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全国犯罪被害者の会(あすの会)第9回大会・シンポジウム
2008年(平成20年)11月30日
場所  日比谷三井ビル8階ホール
平成20年11月30日(日)東京日比谷三井ビルで第9回全国犯罪被害者の会(あすの会)大会・シンポジウムが第3回犯罪被害者週間行事として開催された。 翌日の12月1日から被害者参加・損害賠償命令が施行されるので、「被害者参加・損害賠償命令を明日にひかえて」と題しての大会・シンポジウムであった。 支援者、メデイア関係者、会員、一般人等300人が参加した。
-■ 挨拶 岡村代表 -祝辞にかえて 鳩山邦夫総務大臣
-ご挨拶 早川法務大臣政務官 -メッセ-ジ 石原東京都知事 祝電 他
-基調講演 諸澤英道常磐大学理事長 -パネルディスカッション
-裁判劇  裁判劇こぼれ話 -大会決議

挨拶
2008.11.30
代表幹事 岡  村   勲
 2000年1月23日、犯罪被害者の権利と被害回復制度の確立を求めて、当会を設立してから、やがて9年を迎えようとしています。第3回犯罪被害者週間に合わせて、本日第9回大会を迎えることになりました。

 本日は、鳩山総務大臣(元法務大臣)に、政務御多端の中ご出席を頂きましたことを心から感謝申し上げます。

 この9年間で、犯罪被害者の権利は大きく向上し、国家、国民の犯罪被害者に対する理解は、前進しました。

 犯罪被害者保護2法は、当会設立以前から準備されていましたが、それ以後の立法、犯罪被害者等基本法、同基本計画、被害者参加、損害賠償命令、少年法の改正、国費による懸賞金制度、犯罪被害者週間、訴状に於ける原告の住所不記載、犯罪被害者給付金の増額、被害者国選弁護士制度などは、当会が積極的に取り組んできたものであります。

 いよいよ明日12月1日から、当会が最も力を入れて取り組んできた、被害者参加と損害賠償命令制度が実施されます。  加害者と被害者が同等の権利を持って法廷で対峙するという、当会の主張からは、大きく後退しています。

被害者の参加は、被害者の尊厳、人格を守る上で欠かせないものです。それが実現しなかったことは残念であり、これからもこの運動を続けていかなければなりません。

しかし、長期にわたって続いてきた刑事司法制度を、一挙に根底から改正することは、困難なことであり、今回の改正は、現段階ではやむを得なかったと思います。それでも被害者の参加は、画期的なことであり、まずは、この制度をしっかりと定着させることが、大切であります。

ところで、明日から始まる被害者参加は、運動をした私たちには、まったく無縁の法律であります。  犯給金について言えば、7月1日以降の被害者からであり、被害者参加と損害賠償命令制度については、明日以降起訴された事件の被害者から利用できる制度であります。

 自分たちには、何らの利益にならない制度の実現のために、私たちは2度にわたって外国を実地調査し、全国的な署名活動を行い、国会陳情を行い、渾身の力を尽くしてまいりました。

 私たちの味わった苦しみを、これから生まれる被害者に味合わせたくない、被害者の尊厳、人格を重んじない制度を存置することは許されないという、私たちの一念からこの運動を続けてきたもので、それだけに国民の共感を得たものと存じます。

 共に闘ってくださった被害者の方々に、心から感謝と尊敬の念を捧げるものであります。 本日の模擬裁判劇は、脚本、演出、出演者すべて弁護士の手によるものであります。至らない点は、あるかも知れませんが、仕事が終わってから、深夜まで集まって準備したこの模擬裁判劇は、被害者参加制度のご理解に役立つものと存じます。

 被害者関係の多くのシンポジウムや、大会と比べて、印刷物も質素で不十分でありますが、できるだけ経費をかけないよう、運動してきた会であることでご了解を得たいと思います。

 お手元のQ&Aも、安い印刷屋に頼んだために、おかしな形式になっていますが、内容は間違いないと存じます。

終わりになりましたが、この運動を終始大所高所からご指導くださった_澤先生、弁護団の先生、犯罪被害者支援フォーラムの方々、報道機関の方々、ボランティアの方々に心からお礼申し上げます。

 また、この会場は、三井不動産株式会社のご好意により、無償でお貸しいただき、休日にもかかわらず大勢の方々がご協力くださっております。感謝申し上げます。
有難うございました。
以 上  
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祝辞にかえて  鳩山邦夫 総務大臣(元法務大臣)
この国の正義を実現するためにも、悪事を働いた人間は正しく裁かれるべきである
 鳩山邦夫 総務大臣「被疑者や犯人、被告人の人権は守らなければならない」「間違った取り調べや、行き過ぎた取り調べによって冤罪が起きてはいけない」

 日本の国では、なぜかこのことばかりに重心が置かれ、被害者の方々が置き去りにされたままという制度がずっと続いてきました。これは根本的に政治の怠慢であり、間違いであったと思っております。

 皆様方の運動によって行政、政治、司法もそれに気づいて態度を改めるようになってまいりました。いよいよ12月1日から、被害者参加・損害賠償命令制度、国選被害者参加弁護士制度が発足いたします。

 大会のプログラムでは「祝辞」となっておりますが、今までそうした制度がなかったことが間違いなのですから、このことに対してただ「おめでとうございます」と言うわけにはいきません。

我々が反省して、皆さんが望んでいる社会にやっと一歩近づいたという歴史的な記念日であり、今日行われる模擬裁判劇やシンポジウムは豊かな内容になることでありましょう。

 一昨日、与野党党首によるクエスションタイムというものがあり、私は総理の隣の隣に座って、45分間、これを聞いておりました。正直に言ってものすごくつまらない党首討論でした。第二次補正予算をどうするのか、解散するのかしないのか・・・・。

問題はこの国や社会をどうするかということではないでしょうか。気がついていながら、政治家はそれをやろうとしていなかった。だから被害者の皆さんが、ここまで無視されるような社会が続いてきてしまったわけです。党首討論であるならば、あるべき社会のかたち、国のかたちについて語られなければおかしいのではないでしょうか。

