「被害者の権利確立に向けての国連の取り組み」
オタワ大学教授(犯罪学) Irvin Waller 氏
(通訳 常磐大学国際被害者学研究所専任研究員 小林 麻衣子 氏)
- 1.先ず、日本における犯罪被害者等基本法の成立は喜ばしいことだ。理念だけでなく補償・刑事司法参加についても述べている。世界のモデルになる。
- 2.ここで、六つの考慮されるべき事項がある。
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- 犯罪率上昇への対応で、国家レベルでの予防策が必要である。この際、国連のガイドラインが重要な基準となる。
- 犯罪被害者援助に政府の資金を投入する必要がある。
- 被害者援助の専門家(警察官・裁判官・医療従事者など)の養成と援助が必要である。
- 被害の程度の研究とその研究結果についての評価が必要である。
- 国際的な知識の共有が必要であり、常磐大学国際被害者学研究所への期待が高い。
- この問題に対する日本の取り組みは、海外にも発信してもらいたい。
- 3.上記2のために何がなされるべきか。
- 1982年に、世界被害者学会の国際被害者学シンポジウムが東京・京都で開かれ、その後、国連で各国の犯罪被害者についての意見が一致し、1985年に国連基本原則宣言が採択された。このとき、宮澤浩一教授、諸澤英道教授など、日本の専門家の役割が大きかった。
この基本宣言は、効果的犯罪予防を取り上げており、今度の日本の基本法と類似点が多い。基本宣言の6条では、被害者の尊厳を尊重するために、被害弁償、個人的安全、プライバシーの尊重、元の生活に戻れる権利などについて規定している。日本の基本法がその精神に沿って運用されることを望む。
- 4.日本以外の各国の例
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- EU、ヨーロッパ評議会、アメリカ、イギリスなど、国際的に大きな金額を被害者対策に投じている。
- フランスやドイツでは、被害者は弁護士の援助のもと刑事司法に当事者として参加できる。
- 5.国連の活動
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- 政策決定者に対するガイドや実務者に対するプログラムの作成、暴力犯罪の撲滅、安全な社会の実現、子どもや女性へのDV対策、社会的弱者への対策などを行っている。
- 2005年4月18日〜4月25日、国連の犯罪防止会議がタイのバンコックで開催される。また、2006年8月、世界被害者学会主催の国際被害者学シンポジウムがフロリダのオーランドで開催される。いずれも、日本からのたくさんの参加を望んでいる。