事者であるから、常に在廷する権利があるものとした。 しかし、在廷の義務はない。
[第2項について]
訴訟参加人が第7により検察官から独立して訴因を設定した場合は、訴訟参加人がその訴因の審理に関しては前面に出るので、この場合には在廷する義務があるものとした。この場合、訴訟参加人が在廷しなければ、訴訟参加人が設定した訴因について審理することができない。ただし、検察官が設定した訴因については、訴訟参加人が在廷しなくても審理することができることはいうまでもない。
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第7 (訴因設定及び冒頭陳述) |
- 【1】訴訟参加人は、裁判所の許可を得て、公訴事実の同一性の範囲内で、検察官から独立して訴因を設定することができるものとする。この場合においては、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聞くものとする。
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- 【2】訴因の設定を許可しない決定には、理由を付するものとする。
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- 【3】 訴訟参加人は、訴因の設定を許可しない決定に対して、不服を申し立てることができるものとする。
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- 【4】訴因を設定した訴訟参加人は、証拠調べのはじめに冒頭陳述をおこなうものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
本来、殺人で起訴すべき事案で、またそれが可能であったのに、検察官が傷害致死で起訴し、被害者等は口惜しい思いをすることがある。このような場合、訴訟参加人は裁判所の許可を得て殺人の訴因を設定できることにした。
ところで、訴訟参加人に訴因設定権を認めることは、検察官の起訴独占主義をとる現行法の建前と衝突するという批判がある。
しかし、検察審査会の起訴相当の議決に法的拘束力が認められる法案が通る見通しであることからもわかるように、検察官の起訴独占は絶対不可侵のものではなく、検察官にどこまで起訴権限を与えるかは立法政策の問題である。
ただ、訴訟参加人に訴因設定権を認めるにしても慎重を期する必要があるので、裁判所の許可にかからしめることとした。
新訴因が設定されると、その訴因については訴訟参加人が主体的に訴訟を追行することになる。
また、広範に訴因設定権を認めると、被告人の防御の目標が広がることになり、被告人の防御権を害することが危惧される。
そこで、訴因設定権を認めるとしても、検察官の設定した訴因と、公訴事実の同一性のある範囲内においてのみ可能とした。
ここで、公訴事実の同一性とは、基本的事実関係が一致している場合を指す。従って、訴訟参加人に訴因設定権を認めても、被告人の防御権が害されたり、訴訟がいたずらに遅延するおそれはない。
訴訟参加人の訴因と検察官の訴因とは併存し、一方が認められるときは他方は認められないという関係に立つことになる。
[第2項について]
裁判所の恣意的な不許可の裁判を防止するため、裁判所が訴訟参加人の訴因設定を許可しないときは、理由を付さなければならないものとした。その理由は訴訟参加人が納得しうる具体的なものでなければならない。
[第3項について]
訴因設定を許可しない決定に対して、不服申立ての途を開いたものである。
[第4項について]
訴訟参加人が検察官から独立して訴因を設定した以上は、今後どのような事実を証拠で証明するかという立証の大綱を訴訟参加人が示す必要があるので、証拠調べの始めに冒頭陳述をおこなわなければならないものとした。
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第8 (証拠調べの順序及び範囲) |
裁判所は、検察官、訴訟参加人、被告人又は弁護人の意見を聞いて、証拠調べの範囲、順序及び方法を定め、又は変更することができるものとする。
■ 趣旨説明 ■
証拠調べの範囲、順序及び方法は、実質的な訴訟活動の要となるものであるから、訴訟参加人の意向を反映させるようにしなければならない。訴訟参加人が訴因を設定したときはなおさらである。 従って、訴訟参加人も証拠調べの範囲、順序及び方法について意見を述べることができるものとした。
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第9 (公判記録及び検察官の手持ち証拠に対する閲覧及び謄写) |
- 【1】訴訟参加人は、公判記録及び検察官の手持ち証拠について、閲覧、謄写することができるものとする。
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- 【2】検察官の手持ち証拠の閲覧、謄写は、弁護士を介しておこなうものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
いわゆる犯罪被害者保護法(3条)によって被害者等に対して公判記録の閲覧、謄写を認める制度ができた。しかし、これは損害賠償請求のためその他正当の理由がある場合で、犯罪の性質、審理の状況、その他の事情を考慮して相当と認めるときにだけ許可されることになっており、要件が厳しい。訴訟参加人は当事者として訴訟追行に参加するのだから、無条件に公判記録の閲覧、謄写ができなければならない。