私は政治家を30年間やっておりますが、哲学や理念を持った政治家がどんどん減って、ほとんど見られないような気がします。だから選挙でどちらが勝つか、いつが有利か、すべて政局絡みでしか語られず、つまらない党首討論になってしまうのです。

 そういう意味で、皆様方が社会の本質について、つらい経験を通して学ばれ、運動を起こされたことについて、私は心から敬意を表します。ただ制度の中身を見ると、岡村代表幹事からもお話がありましたように、まだ不十分なところがある気がいたします。

たとえば裁判に被害者、あるいはご遺族が参加されて被告人にはいろいろ聞けるけれども、証人尋問の際は事件そのものについて触れてはいけないような制約がある。あくまでも裁判所の許可が必要である。この点については、もっと被害者寄りになるように、私どもも皆様と力を合わせてがんばっていかなければなりません。

いつまでも死刑が執行されないのは、やはりおかしい
 鳩山邦夫 総務大臣  私は政治的な器用さを持った人間ではありません。カメレオンのように、いろいろな色彩をお持ちになる政治家が多いなかで、私は単純すぎて政治家向きではないのかもしれない。

何十年と議員をやってきて、少しでも正しいことをやりたいと思っておりましたときに法務大臣を仰せつかった。死刑執行について触れることはタブーだと法務省の役人は言いました。でもそれは違うんじゃないか。

私はあえてタブーを破りました。皆さんの大切なご家族を殺して、三審制によって死刑が確定になった人が執行されない。そんな馬鹿なことはあるか。私はずっとそう思い続けてきたから、その通り言ったのです。

死刑が自動的に進む道があってもいいのではないかと。表現はちょっと乱暴だったのですが、やはりいつまでも執行されないのはおかしい。そうすると明らかに引き延ばし目当ての再審請求、恩赦の出願等がなされてきます。それは正義とは言えないのではないか。それでは正義は実現されない。

法務大臣がサインするかしないかが話題になりますが、私はそう思ったから、もっと粛々とすすんでいく方法はないかと、当たり前のことを申し上げたつもりです。ありとあらゆる新聞社から攻撃されました。

しかし、インターネットで調べれば、「鳩山法務大臣の死刑自動化発言」、支持率は86%ぐらいだった。世の中はちゃんと見てくれている、世の中は死刑が執行されないで100名以上いつもいる状況は正義の実現ではないとちゃんと理解してくれている。私はそう思いました。

 死刑を執行しても皆様のお気持ちが晴れるわけではないと思います。しかし、皆さんの大切な家族を殺した奴が、判決が確定しながら生きているということについてはやはり疑問の気持ちを持たれるでしょう。悪いことをした人は、正しく裁かれるべきです。それがなされていなかった。いや、今でもなされていない。

私はそれに対する激しい憤りを抱いたから、いろいろ発言してマスコミに叩かれた。最後に朝日新聞社は私のことを死に神と言った。なぜ私が死に神なんですか。岡村先生、そして皆さんが立ち上がってくださって、何度も朝日新聞と議論をしていただいた。しかし、少なくとも朝日新聞から私に対してはひとことも申し訳なかったという話はありません。

そんなマスコミは犯罪を助長している、とまでは言いませんが、死刑を執行した人数が多いからといって私を死に神呼ばわりすれば、それが半分冗談だったといって通用するようであれば、この国は正義を実現できなくなってしまう。私は本当にそう思います。

 あなたは人の命を大事にしないのか、と私は人からよく言われます。人命軽視だと。あなたは人間の資格さえないと亀井さんという政治家から言われました。でもそれは違う。私は、命と言うものは、地球46億年の歴史の中で奇跡的に生まれたものだと考えています。

そして人間は万物の霊長だと威張っていられる存在ではなく、自然の中で自然と共生してやっていくしかないということをわかっております。わかっていない人がほとんどですけれど、私はわかっているつもりです。

そして、人間がこういう近代社会を作っている以上、命を大切にしなければならない。人の命を大切にする日本の歴史的文明的伝統の中で、私は考え、感じ、そのいちばん大切な人の命を邪悪な心で奪うような人間は、正しい裁きを受けるべきだと思っています。

 私は人命軽視の人間ではありません。人命軽視の人間であれば、私は13人も死刑の執行はしなかったと思います。私は死刑廃止論者の方々ともずいぶん話をしたことがあります。

EUの方とも2回ほど議論しましたが、私が思うのは、死刑廃止論者というのはずいぶんドライな考え方なんだなということです。

正義の実現を何と心得る、失われた人の命を何と心得る、被害者の皆さんの心情を何と慮る。いかにもヨーロッパのドライな考え方から来るのではないかと思っております。
この国、この社会のかたちを変えなければいけない
  私は被害者の方々に対して本当に何と表現したらいいから分かりません。岡村先生とお話をするとき、普段私は多弁だと思うのですが、なかなか言葉が出てきません。

皆さんの心情をいくら推し量ると言っても、自分ではそのような経験をしていないのです。そう思うと言葉が出なくなります。世の中で最もつらい経験というのは、愛するかけがえのないご家族の命を、犯罪によって奪われることではないでしょうか。それに対して、正しい裁きがこれからも行われることを私は期待しております。

 日本は命を大切にする歴史と伝統を持っている。けれども、その日本が政治も行政もだらしなかったのか、そのことも深く反省をしなければなりませんが、社会が根底においておかしくなってきているのではないか。

犯罪件数は減っても、凶悪犯罪が増えています。救いようのない悪い事件がいっそう増えている。国民の体感治安は益々悪化するという現象を生んでいるのではないでしょうか。教育の問題もあるかもしれませんが、私はこの国、この社会のかたちを変えなければいけないと思います。

間違った者に厳しい裁きが下るような世の中にしなければいけない。そのためには我々も勉強をしなければならないことが山のようにあります。

 これからも少しでも皆様のお役に立てるようにがんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします。死に神呼ばわりされた私を助けて応援をしてくださいましたことを心から厚く御礼申し上げてご挨拶とかえさせていただきます
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ご挨拶  早川忠孝 衆議院議員(法務大臣政務官)
早川忠孝 衆議院議員 「夫の名誉が守られた」と裁判劇の中にありました。この名誉という言葉が認められたのが、平成16年12月1日に成立した犯罪被害者等基本法でした。

平成15年に衆議院議員になったとき、すでに「犯罪被害者の権利、名誉が国政の場で十分尊重されていない」という訴えを「あすの会」の岡村先生をはじめ多くの皆さんが展開されていました。

そして上川陽子先生が座長に、私が主査になって、皆様とともに犯罪被害者の方々のための名誉や権利、利益を実現するための新しい制度作りに向けて活動を行い、平成16年に結実をしたわけです。

その後、犯罪被害者等基本計画を作り上げ、3年余をかけてさまざまな制度が作られました。ついに明日から犯罪被害者参加制度、損害賠償命令制度が発足いたします。

「あすの会」の皆様の長年に渡るご努力が、犯罪被害者の権利に対する国民の意識を変え、これにより日本は大きく変わると私は思っております。法務大臣政務官として、大事な制度のスタートの瞬間に立ち会うことができました。

 まだ足りないことはたくさんあると思いますが、ただいまの模擬裁判で、この制度が私たち国民にとってどれほど大きなものをもたらすかがわかりました。

こうして犯罪被害者週間にあたって、大事な第9回の大会が開催されますことを心からお慶び申し上げますとともに、今後ますますのご支援をさせていたくことを申し上げてご挨拶とさせていただきます。

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メッセ-ジ
東京都知事 石原 慎太郎
「第9回 全国犯罪被害者の会(あすの会)大会」の開催を心からお慶び申し上げます。

 「全国犯罪被害者の会」の皆様には、犯罪被害者支援に日頃からご尽力いただき、深く敬意を表するものです。

 とりわけ、明日12月1日からは、会の皆様が長年取り組んでこられた努力が実を結び、犯罪被害者の方々が刑事裁判に参加することや損害賠償請求において刑事手続の成果を利用できることになります。

また、少年法の改正により、少年審判を傍聴することができるようになるなど、被害者の方々の立ち直りにつながる新しい制度も間もなく始まることとなりました。

 犯罪被害に遭われた方々が再び平穏な生活を営むことができるよう、途切れることなく支援を行っていくためには、今後とも地域社会が一体となった支援に取り組んでいかなければなりません。

東京都でも、本年1月に策定した「東京都犯罪被害者等支援推進計画」に基づき、関係機関・団体の皆様とも協力しながら、全力を挙げて実効性のある施策の推進に取り組んでまいります。

 この大会を契機に、皆様が被害者支援活動を一層積極的に取り組んでいただくことを祈念しています。

祝電
このほか保岡興治衆議院議員、細川律夫衆議院議員、中山泰秀衆議院議員、左藤章前衆議院議員、秋田県大潟村活力ある農村社会作りの会有志の皆様から祝電をいただきました。ありがとうございます。

参加者の声(シンポジウムアンケートより)
 初めてこのような会に参加しました。被害者の名誉回復のため、また被害者が立ち直って生活をしていくためにも被害者参加の制度が大切であることがよく理解できました。

また、模擬裁判劇はこの制度のイメージがよくわかり、出演者の熱演に思わず引き込まれ胸を熱くしました。

 私は地方公務員です。この制度を活かしていく上で市町村の役割が大切だと思います。誰が犯罪被害にあって、どのように困っているのか実体がわかるのは市町村の職員だからです。

この制度を理解して市民に手をさしのべられるよう、市町村の職員に対しての働きかけが必要であると思います。市町村はこの制度について積極的に学んでいかなければならないと強く感じました。(地方公務員)


 現在、法曹を目指して勉強している学生です。今回のこの大会・シンポジウムに参加して非常に勉強になりました。

今回の制度改正は、かなり画期的なものだと思います。父親が弁護士で刑事弁護人を長くやっているので事前に聞いて参加しましたが、やはり刑事弁護人側の視点からすると被害者が法廷の場にいるというのは相当弁護がやりづらくなると言っていました。

確かに現憲法下ではそのような視点になりがちです。しかしパネルディスカッションの最後に岡村先生が「被害者を嫌わないでください」という言葉にハッとさせられました。これまでの考えを改めていくべきだと。  被害者参加弁護士というものに興味がわきました。 (大学生)


 本日は貴重なお話をありがとうございました。メールでの問い合わせにも丁寧にお答えいただき感謝しております。

 犯罪被害を考える上で被害に遭っていない人間と「感度が違うのは当たり前」という言葉がとても印象に残りました。

気持ちをわかったつもりも、わからないと諦めるのも良くない。わかりたいと思うのが大切なのだと思います。(大学生)


 二度目の参加となります。  明日から施行される「被害者参加・損害賠償命令制度」をひかえて非常に内容の濃いシンポジウムであったと思います。

模擬裁判劇によって犯罪被害者が参加した法廷が具体的にイメージできました。

 私は被疑者・被告人の人権はもちろん重要だけれども被害に遭い一番救われるべき被害者が軽視されすぎではないかと思い大学時代から犯罪被害者を取り巻く問題について関心を持ってきました。

将来は弁護士として犯罪被害者の方々をサポートできる存在になりたいと思います。(司法修習生)


 大学の授業の一環としてこのシンポジウムに参加させていただきました。はじめて被害者参加制度ができることを知り、その内容についても詳しく知ることができました。

世間では裁判員制度の方が広まっていますが、被害者参加制度を広めることが大事だと思います。周知されないとこの制度を利用することもできないからです。

 今回参加したことで、被害者参加制度についての報道にも敏感になると思います。意義のある大会でした。(大学生)