検察官の手持ち証拠についても、真相究明のために参加人は閲覧、謄写できるようにする必要がある。
検察官は、手持ち証拠について、事案の解明、真相の究明には不要であると考えて法廷に提出しないこともあるが、事件の当事者である訴訟参加人の目から見ると、重要な証拠であると評価される場合がある。
証拠の評価について検察官だけでなく当事者にもこれをおこなわせることによって、多角的な視座からの評価が可能となり、真実発見の見地からも有益である。特に、訴訟参加人が訴因を設定したときは、検察官の手持ち証拠を見ることの必要性が高まる
[第2項について]
上述の通り、検察官の手持ち証拠を訴訟参加人が知ることは必要であるが、他面、関係者のプライバシー保護その他の関係から、被害者等が直接閲覧、謄写することには問題がある場合もある。そこで被害者等がこの権利を行使するには、弁護士を介しておこなうものとした。
弁護士は、訴訟参加人に知らせることにより著しい弊害があると判断したときは、訴訟参加人に知らせないというクッション的役割も期待される。
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第10 (証拠調べの請求) |
- 【1】訴訟参加人は、証拠調べを請求することができるものとする。
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- 【2】検察官又は訴訟参加人が申請した書面又は供述に対しては、被告人が同意権を有し、被告人が申請した書面又は供述に対しては、検察官が設定した訴因に関するときは検察官が、訴訟参加人が設定した訴因に関するときは訴訟参加人が、それぞれ同意権を有するものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
刑事訴訟が証拠裁判主義をとる以上、いかなる証拠を提出するかは訴訟の命運を左右する。被告人には、憲法37条2項により「すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」と定められているが、訴訟参加人も被告人と同様に当事者である以上、自ら訴因を設定するか否かにかかわらず、被告人と同様の証拠調請求権を持つこととした。
[第2項について]
書面や伝聞供述の場合、反対尋問に晒されていないのでそれだけでは証拠能力をもたないが、相手方当事者が同意すれば反対尋問権を放棄したことになるから、例外的に証拠能力が認められることになる(刑事訴訟法326条)。
この同意権を誰に付与するかについては様々な組み合わせが考えられるが、最も簡明な方法として、
- 検察官が申請した書面又は検察官が申請した証人が法廷で述べた伝聞供述については、被告人だけが同意権を有し、訴訟参加人は同意権を有しないものとし、
- 訴訟参加人が申請した書面又は訴訟参加人が申請した証人が法廷で述べた伝聞供述については、被告人だけが同意権を有し、検察官は同意権を有しないものとし、
- 被告人が申請した書面又は被告人が申請した証人が法廷で述べた伝聞供述については、それが検察官設定の訴因に関わるときは検察官だけが、訴訟参加人が設定した訴因に関わるときは訴訟参加人だけが、それぞれ同意権を有するものとして、手続が混乱しないようにした。
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第11 (異議の申立て) |
- 【1】訴訟参加人は、証拠調べに関して異議を申し立てることができるものとする。
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- 【2】訴訟参加人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができるものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
刑事訴訟法309条1項と同様の規定である。裁判長の証拠決定、尋問の制限などの処分について、訴訟参加人は、被告人、検察官と同様に異議申立権をもつことにした。訴訟参加人が当事者である以上、当然の規定である。証拠請求が却下されたときなど、直ちに異議の申立てができることになる。
[第2項について]
これも刑事訴訟法309条2項と同様の規定である。裁判長の訴訟指揮、法廷警察権の発動について、訴訟参加人の意向を反映させることができるようにした。
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第12 (尋問及び質問) |
- 【1】訴訟参加人は、証人、鑑定人に尋問し、被告人に質問することができるものとする。
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- 【2】被告人は、訴訟参加人に質問することができるものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
証人、鑑定人、被告人に対して訴訟参加人が直接、尋問し、質問する権利を保障したものであり、従来から被害者等が強く求めてきた権利の一つである。 また、被害者等は事件を自ら体験した者であるから、被害者等でなければ追及できない視点があることも否定できない。