大会によせて  松本 茂さんからのメッセージ
おかむらせんせい。
にほんのほうりつをかえて。ひがいしやをすくった。

れきしにのこるしごとです。ひがいしやは。いままでは。なきねぃりにおわっていた。むごくて。かなしいおもいをしてきた。 かぞくのかなしみがすこしでもやわらぐことでしよう。

おくさんが。さされてなくなって。かなしみをのりこえて。にほんにのこるこんないいしごとができたのは。おくさんのゆいごんのようにおもえてなりません。すばらしいしごとができたのは。おくさんのおかげだとおもいます。

なみだがでるはなしですが。にほんをかえるおおしごとをしてくれました。おかむらせんせい。。ばんざい。ばんざい。ばいざいです。
へいせい20。11。30。
   まつもと。しげる




これは、秋田県大潟村在住で日本ALS(筋萎縮性側索硬化症)協会の名誉会長松本茂さんから大会に寄せられたメッセージ(原文のまま)です。

筋萎縮性側索硬化症は、意識がはっきりしているにもかかわらず、身体が全く動かせなくなるという難病です。現在は病状が進み、瞼でワープロを操作されます。松本さんは高知県宿毛市の橋立小学校で岡村代表幹事の3学年後輩でした。

後に秋田県大潟村に入植し農民運動をされた時に、岡村代表幹事が弁護士として関わり、「あすの会」ができてからはいろいろとご協力くださっています。松本さんありがとうございました。
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【基調講演】ついに始まる被害者参加と損害賠償命令 常磐大学理事長 諸澤英道
常磐大学理事長 諸澤英道 私が岡村先生と被害者参加について話をしたのは、「あすの会」が発足した翌年、2001年のことです。

もちろん私のかねてからの持論でもありましたが、このときは岡村先生から「こういうことをやりたいと思っている」とお話がありました。

全面的に賛成ですし、何とかできないものかと話し合ったのですが、7年前の我が国は、学会でも四面楚歌、多勢に無勢で、この種の議論をすることすら不可能な状況でした。それからわずか数年でこういう制度が実現したことには大変感慨深いものがあります。

 それを可能にしたのが、岡村先生の情熱、執念に近い信念であり、「あすの会」の皆さんの熱意、それを好意的に報道してくださったマスメディアの方々、そして世論の力です。

「制度を変えなければいけない」「あすの会」が産声を上げた日の決意
 ところで私がはじめて岡村先生にお会いしたのは1999年5月8日でした。先生が奥様を亡くされたのが97年10月10日ですから、事件からまだ1年半ほどしか経っていない頃です。

この日、東京弁護士三会主催で「憲法記念シンポジウム〜犯罪被害者の人権」というテーマのシンポジウムが弁護士会館で開かれ、私はパネリストを頼まれ参加したのですが、休憩のわずかな時間に紹介をされ、そのとき岡村先生とはただ名刺交換をし、二、三のお話をしただけでした。

 その直後、私は岡村先生に当時書き上げた本を1冊お送りし、7月25日に突然、先生から電話をいただきました。開口一番、岡村先生は「本に書かれているように本当に思っておられるのですか」と尋ねられたのです。突然のことで真意を図りかねて言葉を失いました。

後に先生にお聞きしたところ、「当時、被害者についてそのように理解している学者に会ったことがなかった。だから、半信半疑で確認をしたかった」ということでした。それから先生、そして「あすの会」の皆さんとのお付き合いが始まるわけです。

 「あすの会」での交流を通じて、私自身も、いろいろと学ばせていただきました。いつも申し上げていることですが、私は被害者学を専門に学びながら、自信を持って被害者とはこうであると言えない負い目を感じていました。

それは私自身が被害者ではないからです。そうした中で、会の皆さんとお付き合いをさせていただきながら、私は学者として、また人間として成長させていただきました。そういう意味で、「あすの会」の皆さんには改めて感謝を申し上げます。

 「あすの会」が産声を上げた2000年1月23日、私はその日のことを忘れることができません。飯田橋にあるボランティア会館を借りて、「犯罪被害者は訴える〜権利の確立と被害回復を求めて」というテーマで10時から始まりました。

予想を遥かに上回る人が集まり、用意した会場はいささか狭く、酸欠状態で体調を崩された方がいるほど熱気に包まれたものになったのです。これほど多くの被害者が声を上げられずにいたのかということを私も実感し、制度を変えなければいけないと強い決意を持ちました

「あすの会」の活動を支え続けた被害者弁護団という応援団
 その後、「あすの会」は、被害者参加制度を実現すべく2002年9月にドイツとフランスに第一次調査団を、2004年10月には賠償命令に関わる被害者訴訟制度についてイギリスとドイツに第二次調査団を派遣しました。

第一次ヨーロッパ調査団の成果に基づいて、2003年1月から全国で行った署名運動では約56万人の署名を集めたと聞いております。

 このように自信と信念を持って活動に取り組んでこられた会の皆さんの背後には、その活動を理論的に支えてくださっている多くの弁護士の方々、被害者弁護団がいます。ヨーロッパ調査の際も周到に準備をして調査に出向き、海外の専門家と議論をしてきました。

日本で新たな政策を提案すれば、当然、想定される反論というものがありますから、それについても書き上げて、ドイツやフランスなど訪問先で同じ質問を繰り返しました。岡村先生はどこに行っても同じ質問をされる。

日本の弁護士会に相当するようなところでも「被害者が参加するのは当たり前じゃないか」という答えが返ってきます。「もういいじゃないか。どこでも返ってくる答えは同じだ」と、いささか軽率に考えたこともありました。

すべての訪問先で同じ質問をし、同じ答えを得て、はじめてその意味が私にも分かりました。これで調査団全員は、確信を持って帰国することができ、それから国内でこの考え方をどうやって訴えていこうかという取り組みが始まったのです。

 弁護団という応援団が作られて、非常に精力的に活動してくださったことで、「あすの会」が我が国の被害者の地位向上に多大な功績を残すことができました。そこでぜひ弁護士の白井先生をご紹介したいと思います。

私がはじめて白井先生にお会いしたのは1995年9月29日、第41回関東弁護士連合会のシンポジウムが浜松で開かれたときのことです。

地下鉄サリン事件があった後で、世論は死刑廃止などというのは口にするのも恐ろしいというような時期でしたが、弁護士会は「死刑を考える」というテーマをその前年から計画してしまった。白井さんからある日突然電話があり、そのシンポジウムで、被害者の視点から死刑をどう考えたらいいかというご質問をされました。

結局、私も壇上に上ることになり、そこで私は、多くの弁護士の方々が、メディアを通じて伝わってくイメージとは違い、きわめて良識的な考えを持っておられることにはじめて気がつきました。

 現在までの13年間、そういう方たちがいたからこそ、昨年から今年にかけての「被害者の復興期」、被害者が本来の権利を手にする時期に日本も入ることができた。またそれを、いろいろなかたちで支援をしてくださった方々がいらっしゃいます。

そういう方々が心と心でつながって、このような動きができたのだということを実感しております。そして、その大きなうねりを起こした「あすの会」は、後世、歴史に必ず名を残すことでしょう。

「被害者参加制度の主役は被害者である」
その強い意識が運用の現場を変えていく
 被害者の復興期というのは、イギリスのマージャリー・フライという人が1957年7月に、ある雑誌に載せた”Justice for victim(被害者のための正義)”という論文ではじめて使った言葉です。

それから現在に至るまでの半世紀、被害者問題は常に正義の問題でした。鳩山大臣のお話にもありましたが、このままでいいのか、これを正さなければ正義に反するということです。フライは翌々年、保障制度の必要性を訴え、欧米の国々に大きな影響を与えます。

63年、ニュージーランドが保障制度を作り、各国が次々に制度を作っていきました。日本では残念ながら、それから17年かかって1980年4月に、ようやく犯罪被害者等給付金支給法が成立しました。この犯給法成立に貢献を果たした横浜・鶴見の市瀬朝一さんは、1966年5月21日に一人息子の清さんを通り魔に殺されました。

その後、67年6月4日に殺人犯罪の撲滅を推進する遺族会を120名の会員とともに結成し、その後、さまざまな取り組みをされ、朝一さんは志半ばで、犯給法が成立することを知らずに77年に亡くなられました。その後、80年代は被害者の権利確立に向けての動きはしぼんでしまいます。

90年代に入り、一部の専門家がこの問題に取り組み始め、いろいろな支援団体ができましたが、動きは必ずしも十分とは言えませんでした。そうした状況の中で「あすの会」が作られ、今、大きな改革の先頭に立っています。

 いよいよ明日から被害者参加制度がスタートします。この制度を考える際、やはり被害者が主役なのだということを必ず意識していただきたいと思います。被害者のための制度を作っているのですから、被害者が中心にいて、そのやり方は被害者にとってどうなのかということが、制度の善し悪しを決める物差しでなければなりません。

このことは私も学者として信念を持っています。それによって、まだ不十分なこの制度が、理想的な姿に生まれ変わっていくことにつながると思います。

 古い土俵に引きずり戻そうという人はたくさんいます。でも土俵は、考え方の枠組みは変わったのです。新しい枠組みをこれから作っていくのだという気概が求められます。法律の解釈論もさることながら、これから先、それをどう変えていくのかが重要です。

法律は運用上、幅があります。運用の現場を変えていく。新しい制度に則って動くときに、私たちが力になり、適切な助言をしていくことで、現場は変わっていくのだということを示すことがとても大切だと思います。

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【パネルディスカッション】  被害者参加・損害賠償命令を明日にひかえて
[コーディネーター]
 白井孝一 全国犯罪被害者の会(あすの会) 副代表幹事・弁護士
 高橋正人 全国犯罪被害者の会(あすの会) 幹事・弁護士

[パネリスト]
 辻 裕教 法務省刑事局刑事法制管理官
 高際みゆき 日本司法支援センター本部第一事業部犯罪被害者支援課長
 番 敦子 日本弁護士連合会犯罪被害者支援委員会副委員長
 岡村 勳 全国犯罪被害者の会(あすの会) 代表幹事

[オブザーバー]
 大西直樹 最高裁判所事務総局刑事局参事官
パネリスト(敬称略)

■ 被害者参加制度への思い パネルディスカッション
高橋正人(「あすの会」幹事・弁護士):いよいよ明日から被害者参加制度が施行されることになりました。そこでまず、パネリストの皆さんに、この被害者参加制度ができたことに対する感想をお聞ききしたいと思います。

岡村勳(「あすの会」代表幹事):本当に感無量と言いますか、さまざまな思いでここに座っております。ただ、私たちが考えていたような参加制度ではなくてまだまだ弱い。これを次への発展に向けて運動を起こす一里塚であると位置づけております。

高際みゆき(日本司法支援センター本部第一事業部犯罪被害者支援課長):画期的な制度だと思いますが、被害者の方がこの制度をきちんと使えないと意味がありません。私ども法テラスでは、全国でこの制度を必要としている方が使っていただけるようサポートしていきたいと思っております。

番敦子(日本弁護士連合会犯罪被害者支援委員会副委員長):ひとことで言えば私も感無量です。この制度はとにかく「あすの会」をはじめとする被害者の皆様が作ったものです。国選の被害者参加弁護士制度ができますので、私たちもできるだけバックアップしたいと思っています。

辻裕教氏辻裕教(法務省刑事局刑事法制管理官):法務省では、平成11年頃から犯罪被害者の方々の権利利益の保護支援のためさまざまな施策に取り組んで参りました。その中でも明日施行される被害者参加制度は最大の柱のひとつだと考えています。

被害者の方々のご心情を尊重するという趣旨で今般の法改正、法整備ができたわけで、非常に大きな意義を有すると受け止めております。また、適正な科刑の実現や被害者のご意見を受け止める裁判により、国民の皆様の信頼をより一層いただく上でも重要です。