被告人の弁解、証人の証言、鑑定人の意見に対して、直ちに、その場で反論したり、チェックするために尋問、質問をおこなうことは、真実発見のためにも有益である。
[第2項について]
訴訟参加人だけが被告人に質問し、被告人が訴訟参加人に質問できないとすると、公平を欠く。そこで被告人も訴訟参加人に対して質問できることにした。
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第13 (宣誓免除) |
裁判所は、訴訟参加人に対する質問について、宣誓を免除することができるものとする。
■ 趣旨説明 ■
証人は証言するとき宣誓させられるが(刑事訴訟法154条)、訴訟参加人は当事者であり証人ではない。そこで訴訟参加人質問のときは、宣誓を免除できるものとした。
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第14 (忌避) |
訴訟参加人は、不公平な裁判をする虞のある裁判官を忌避することができるものとする。
■ 趣旨説明 ■
不公平な裁判をするおそれのある裁判官を、別の裁判官に交代させることである。刑事訴訟法上、検察官、被告人にも同様の権利がある(刑事訴訟法21条)。
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第15 (意見陳述) |
訴訟参加人は、証拠調べが終わった後に、事実の整理、証拠の評価、法律の適用及び心情その他について意見を陳述することができるものとする。。
■ 趣旨説明 ■
刑事訴訟法292条の2の意見陳述制度ではカバーできない権利を定めたものである。現行の意見陳述は、被害感情を訴える場であり、しかも権利ではなく裁判所の裁量により認められている。
これに対し、ここでいう意見陳述は検察官の意見陳述権(刑事訴訟法293条1項)と同様の性質を有する権利であり、被害感情の訴えはもとより、事実の整理、証拠に対する評価、法律解釈についての見解(論告)、求刑意見も含まれる。
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第16 (判決) |
裁判所は、判決において訴訟参加人が設定した訴因を排斥する場合は、その理由を示すものとする。。
■ 趣旨説明 ■
訴訟参加人が設定した訴因を排斥する判決には、きちんとその理由を示さなければならないものとした。 理由は訴訟参加人を納得させうるよう、具体的に書かなければならない。
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第17 (上訴) |
- 【1】訴訟参加人は、無罪判決に対して、上訴することができるものとする。
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- 【2】訴訟参加人は、訴訟参加人が設定した訴因の判決に対して、上訴することができるものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
検察官が設定した訴因に関する判決について、無罪判決があっても検察官が上訴しない場合に、訴訟参加人はどうすればよいか。検察審査会に持ちこんで上訴相当の結論を得た後、訴訟参加人が上訴する制度を設けるという案も出たが、それでは2週間の上訴期間に間に合わない。
裁判所の上訴許可をとってから上訴するといっても、無罪判決を出した裁判所が上訴許可をしないであろう。そこで、訴訟参加人が直接上訴する制度を創設することにした。
被害者等が判決に対して不満をもつ最大のものは量刑不当であるが、そこまで訴訟参加人に上訴権を認めるのは、上訴範囲を拡大し過ぎることになるので、ドイツ法にならい無罪判決に限定した。
[第2項について]
訴訟参加人が検察官から独立して訴因を設定したときは、上訴する理由を無罪判決の場合に限定する必要はないので、事実誤認のみならず、量刑不当を理由としても上訴できるものとした。
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第18 (補佐人) |
- 【1】訴訟参加人は、弁護士を補佐人として選任することができるものとする。
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- 【2】訴訟参加人が、経済的事情その他の理由により補佐人を選任できないときは、国費で補佐人を選任することができるものとする。
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■ 趣旨説明 ■
[第1項について]
被害者等は、法律については素人であるから、法律の専門家の支援が得られなければ、訴訟参加しても活動するには実際上困難を伴う。そこで弁護士を補佐人として選任することができることにした。弁護士が付いていれば検察官との協議、意見交換もスムーズにおこなわれるだろう。
弁護士補佐人を強制する案も有力だったが、我が国では、弁護士強制主義をとる法制がないので、現在の案としては任意的選任制とした。
[第2項について]
上述のとおり、弁護士を補佐人とする要請は極めて高いので、極力これに応じなければならない。そこで、訴訟参加人が弁護士を依頼したくても、経済的理由その他の理由により弁護士補佐人を選任できないときは、被告人と同様、国費により選任することができるようにした。
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