大西直樹(最高裁判所事務総局刑事局参事官):2つの制度は、いずれも日本の刑事裁判における大きな改革であると認識しております。裁判所では、関係する諸機関と運用に関する協議を重ね、また裁判所内においても運用のあり方について検討して参りました。

また全国で模擬裁判を実施して、実証的な検討を進めております。本日はオブザーバーという立場から皆様のご意見をうかがいつつ、今後の適切かつ円滑な運用の参考にさせていただきたいと考えております。


■ 被害者と検察官の関係をどう考えるか
高橋:ありがとうございました。それではディスカッションを進めて参ります。まず、今回の制度において、被害者と検察官との関係をどのように考えたらよいか、法務省の辻さんにお伺いしたいのですが。

辻:まず検察官と被害者の方々との間で密接にコミュニケーションをとっていくことが基本になると考えております。参加する被害者の方に裁判でどういうことがしてほしいのか、検察官がご要望を充分にお聞きして、それを踏まえつつ、各公益の代表者としての立場も加味して適正な訴訟活動を行っていかなければなりません。

被害者の方々も、検察官の訴訟活動について、なぜそういうことをやるのかその内容や意味を充分にご理解いただき、その上で何をなさりたいか考えていただくのがよいのではと思っております。

高橋:被害者側に立たれる番先生は、具体的にどういう場面設定で、どのようなコミュニケーションをとると想定されますか。

番敦子氏 番:参加の申し出をして許可された場合には、すみやかに検察官に被害者の意向を伝えるということが大事だと思います。

ただし被害者ご本人だけで行うのは大変ですし、検察官は被害者の代理人という役割だけではないので、できるだけ弁護士を利用していただきたいと思います。

これによりさらに充分なコミュニケーションが可能になると思います。今後、運用面でいろいろな問題が出てくるかもしれないので、代理人として被害者側の弁護士を選ぶことが重要になるのではないでしょうか。国選の制度もありますので、ぜひご活用ください。

高橋:次に岡村先生にうかがいます。先生ご自身、以前は刑事被告人の弁護人として検察官と随分やり合ってこられ、今度被害者になられて実際の事件を体験されて検察官と打ち合わせの機会もあったかと思います。そうしたことも踏まえて、お話ししていただけますでしょうか。

岡村:私の場合、検察官には大変一生懸命やっていただき、大変、感謝しております。にもかかわらずやはり参加して自分で加害者に対して言いたかった。今度の参加制度では、参加人は検察官のそばにくっついてやらなければならなりません。

検察官にとって犯罪事実の立証は大変重要ですが、刑事裁判は被害者のためにもあるのだと基本計画にも書いてあります。裁判によって被害者が癒され、気持ちが安らぐこともあるという点を考慮していただきたいと思います。

高橋:ありがとうございます。今回の制度では、参加人が突然質問できるわけではありません。事前に検察官と打ち合わせをして質問したいと申し出て、検察官が裁判長に取り次ぎをする。

そして裁判長の許可を得て被害者は直接質問ができるわけです。被害者は、検察官が質問しない場合にはじめて質問できるシステムになっています。では、検察官が質問するのはどういう場合でしょうか。

辻:一言でいって決まりはありません。裁判の事案、事件の中身、被害者の方が希望される質問の内容によって、その都度打ち合わせをしていただくのが基本になるのではないでしょうか。

ただ、検察官としては犯罪事実、重要な情状事実も含めて、まず立証責任をきちんと果たさなければならないので、検察官として聞く予定であった内容は検察官のほうで聞かせていただくことがあるかもしれません。

また、検察官から聞いた方がうまくいく場合もあるかもしれません。そのようなことも含め、打ち合わせをさせていただくことになるかと思います。

岡村:私もケースバイケースだと思います。やはり捜査や証拠集めは国がしなければならない。従って立証の重要な部分は検察官にやっていただくことになるわけですが、それでもれている部分があります。被害者、被害者遺族でなければ反対尋問はできないような部分は質問させていただきたい。

嘘を言う被告人を追及もしたいわけです。また身内として被害者の名誉、尊厳を守るために聞きたい場合も、やはり被害者にやらせていただきたいと基本的には思っています。


■ 弁護士と被害者の望ましい関係とは
高橋:ありがとうございます。では次のテーマに行きたいと思います。直接、被害者が思いを述べたり質問をすると申しましても、裁判中は法律の専門家、弁護士が必要になってきます。その点を踏まえ、弁護士と被害者との望ましい関係について議論を進めたいと思います。

 まず国選被害者参加弁護士制度の窓口になっている法テラスの高際さんにお聞きしたいのですが、被害者としては弁護士に対して望むことも多いと思います。それに対する準備状況はどうなっているのでしょうか。

高際:法テラスにおいて被害者の方からの弁護士の希望を聞くということが法律にはっきりと書いてあります。希望する弁護士の方がいて、指名していただければ、法テラスではその先生に速やかに確認の上、裁判所に通知することになっております。

また特定の弁護士がいない、ご存じない方の場合は、法テラスでご希望を聞いた上で弁護士を探すことになります。裁判の期日や場所など、状況に応じてさまざまなご助言することになると思います。


■ 被害者のサポート役を果たす弁護士
高橋:さらに被害者と弁護士の立場について、具体的に踏み込んで行きたいと思います。裁判劇では、被害者の質問に対して被告側の弁護士が異議を唱え、裁判官が質問を変えるよう促しました。

素人である被害者がそう言われてもわからないので、被害者側の弁護士に助けを求めます。そこで代わって質問をしたわけですが、被害者に対する弁護士のサポートとしては他には具体的にどんなことが考えられるでしょうか。

番:刑事弁護人は被害者本人が尋問する場合はどんどん異議を出していく。一般の方が異議を言われて立ち往生するのは当然です。岡村先生のおっしゃった通り被害者の方の尊厳に関して、どうしても言わなければいけない、聞かなければいけないことはどうぞやっていただきたい。

ただ、尋問を全体として見た場合にそれは非常に危険でもありますから、勉強して尋問技術を学んでいる弁護士のサポートを受けることが望ましいと思います。被害者の方の意向が的確に刑事裁判に反映し、言いたいことも言え、聞きたいことが聞けるように弁護士を利用していただきたい。

高橋:大変力強いサポートありがとうございます。ところでこの制度は、被害に遭っていない法律家だけでどうして裁判が勝手に進んで行くのか、被害に遭った最大の当事者である被害者をなぜ蚊帳の外に置くのかとういうところから出てきたものだと思います。

被害者側の弁護士であっても、所詮は被害を受けていない法律家です。このような場合、被害者としては弁護士にどのようなサポートを望まれるのでしょうか。

岡村:やはり被害者は手続きの流れがわかりません。事前の打ち合わせで、被告人質問について「今日はこういうことだけれどもあなたがやりますか?」と聞いてもらいたい。「その程度ならやります。やらせてください」と言えば被害者がやる。

「ちょっと難しいから先生やってください」といえば弁護士がやる。あるいは弁護士のほうから難しい質問についてはよく話し合って、「私がその点は聞きましょう」「ではお願いします」となっていくのかなと思っております。


■ 求められる公判整理手続を踏まえた対応
高橋:ありがとうございます。私も「あすの会」に入って被害者ご自身の生の声を聞くとやはり違うと感じます。心を打つ言葉というのは当事者からしか聞けないのではないかなと思います。

 次に公判前整理手続について。これは公判、いわゆる裁判が行われる前に複雑な事件については検察官と裁判官と刑事弁護人の間で、事前に証拠や主張を整理しようということです。

今回、被害者参加制度では被害者や被害者から委託を受けた弁護士は公判前整理手続には参加できません。このことによる不都合や問題点について話し合っていきたいと思います。

番:まず公判前整理手続に付される事件、裁判員裁判はすべてそうなりますが、その段階で争点も整理され、進行も決められてしまう。被害者の知らないうちにすべて決まってしまうことがないように、公判前整理手続の前に被害者参加が許可されることが望ましい。

そしてできるだけ早く検察官と打ち合わせをし、公判前整理手続が終わるごとに状況を聞き、記録も見せてもらい、被害者の意向も伝えることが重要です。

高橋:実は被害者参加制度の対象事件と裁判員制度の対象事件は、ほぼ一致しています。裁判員はそれほど長く拘束できないため、被害者が第1回の期日に質問したいと思ってもその時に記録を見ていなければ質問すらできません。

そこで第1回期日までになんとしても記録を見たいというのが被害者の強い要望となります。法務省はこの点についてどうお考えでしょうか。

辻:被害者の方が裁判に参加される場合、ご希望も踏まえて整理をし、進行内容を決めていかなければなりません。ご指摘の通り検察官の役割は非常に重要で、まず参加のご意向の有無を、少なくとも公判前整理手続きが始まる前に教えていただくほうがいいだろうと思っております。

参加の意思を固められた場合、ご希望やご意向があれば検察官にお伝えいただきたい。また、第1回裁判が実際始まる前に、検察官が裁判の場に出す証拠については被害者参加の対象事件の被害者の方々については原則としてご覧いただくことにしております。

公判前整理手続の経過も検察官から逐次お伝えしていき、その中で新たなご意見、ご要望があれば伺った上で次の公判前整理手続に検察官として臨んで行きたいと考えております。

高橋:ありがとうございます。岡村先生にお尋ねしたいのですが、被害者側の公判前整理手続に対する要望を教えていただけないでしょうか。

岡村:まず起訴されるとすぐ被害者としては検事に会いたい。その時、検察官から一般の人は参加できますよということを説明していただきたい。それから被害者に対して現在の状況や、今後の進行、公判前整理手続の内容をきちんと説明していただきたいですね。

高橋:実は法テラスで国選被害者弁護士を選定してくださいと被害者が申し出るためには、その前提として被害者が裁判所から被害者参加の許可を得ておかなければなりません。

その意味でも被害者参加の申し立てと許可はできるだけ早くとっておく必要があります。許可を与えるのは裁判所です。大西さん、許可は原則として出るものととらえていいのでしょうか。

大西直樹氏大西:一般論で申し上げさせていただきますが、被害者参加の許否については暴力団関係の事件や暴力団内部の抗争といった例外的な場合を除いて認める方向で柔軟に判断していくことになると思います。




■ 新制度を実りあるものにするために
高橋:ありがとうございます。最後に、この新しい制度を成功させ長続きさせるためには何が一番大切かお話しいただければと思います。

大西:裁判所はこの制度を運用していく立場にございます。もちろん、この制度は裁判所だけではなく、検察官、被害者側の弁護士といった方々の役割は非常に重要だと思っておりますので、連携をとりつつ適切かつ円滑に運用していきたいと思っております。

辻:制度の趣旨を充分に踏まえて、適正、円滑に運用されることが一番重要だと思っております。被害者の方々のご要望を充分踏まえた捜査公判活動、被害者の方々が参加される際のサポートが検察官に求められる役割であり、そのためにも被害者の方々と密接なコミュニケーションを保ってやっていかなければなりません。国民の皆様への周知も更に努めて参ります。

番:この制度で、自分が何ができるのかを被害者の方がわかっていただければいいですね。せっかく国選の制度ができましたから、これによって被害者も弁護士をつけて自分たちの主張をきちっと言えるのだということが広まるよう、支援をしている弁護士として望んでおります。

そして被害者の方と私たち弁護士が意思疎通をしてスムーズにこの制度が始まり、被害者の方がこの制度があってよかったと言ってくださるようなケースがたくさん出て、さらにこの制度が進展していけばうれしいなと心から思います。

高際:ご負担なく実際にお使いいただけるということが何より長続きさせることにつながると私も思います。法テラスとしては、被害者参加の関係業務が始まることでこれまで以上に被害者の方と直接お話する機会が増えてまいります。

その際、法テラス職員として、二次被害を与えないようにご意向をきっちりうかがい、適切なアドバイスや対応ができるよう身を引き締めて行いたいと考えております。

高橋:今、国の費用で選定してもらうための被害者側の資力の要件はどのくらいですか。

高際:資力の要件、これは現金、預金など流用資産になりますが、基準額が150万未満です。それを越える場合でも、選定請求された日から3ヶ月間にかかる費用、通院費や療養費、リハビリ費など請求してから3ヶ月でかかるであろう費用を引いた金額が150万円未満の方は国選弁護士を選定請求できます。

高橋:すると土地、建物、マンション、株式、国債は入らないということですね。ありがとうございました。それでは岡村先生、最後にお願いします。

岡村:被害者が参加したらどんどん異議を言ってやろうとか、法廷で被害者と一緒の空気を吸うのも嫌だという話も聞きますが、もう少し被害者を好きになって貰いたいんですよ。

パネルディスカッション私もそうですが、誰も被害者になりたくてなった訳ではありません。もっと被害者を好きになって自分が被害者になった時に困らないようないい制度を作りましょうということを弁護士会として考えていただきたいと思います。

高橋:貴重なお言葉ありがとうございます。皆さん、ご清聴ありがとうございました。(拍手)

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裁判劇「偽装 あなたの名誉を守りたい」
被害者参加制度の導入により、裁判はどう変わるのか、被害者はどのようなかたちで裁判に関わることになるのか。基調講演に先立ち、顧問弁護士有志の皆さんによる裁判劇が上演されました。 [ストーリー]
 食品会社に勤める望月トオルは、会社の上司、中村から暴行を受け、意識不明の重体になった。「業務命令に従わないので、ついカッとなってしまった」と、中村は弁明した。

そんな中村の弁明を鵜呑みにしたマスコミは、「逆ギレ社員に専務がお仕置き」「モンスター社員」など、望月のことを面白おかしく書き立てた。

だが真相は、数年前から会社ぐるみで繰り返されてきた食品偽装を、止めるよう建言した望月に腹を立てた中村の突然の犯行だったのである。バッシング報道を浴びながら、望月は数日間生死の境をさまよい、帰らぬ人となってしまう。

 不正と戦う夫を支え続けてきた望月の妻は、「夫はモンスター社員なんかじゃない。あなたの名誉は私が絶対に守る」と決意する。妻は裁判に参加することによって夫の名誉を晴らそうと、支援員とともに、弁護士事務所を訪れるのであった。
キャスト
裁 判 長:後藤 啓二 右陪席裁判官:笹野  司
左陪席裁判官:稲生 奈実 検察官 1:大澤 寿道
検察官 2:小林 陽子 中村専務(被告人):中村 竜一
望月の妻(被害者参加人):望月 晶子 弁護人 1:山崎 勇人
弁護人 2:甲斐 朝美  

裁判劇こぼれ話
弁護士 川本瑞紀  
 先日のシンポジウムで、「あすの会」弁護団によって、被害者参加制度をテーマにした裁判劇が行われました。被害者参加制度はまだ馴染みの薄い制度ですから、理解していただくためには、法律用語を話し言葉に直し、台詞をできる限りシンプルにする必要があります。

「どんな人でも犯罪被害者になる可能性があるのだから、どんな人でも被害者参加制度を利用できるように、わかりやすい劇にしたい」

 キャストになった弁護士たちは、この一心で何度も台詞を書き直しました。最終的に脚本が完成したのはシンポジウム前日の夜9時。キャストたちは、本番直前まで台詞を覚えていました。しかし準備不足を感じさせない集中力で、本番を演じきりました。

 お客様から、「これから裁判は変わるんですね!すごい!」「ご遺族が健気で感動しました」など、たくさん誉めていただきました。被害者参加制度を身近に感じていただけたことが、なによりのトロフィーです。
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第9回大会 決議
シンポジウムに引き続き行われた総会において以下の内容が決議されました。本決議は平成20年12月4日、「要望書(決議に基づく要望)」として、その実現に協力いただくべく、森 英介法務大臣に提出されました。今後、「あすの会」では、この決議の内容を実現するべく引き続き活動して参ります。 決議とその理由
1.被害者参加制度が被害者の視点に立って適切に運用されることを求める
 今までの刑事裁判は、被害を受けたことのない検察官、裁判官、刑事弁護人、被告人だけで行われ、事件の最大の当事者である被害者を蚊帳の外におき、被害者をいわば「証拠品」扱いにして行われてきた。

しかし、平成16年、犯罪被害者等基本法が制定されて被害者が権利主体として誕生し、翌17年には犯罪被害者等基本計画が閣議決定されて刑事司法は被害者のためにもあるとされた。

これを受けて、被害者が直接裁判に参加するための、念願の被害者参加制度が明日から施行されることとなった。

制度ができても、運用が不適切であれば、被害者は再び蚊帳の外に置かれることになりかねない。そこで、制度の施行を目前に控え、被害者の目線で、この制度が運用されるよう決議するものである。
 
2.犯罪被害少年等基本法の制定を求める
 我が国では、長らく少年法が少年事件の基本法とされてきた。しかし、少年法は、加害少年の健全な育成を目的するもので、被害少年の被害回復を目的するものでなく、被害少年が立ち直っていくための法律はないに等しいとういうのが現状である。

平成16年、犯罪被害者等基本法が制定されたが、これも、被害少年の被害の回復を図っていくことを直接の目的とするものではない。そこで、被害少年の被害回復のための犯罪被害少年等基本法の制定を求めるものである。
 
3.殺人事件など、重大犯罪について、公訴時効の廃止を求める
 殺人事件など重大な事件の被害感情は、時の経過により薄くなることはなく、むしろ日に日に増していく。殺人犯等が時効により何の処罰も受けないで良いと考えるような社会的コンセンサスも存在しない。

  時効は、国家が、加害者の逃げ得を保障することになり、被害者にさらに苦しみを与え、二次被害を与えるものに他ならない。そこで、殺人事件などの重大な犯罪について、公訴時効の廃止を求めるものである。
 
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